千物語

松田 かおる

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お正月料理

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「マツノウチ」が終わる一月七日の夜。
俺と悪友は俺の家で寛いでいた。
そろそろすることもなくなりそうになった頃合いを見計らって、俺は悪友にある「提案」をした。

「『お正月料理』を食べる?」
不思議そうに聞いてくる悪友に、俺は
「昔『食べられていた』っていう料理を見つけたんだよ」
そう答えてやった。
「へえー」
「『オセチリョウリ』とか『オゾウニ』とかだっけか…本当は一月一日に『食べる』ものだったんだと」
「ふむふむ」
「時期を少し過ぎちゃってて、安く手に入られたんだよ。ちょうど二人分買えたから、一緒に食わないか?」
俺がそう提案すると悪友も興味をそそられたのか、
「たまにはそう言うのを『食べる』のも悪くないかな」
と、提案に乗ってくれた。

「じゃあ早速」
悪友にダウンロードキーを伝送する。
悪友がキーを受け取り、同時にダウンロードを開始する。
サーバーから「視覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」「聴覚」のデータと、購入時についてきた「商品説明」のデータのインストールが進んでいく。
その間に「商品説明」を読んだところ、昔は何日もかけて「作って」いたと説明があった。
随分と効率の悪い生活だ。

小一時間ほど経って、全てのインストールが完了した。

「それじゃあ全品揃ったところで」
「いただきまーす!」
俺と悪友は「オセチリョウリ」を食べ始めた。

確かに見た目も味も「クラシック」だ。
今のものとは違う「枯れた感じ」だ。
だけどなんだか「落ち着いた感じ」もして、複雑な感覚だ。
年に一回くらい「食べる」のも悪くないかもしれない。

そんなことを考えていたら、悪友の調子がおかしいことに気づいた。
文字通り目を白黒させていて、いかにも苦しそうだ。
俺は悪友の口の奥にある「食用データコネクタ」に制御ケーブルを挿し込んで、簡易リセットコードを送る。

程なくして悪友の具合もよくなって、
「はー助かった、サンキュー」
と言った。
俺が少し呆れて
「お前『商品説明』読まないで食っただろ?」
悪友に言うと、
「悪りぃ、読んでなかった」
少し申し訳なさそうに言った。
「『オモチを食べる前に食用OSを最新版にアップデートしろ』って書いてあったんだよ」
「そうだったんだ」
「OSが旧いままだと『モチ』のデータがバグって今みたいな現象が発生するって書いてあったんだよ。お前バージョン旧いままだったろ」
悪友は
「確かにそうだった。にしても、『モチを食う』のも命がけだなぁ」
カラカラと笑いながら言った。
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