千物語

松田 かおる

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ほしに願いを

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「…目標を確認、これより迎撃します」
俺はそう言うと、手元のレーザー砲発射スイッチを押す。
それに反応して、無音だが一瞬まばゆい光を放ち、レーザーが発射される。
そして文字通り、瞬きするほどにもならないあっという間にレーザーは目標に命中し、窓の向こうでこれもまた音もなく粉砕された。

「…ふー、任務完了」
俺は溜め込んでいた息を吐き出し、任務完了を告げる。
周りには誰もいないのだが、こうして口に出すのが癖になってしまっている。
そして窓の外の地球を眺める。

いつの頃からか、地球に大小いくつもの隕石が降り注ぐようになった。
そのため各国は宇宙空間に迎撃用有人衛星を打ち上げ、俺のような者たちが迎撃する任務を担うようになった。

一度宇宙に上がると何年も戻れなくなるのだが、「地球を守る」という目的のもと、たった一人でも任務を遂行できている。

時には俺がいる迎撃用衛星からでは迎撃できないほどの大きさを持つ隕石もあり、手が出せずに歯痒い思いをすることもある。
だが、できないことをしようと思っても無駄なことだ。
俺は俺にできる任務を遂行するだけだ。

いつかそこに戻れることを、青いほしに願いながら…

そんなことを考えていたら、遠くの宇宙空間をかなり大きい隕石が地表目がけて落ちていった。
どこかの部隊の衛星が何発かレーザーを発射したようだが、隕石には全く効き目がなく、結局は地表に落ちていくのを眺めていることになるだけだった。

あれだけの大きさの隕石が落ちて、地表は大丈夫なのだろうか…
しかも日増しに隕石自体も大きくなっているようだ。
「本部」に連絡を取ってもなぜか返事は戻らず、地表の様子を窺い知ることはできない。

隕石の大きさに比例して俺の心配も大きくなるのだが、「本部」からは落下する隕石の座標を知れせてくるので、きっと無事なのだろう。
だから俺は次の指令を待ちながら、いつか地球に戻ることを夢見る日を過ごす…



一方その頃、地球では…

大隕石が降り注ぐ地表はひどい有様で、すでに何ひとつとして動くものはなかった。
もはや生物が生きていくことはできなくなっている。

そして地下の「本部」は…
宇宙空間に配置されている迎撃用衛星に最新の情報を送信し続け、「任務」を遂行している。
ただしそこに人の姿はなく、防空レーダーからの情報をシステムが機械的に処理し、適切な指令を各衛星に下すだけだ。

そしてこの瞬間も、無人のシステムは機械的に迎撃命令を下し続ける…
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