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街の占い師さん
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小さい頃から「少し先の未来を見る能力」があったわたしは、その能力を活かして「占い師」で生計を立てていた。
未来が見えるのだから、当然わたしの占いはよく当たった。
ただ、占いの結果を伝える時は「いいこと」ばかりではなく、「悪いこと」「よくないこと」も一緒に伝えていた。
「見えている」のだから、それを伝えないのはフェアではないと思うからだ。
もちろん脅すような言い方ではなく、「こういうことに気を付けろ」程度のニュアンスで、だ。
そのおかげでわたしの占いは「いいことも悪いこともしっかり当たる」と評判になり、その評判を聞きつけたたくさんの人がわたしのもとを訪れてきた。
この街での占い仕事は順調だと思っていた。
ところがある頃から、風向きが変わりはじめた。
「わたしの占いは『わるいこと』ばかりが当たる」と言う噂が流れ始めたのだ。
その人に起こった「いいこと」は、わたしの占いのおかげではなく「当然のように起こったこと」。
そして起こってしまった「悪いこと」は「わたしの占いのせい」。
そう考える人が現れ始めたのだ。
「自分に都合の悪いことは他人のせいにする」という考えを持たれてしまった。
一度そんな話が出ると、噂は大きな尾鰭をつけて瞬く間に広がり始める。
わたしもできる限り、その噂を打ち消す努力はした。
けどそれは「悪事を隠している」という、さらなる悪評になってしまった。
そしてついに、一度も途絶えることのなかった客足がぱったりと途絶えてしまった。
そうなるともう、占い師なんてやっていられない。
-この街でも、占い仕事はそろそろ潮時かな-
そんなことを考え始めたある日、「それ」は起こった。
「魔女は出ていけ!」
ある日突然、見知らぬ子どもからそんな言葉を投げつけられた。
「魔女?」
わたしがその子を問いただすと、
「みんな言ってるぞ!お前は街に災厄を招き入れる『魔女』だって!だからこの街から出ていけ!」
憎しみと怒りに満ちた口調と表情で、吐き捨てるように言った。
そこまで言われて、この街に留まっている必要はない。
「…わかったよ、この街から出ていくね」
その子にそう言いながら、心を決めた。
-結局、またこうなるのか-
街を離れる日。
もちろん、わたしを見送るような人なんて一人もいない。
「まぁ、いつものことだし」
誰にともなく呟いて、わたしは独り街を後にした。
ただ、昨日見えた「この街に起こる大災厄」を伝えられなかったのは、少し心残りだったけど…
未来が見えるのだから、当然わたしの占いはよく当たった。
ただ、占いの結果を伝える時は「いいこと」ばかりではなく、「悪いこと」「よくないこと」も一緒に伝えていた。
「見えている」のだから、それを伝えないのはフェアではないと思うからだ。
もちろん脅すような言い方ではなく、「こういうことに気を付けろ」程度のニュアンスで、だ。
そのおかげでわたしの占いは「いいことも悪いこともしっかり当たる」と評判になり、その評判を聞きつけたたくさんの人がわたしのもとを訪れてきた。
この街での占い仕事は順調だと思っていた。
ところがある頃から、風向きが変わりはじめた。
「わたしの占いは『わるいこと』ばかりが当たる」と言う噂が流れ始めたのだ。
その人に起こった「いいこと」は、わたしの占いのおかげではなく「当然のように起こったこと」。
そして起こってしまった「悪いこと」は「わたしの占いのせい」。
そう考える人が現れ始めたのだ。
「自分に都合の悪いことは他人のせいにする」という考えを持たれてしまった。
一度そんな話が出ると、噂は大きな尾鰭をつけて瞬く間に広がり始める。
わたしもできる限り、その噂を打ち消す努力はした。
けどそれは「悪事を隠している」という、さらなる悪評になってしまった。
そしてついに、一度も途絶えることのなかった客足がぱったりと途絶えてしまった。
そうなるともう、占い師なんてやっていられない。
-この街でも、占い仕事はそろそろ潮時かな-
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ある日突然、見知らぬ子どもからそんな言葉を投げつけられた。
「魔女?」
わたしがその子を問いただすと、
「みんな言ってるぞ!お前は街に災厄を招き入れる『魔女』だって!だからこの街から出ていけ!」
憎しみと怒りに満ちた口調と表情で、吐き捨てるように言った。
そこまで言われて、この街に留まっている必要はない。
「…わかったよ、この街から出ていくね」
その子にそう言いながら、心を決めた。
-結局、またこうなるのか-
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