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三.演劇は終わりを告げる
14.被害者は増える
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一限目の終わり、パトカーのサイレンが鳴り響く。その音になんだなんだと生徒たちが騒ぎ、窓から外を覗いた。それは時久の耳にも届いており、何かあったのだと知らせている。
時久は席から立ち上がり教室を飛び出した。騒ぎがするほうへと向かえば、教師たちが何か話している。
「何かあったのですか?」
「え? いやその……旧校舎と本校舎を繋ぐ廊下のほうで……」
教師の一人がそう口にしたのを聞いて、時久は渡り廊下のほうへと走り出す。後ろから「廊下は走るな!」と注意する声がするけれど、そんな場合ではない。
息を切らしながら渡り廊下を通り抜けると側にある階段に人が集まっていた。時久は階段まで近寄って皆の視線の先に目を向ける。
「……半沢さん」
階段の下には美波の死体が転がっていた、確認しなくとも死んでいると分かるように。時久は黙ってその光景を見つめる。誰もが言葉を失って静まる中、警察がやってきた。
「半沢美波か……」
「えぇ……」
時久の隣に立ったのは東郷だ。彼は死体を見下ろしながら渋い表情をしている。葵の事件の容疑者である彼女が死んでしまっているからなのか、それとも学校内で二度目の事件を起こしてしまったからなのか、その表情からは読み取れない。
第一発見者は授業に出ていなかった女子生徒二人だった。一限目の授業を受けずにこの人気のない場所で暇をつぶそうとしていたのだという。周囲に人はおらず、逃げていった人影なども見てはいない。誰もいなかったと彼女たちは主張した。
「此処は滅多に人が来ないのだろうか?」
「旧校舎って殆ど使わないから人来ない」
「だからサボり場にぴったりで……」
東郷の質問に第一発見者である女子生徒たちは素直に答えていく。朝となると特に人気はないようで、教師も見回りには来ないのだという。
「東郷警部」
「何か分かったか、岩谷」
「争った形跡があり、階段から突き落とされて亡くなったわけではないみたいです」
美波の死因は撲殺によるものだった。背後から殴られて振り返り、さらに額を殴られて階段から突き落とされたようだ。その際に争ったのか、制服が乱れていたのだと。
凶器らしき石の置物が階段下のほうに放り投げられていたのが発見されており、これで殴られたのだろうということだった。
「また演劇部員が亡くなるとは……」
「容疑者が減りましたね……」
「一先ず、演劇部員に話を聞く必要がある」
東郷は岩谷に容疑者として浮上している演劇部を呼び出すように指示を出した。これが連続した事件であるのならば、疑うのは容疑者として挙がっている人物だ。
アリバイが無く、動機らしい動機がある人物となると限られているので時久は顎に手をやりながら遺体を眺める。
(二人を初めから殺すつもりだった)
これが連続した殺人であるのならば、そうなる。元々、二人を殺すつもりで犯行に及んだのだ、犯人は。
自殺に見せかけた行為は時間稼ぎなのか、それにしては不出来すぎる。もし、他殺であることを匂わせるためにやった行為であるのならば、それに何の意味があるのだろうか。
「時久君、他の生徒からも事情を聞くから場所を変えよう」
「えぇ……」
他に分かったことがあればこちらに報告が来るからと、東郷は時久を連れて現場を離れた。
気になることはあるけれど、今は話を聞かなければならない。時久は頭を整理しながら東郷の後をついていった。
***
講堂の小ホールへと容疑者として挙がっている部員たちが集められる。話を聞いているからなのか、皆が皆、不安げに顔を見合わせていた。
陽菜乃は泣きそうな瞳で周囲を見渡し、落ち着きなさげにしている裕二は一言も話さない。斗真は何を考えているか読めない表情で腕を組んでいた。
前島は脂汗を何度もハンカチで拭っていて美波の死に動揺しているようだ。由香奈は最後に会った時のことを思い出してか、言葉が出ないようで俯いていた。最後に会ったということで飛鷹も呼ばれている。全員が集まったことを確認して、東郷が話を切り出す。
「朝、七時から八時の間、何処で何をしていたのか、話していだだけないでしょうか?」
「わたしは、一人で中庭にいました……」
最初に答えたのは陽菜乃だった。彼女は事件のことが忘れられず、どうしていいのか分からなくて気持ちを落ち着けるために誰もいない中庭で休んでいたのだという。
教室ではまだ事件の事をネタにしている生徒がいるので嫌でも思い出すからと、何処か辛そうにしていた。
「俺はその……旧校舎裏でタバコ吸ってました」
次に裕二が話す。どうやら懲りずに煙草をまだ吸っていたようで、バレないだろうと旧校舎裏で一人で吸っていたらしく、それには東郷も呆れた様子だった。
「僕はその時間は教室にはいませんでした」
「なら、何処にいたんだい?」
「講堂の近くですよ。まだ警察の人がいるのか確認してました」
斗真は舞台装置などは定期的なメンテナンスが必要なのだと話す。まだ自由に出入りができない状況でそれができないというのは痛手なのだと。小道具置き場の確認もちゃんとできていないので早く使えるようにならないだろうかと講堂の様子を見にいっていたようだ。
淡々と話す斗真は美波の死にも特に興味を示していなかった。その不気味なまでの冷静さに周囲は一歩、引いている。
「皇さんは何処に?」
「わ、わたしはまだ登校してません……。教室に入ったのは八時過ぎで……」
歩くのが遅くてと由香奈はまだ登校できていなかったと証言した。それを証明できる人間はいないようで、不安げな表情を見せている。
「……では、前島教諭は何処に?」
「職員室にいました……。確認を取っていただければ証言はいただけるかと……」
前島は職員室で雑務をしていて、他の職員とも話しているという。確認をとればアリバイは成立すると主張した。
一通り話を聞いて、東郷は凶器である石の置物を全員に見せる。石の表面にはべたりと血液がこびりついていた。うっと由香奈が口元を覆い、陽菜乃も怯えるように身体を引っ込める。
「これに見覚えはないだろうか?」
「……それ、演劇部の小道具だよ」
東郷の質問に斗真が答える、それは演劇で使う小物として使っているのだと。普段なら小道具置き場になっている倉庫にあるはずのものだと彼は教えてくれた。
いつから無くなっていたのかについては、記憶にある中では少なくとも葵が死ぬ前まではあっただろうということだった。
「つまり、これは演劇部員なら誰でも持ち出しができるってことだろうか?」
「できると思いますよ。雑多に置かれてるから一つ無くなってもすぐには気づかないだろうし、そこまで大きいわけでもないから」
斗真の証言に前島も「絶対にないとは言い切れない」と同意を示した。けれど、だからといって部員を疑うこともできないらしく、「外部の可能性も」と訴えている。
「最後に美波さんに会ったのは皇さんだけでいいだろうか? 他に放課後に会ったという人はいるかい?」
「いえ、わたしは会ってません……。美波さん、先輩が死んでから部員たちを避けているようだったので」
陽菜乃が言うには美波は葵の事件から演劇部員たちを避けており、話しかけても怒鳴られて逃げていってしまうのだという。
裕二も「クラスでも避けられてる」と会話らしい会話をあれからしていないと話し、斗真は「もともとあまり話さないから」と会っていないと答えた。
前島は美波の様子がおかしいと聞いて会ったことはあるけれど、それは放課後ではなかったと証言する。話も碌にできなかったと。
「じゃあ、最後に会った時の様子はどうだっただろうか?」
「昨日も話した通りで、その……追い込まれているようでした」
由香奈は俯きながら答えると、それ以外にはと促されて時久が「ありませんね」と代わりに返す。
誰かと会う約束をしていたなどは言っていなかったし、話を聞いてくれそうにはなかったと少なくとも時久は美波と話して感じていた。それは飛鷹も同じだったようで、「聞く耳もたなかったから」と話す。
「警部、携帯電話の履歴などには特に変わったものはなかったようです」
「そうか」
「ただ、一つ変わった点が」
「何かあったのか」
やってきた岩谷は「これが」と袋を一つ見せた。中身はボタンでそれはこの学校の制服についているものだった。どうやらこれを美波は握っていたらしく、争った時に引きちぎったのではということだった。
「これはこの学校の制服のもので間違いないでしょうか、前島教諭」
「え、えぇ……それはわが校のです。多分ですが、袖に付いているやつかと……」
ボタンが小さいので袖に付いているもののように見えると、前島から話を聞いて東郷は時久に目を向ける。時久はひょいっと自身の制服の袖を彼に見せた。
重ねるように袖に付いているボタンを確認してみると、大きさも同じで間違いない。ならば、犯人はと東郷が生徒を見遣ると服の袖を手で隠した人物がいた。
時久は席から立ち上がり教室を飛び出した。騒ぎがするほうへと向かえば、教師たちが何か話している。
「何かあったのですか?」
「え? いやその……旧校舎と本校舎を繋ぐ廊下のほうで……」
教師の一人がそう口にしたのを聞いて、時久は渡り廊下のほうへと走り出す。後ろから「廊下は走るな!」と注意する声がするけれど、そんな場合ではない。
息を切らしながら渡り廊下を通り抜けると側にある階段に人が集まっていた。時久は階段まで近寄って皆の視線の先に目を向ける。
「……半沢さん」
階段の下には美波の死体が転がっていた、確認しなくとも死んでいると分かるように。時久は黙ってその光景を見つめる。誰もが言葉を失って静まる中、警察がやってきた。
「半沢美波か……」
「えぇ……」
時久の隣に立ったのは東郷だ。彼は死体を見下ろしながら渋い表情をしている。葵の事件の容疑者である彼女が死んでしまっているからなのか、それとも学校内で二度目の事件を起こしてしまったからなのか、その表情からは読み取れない。
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「此処は滅多に人が来ないのだろうか?」
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「だからサボり場にぴったりで……」
東郷の質問に第一発見者である女子生徒たちは素直に答えていく。朝となると特に人気はないようで、教師も見回りには来ないのだという。
「東郷警部」
「何か分かったか、岩谷」
「争った形跡があり、階段から突き落とされて亡くなったわけではないみたいです」
美波の死因は撲殺によるものだった。背後から殴られて振り返り、さらに額を殴られて階段から突き落とされたようだ。その際に争ったのか、制服が乱れていたのだと。
凶器らしき石の置物が階段下のほうに放り投げられていたのが発見されており、これで殴られたのだろうということだった。
「また演劇部員が亡くなるとは……」
「容疑者が減りましたね……」
「一先ず、演劇部員に話を聞く必要がある」
東郷は岩谷に容疑者として浮上している演劇部を呼び出すように指示を出した。これが連続した事件であるのならば、疑うのは容疑者として挙がっている人物だ。
アリバイが無く、動機らしい動機がある人物となると限られているので時久は顎に手をやりながら遺体を眺める。
(二人を初めから殺すつもりだった)
これが連続した殺人であるのならば、そうなる。元々、二人を殺すつもりで犯行に及んだのだ、犯人は。
自殺に見せかけた行為は時間稼ぎなのか、それにしては不出来すぎる。もし、他殺であることを匂わせるためにやった行為であるのならば、それに何の意味があるのだろうか。
「時久君、他の生徒からも事情を聞くから場所を変えよう」
「えぇ……」
他に分かったことがあればこちらに報告が来るからと、東郷は時久を連れて現場を離れた。
気になることはあるけれど、今は話を聞かなければならない。時久は頭を整理しながら東郷の後をついていった。
***
講堂の小ホールへと容疑者として挙がっている部員たちが集められる。話を聞いているからなのか、皆が皆、不安げに顔を見合わせていた。
陽菜乃は泣きそうな瞳で周囲を見渡し、落ち着きなさげにしている裕二は一言も話さない。斗真は何を考えているか読めない表情で腕を組んでいた。
前島は脂汗を何度もハンカチで拭っていて美波の死に動揺しているようだ。由香奈は最後に会った時のことを思い出してか、言葉が出ないようで俯いていた。最後に会ったということで飛鷹も呼ばれている。全員が集まったことを確認して、東郷が話を切り出す。
「朝、七時から八時の間、何処で何をしていたのか、話していだだけないでしょうか?」
「わたしは、一人で中庭にいました……」
最初に答えたのは陽菜乃だった。彼女は事件のことが忘れられず、どうしていいのか分からなくて気持ちを落ち着けるために誰もいない中庭で休んでいたのだという。
教室ではまだ事件の事をネタにしている生徒がいるので嫌でも思い出すからと、何処か辛そうにしていた。
「俺はその……旧校舎裏でタバコ吸ってました」
次に裕二が話す。どうやら懲りずに煙草をまだ吸っていたようで、バレないだろうと旧校舎裏で一人で吸っていたらしく、それには東郷も呆れた様子だった。
「僕はその時間は教室にはいませんでした」
「なら、何処にいたんだい?」
「講堂の近くですよ。まだ警察の人がいるのか確認してました」
斗真は舞台装置などは定期的なメンテナンスが必要なのだと話す。まだ自由に出入りができない状況でそれができないというのは痛手なのだと。小道具置き場の確認もちゃんとできていないので早く使えるようにならないだろうかと講堂の様子を見にいっていたようだ。
淡々と話す斗真は美波の死にも特に興味を示していなかった。その不気味なまでの冷静さに周囲は一歩、引いている。
「皇さんは何処に?」
「わ、わたしはまだ登校してません……。教室に入ったのは八時過ぎで……」
歩くのが遅くてと由香奈はまだ登校できていなかったと証言した。それを証明できる人間はいないようで、不安げな表情を見せている。
「……では、前島教諭は何処に?」
「職員室にいました……。確認を取っていただければ証言はいただけるかと……」
前島は職員室で雑務をしていて、他の職員とも話しているという。確認をとればアリバイは成立すると主張した。
一通り話を聞いて、東郷は凶器である石の置物を全員に見せる。石の表面にはべたりと血液がこびりついていた。うっと由香奈が口元を覆い、陽菜乃も怯えるように身体を引っ込める。
「これに見覚えはないだろうか?」
「……それ、演劇部の小道具だよ」
東郷の質問に斗真が答える、それは演劇で使う小物として使っているのだと。普段なら小道具置き場になっている倉庫にあるはずのものだと彼は教えてくれた。
いつから無くなっていたのかについては、記憶にある中では少なくとも葵が死ぬ前まではあっただろうということだった。
「つまり、これは演劇部員なら誰でも持ち出しができるってことだろうか?」
「できると思いますよ。雑多に置かれてるから一つ無くなってもすぐには気づかないだろうし、そこまで大きいわけでもないから」
斗真の証言に前島も「絶対にないとは言い切れない」と同意を示した。けれど、だからといって部員を疑うこともできないらしく、「外部の可能性も」と訴えている。
「最後に美波さんに会ったのは皇さんだけでいいだろうか? 他に放課後に会ったという人はいるかい?」
「いえ、わたしは会ってません……。美波さん、先輩が死んでから部員たちを避けているようだったので」
陽菜乃が言うには美波は葵の事件から演劇部員たちを避けており、話しかけても怒鳴られて逃げていってしまうのだという。
裕二も「クラスでも避けられてる」と会話らしい会話をあれからしていないと話し、斗真は「もともとあまり話さないから」と会っていないと答えた。
前島は美波の様子がおかしいと聞いて会ったことはあるけれど、それは放課後ではなかったと証言する。話も碌にできなかったと。
「じゃあ、最後に会った時の様子はどうだっただろうか?」
「昨日も話した通りで、その……追い込まれているようでした」
由香奈は俯きながら答えると、それ以外にはと促されて時久が「ありませんね」と代わりに返す。
誰かと会う約束をしていたなどは言っていなかったし、話を聞いてくれそうにはなかったと少なくとも時久は美波と話して感じていた。それは飛鷹も同じだったようで、「聞く耳もたなかったから」と話す。
「警部、携帯電話の履歴などには特に変わったものはなかったようです」
「そうか」
「ただ、一つ変わった点が」
「何かあったのか」
やってきた岩谷は「これが」と袋を一つ見せた。中身はボタンでそれはこの学校の制服についているものだった。どうやらこれを美波は握っていたらしく、争った時に引きちぎったのではということだった。
「これはこの学校の制服のもので間違いないでしょうか、前島教諭」
「え、えぇ……それはわが校のです。多分ですが、袖に付いているやつかと……」
ボタンが小さいので袖に付いているもののように見えると、前島から話を聞いて東郷は時久に目を向ける。時久はひょいっと自身の制服の袖を彼に見せた。
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