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第6話 機関車に乗って
第6話 機関車に乗って
しおりを挟むある夜のこと…
『私が 死んでしまっても お星さまになって、ずっとあなたの中で生きつづけるわ。おしまい』
パタン
テディは、おやすみ前にベッドの中で読んでいた本を閉じました。
「死んでしまっても、あなたの中で生きつづける… 一体 どうやって? 話もできないのに?
こないだ、マスターに怒られた時も、おじいさんは、助けに#__来__#てもくれなかったじゃないか…
せめて、眠る前に、おやすみの絵本を読んでくれたって良かったじゃないか。
あんなに、ぼくたちのことを想っていてくれた、おじいさんだって死んでしまったら、夢の中にさえ出てきてくれないんだ。
死んだら死んだでおしまいさ。生きつづけるなんて、うそっぱちさ!」
テディは、寂しい気持ちを、振り払うかのように、頭まで、すっぽり布団をかぶり、眠りにつきました。
ポロリ…
人知れず、涙が流れました。
次の日の朝いつものように忙しい朝が始まります。
「おい! そこの おチビさん コーヒーもう一杯!」
「は はい! ただ今!」
「そこの 子ネコくん! このトースト焦げすぎじゃないか!」
「すみません! すぐに焼き直します!!」
(ぼくは、おチビさんでも、子ネコくんでもない。(ぼくは、おチビさんでも、子ネコくんでもない。
テディは、そんな気持ちを抑えながらも慌しくお店の中を走り回りました。
ホッとしたのも、つかの間
“チン!”
トーストが焼きあがりました。
「はい! お待たせいたしました!
できたての あっつあつのトーストでございます!」
(どうだい! ぼくだってその気になれば、このくらいのお客様をあっという間に済ませられるんだ!)
テディは、得意気に“エッヘン”と胸を張りました!
と、その時…
「なんだこのコーヒー ぬるま湯じゃないか!」
「これ、トーストじゃなくてトレーだぞ。」
「おれのモーニングセットに卵がないぞ!」
「おれのモーニングセットには、卵が2つもある。」
「さっきのお会計… おつりが間違っているぞ!」
カンカンに怒ったお客様たちがテディに向かって口々に文句を言いました。
「す す す すみません。今から作り直します…」
テディはしゅ~んと耳を下に垂らして落ち込みました。
「もう、やっておいたよ。」
マスターは、あつあつのコーヒーと焼きたてのトーストを出して卵なしモーニングセットの上に、ポンと目玉焼きを乗せました。
そしてお客様にお釣漢字りをお渡漢字しすると「お前漢字さんが、いない方漢字が、よっぽどお店漢字がうまくいくよ。」
マスターは、そうひとこと言い残してお店の奥の方へと入っていきました。
テディは、またまた耳をしょぼーんと、させました。もう少しで、涙がこぼれ落ちてしまいそうな気持ちでした。
「まったくその通りだ。さっさとこの店を止めちまえ。」
お客の1人が、テディに心無いひと言を浴びせました。
テディは、こぼれ落ちそうな涙をグっとこらえました。
(こんな時、おじいさんだったら、どんな言葉をかけてくれるんだろう。)
「昔は、ショウウィンドウに座って街の人気者だったんだろ。あんた、その方がお似合いなんじゃないか?
こんなところで働いていないで、さっさと田舎へ帰りな!」
その言葉を聞いて、今まで、なんとか抑えていた涙がボロボロと、こぼれ落ちました。
後から後から涙はこぼれ落ち、止めようにも、もう、どうにも止まりませんでした。
「ワ ワシは、知らんぞ…」
「誰だ!こいつを泣かせた奴は…」
さっきまで、テディをイジめていたお客たちは、気まづい顔をして急にモーニングセットを食べ始めたり、ゴホンと咳払いをして新聞を読み始めました。
「うわ~ん!!! うそつき! うそつき!会いに来てなんかくれないんだ!」
お店じゅうに、響き渡る大きな声で、テディが#泣_な__#き始めました。
悲しいやら、悔しいやら、誰にぶつければ良いのか分からない気持ちを抑えきれず、テディの泣き声は、どんどん大きくなりました。
「何事だ!」
奥からマスターが、駆け出してきました。
泣きわめいているテディを見てマスターは「また、何かやったのか!」
そう言ってテディをぶとうとしました。
その時「まぁ、待ちなさいって。」誰かが マスターの手をつかんで止めました。
そこには、いつも喫茶店の窓際でコーヒーを飲んでいる白ひげのおじいさんが立っていました。
「ぼうや。辛かったね。」
テディは、白ひげのおじいさんの優しい声に、安心したのか甘えるように、ヒックヒックと泣きながら何度も頭を縦に振りました。
「死んでも生きつづけるなんて嘘っぱちだ。」
テディは、言いました。
白ひげのおじいさんは、一瞬「どういうことだろう?」
という様な顔をしましたが、すぐに優しい顔に戻り
「ぼうやの大切な人のことかな?」とテディに聞きました。
テディは、自分の心を見透かされたようで恥ずかしくなって、プイっと顔を横に反らせました。
「生き続けるというのは、ぼうやの心の中で、生き続ける。ということなんじゃないかな?」
「心の中?」
テディは、グスンと鼻をならしながら、白ひげのおじいさんを見上げました。
おじいさんは、テディの頭をなでながら優しく、微笑みました。
その日の夜
テディは、昼間に白ひげのおじいさんが言ったことが気になって、なかなか眠れませんでした。
「心の中で生き続ける…」
そう言って、ふと、ベッドの横に目をやると、窓の下に
置いておいた機関車のおもちゃが、テディの目に入りました。
(おじいさんがつくってくれた、機関車…)
「機関車みたいに早く走れたらなぁ。機関車みたいに、たくさん荷物を運べたらなぁ… 」
テディは、そういうとハッとした顔をして、
「そうだ!機関車だ!!」と叫びました。
テディは、泣くのをやめて、機関車のおもちゃを持って立ち上がりました。
それからテディは、一晩中、屋根裏部屋にこもって何やら、とんとんカンカンやっていました。
辺りが暗くなっても屋根裏部屋の灯りだけは灯っていました。
次の日の朝、テディは、一睡もしていないのに、寝坊をしませんでした。
それどころか、目をらんらんと輝かせていました。
朝からブルーベリーを摘んで、モーニングトーストをお客様にお出しして…
今日のテディは、昨日までのテディと明らかに違いました。
くよくよも、めそめそもしません。おどおども、およおよもしません。
マスターは、横目でチラリとテディの様子を伺っていました。
そして、いよいよ、喫茶店が一番忙しいお昼の12時になりました。
テディは、背筋をまっすぐして、大きく1つ、深呼吸をしました。
喫茶店は、どんどん混みはじめました。
「お水をおかわり。」「コーヒー1杯。」
お客が次々に、テディに注文をします。
「おい!いつまで待たせるんだ!」
そして、昨日のダミ声のおじさんも、また怒鳴りました。
テディは、待ってましたとばかりに、満面の笑みを浮かべて
「少々お待ちください!!」
そう言ったかと思うと、屋根裏部屋へ駆けあがっていきました。
「あいつ! 逃げ出しやがったな! 今日という今日は、ただじゃおかんぞ…!」
そう言って、マスターがテディの後を追いかけようと、階段に足をかけた、その時
フォーン!!!
屋根裏部屋から何やら、汽笛のような音が聞こえてきました。
シュッシュッシュッシュッ!!!!
マスターが、屋根裏部屋の方を見上げると、おもちゃの機関車に乗ったテディが、屋根裏部屋の階段を滑るように走ってきました。
「どいたどいたー!!」
「わぁぁぁ!!」
勢いよく叫ぶテディに、圧倒されたマスターは、慌てて階段から飛び降りました。
テディは、喫茶店のお客たちに見せつけるように、機関車に乗って、店内をグルっと一周すると、そのままキッチンに入っていきました。
そして、次にテディが、キッチンから出てきた時には、機関車の上には、コーヒー、サンドウィッチ、スパゲッティ等が乗っていました。
「お待ちどうさまー!!」
テディは、機関車に乗せていた食べ物を、次々とお客さんのテーブルの上に乗せていきました。
あっという間に、任務完了!!
テディは、得意気に“エッヘン!”と胸を張りました。
店内のお客さんたちは、目が点です。
汽笛の音を聞きつけて、喫茶店の外からのぞき込んでいた島の住人たちも、あっけにとられて言葉1つ出てきません。
テディが昨日、寝る間も惜しんで、とんとんカンカンやっていたのは、この大きな機関車のおもちゃをつくっていたからだったのです。
天国へ行ってしまったおじいさんが機関車をつくっていた姿を思い浮かべながら、見様見真似でつくったのでした。
その日の夜…
『私が 死んでしまっても お星さまになってずっと あなたの中で 生きつづけるわ。おしまい。』
パタン
テディは、一昨日、ベッドの中で読んだ本を、また、読み返していました。
テディは、パタンと本を閉じて、懐かしい目でおもちゃの機関車を眺めました。
機関車のつくり方なんて教えてもらったことも無いのに、テディは、いつの間にか、見様見真似で、こんな立派な機関車がつくれるようになっていたのです。
「死んでも 心の中で生き続ける… か。」
今のテディには、白ひげのおじいさんが言っている意味が理解できそうでした。
テディは、暖かい気持ちになって、頭まで、すっぽり布団をかぶりました。
そして、天国のおじいさんとマカロンベアたちの顔を思い浮かべながら、眠りにつきました。
ほほには、ポロリ ひとつぶの涙が流れ落ちました。
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