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水曜日のおうちデート・その4「キス」
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隆太朗に覆い被さられた。
急に、男ということを思い出す。
「あ……」
隆太朗も、今までの笑顔と違って急に熱っぽい男の瞳になった。
覆い被さられたまま、見つめ合う。
ドクン、ドクンと利佳子の心臓も音を立てた。
「利佳子……」
ぎゅっと手を合わせられ……。
見つめ合う瞳……。
その時、冷静沈着・利佳子ブレインがフル稼働する!!
「明日も早いんだったわね! もう帰らなきゃいけない時間だわ!」
「あ、そ、そうだね」
パティシエの朝は早い。
ごそっと隆太朗が起き上がって、利佳子も起き上がらせる。
「た、楽しい時間はあっという間ね」
なんとかフォローも入れる。
クゥーンと隆太朗は寂しそうな瞳になった。
耳も尻尾も垂れ下がっていそうな顔。
「俺……残りがあと6日間なら、毎日会いたい」
残りあと6日。
そう、彼とは期間限定なのだ。
一週間、7日の約束で……もう一日が終わる。
利佳子は、こんな年上と……私なんかと付き合うなんて馬鹿げてる……と教えてあげないとと改めて思う。
隆太朗が、すごくすごく、すごくすごく、良い子だからだ。
ぎゅっと利佳子の胸が苦しくなる……利佳子ブレインには理解できない、胸の痛みだ。
「利佳子……あの、だから少しでも会えないかな? 俺、利佳子の家に仕事終わったら行くので会ってくれませんか? 5分でもいい、1分でもいい……」
朝も夜も遅い仕事のために、家から職場は近い。
でも、利佳子の家とはそれなりに距離がある。
懇願するような瞳。
そんな瞳を、素敵な若い子がこんな女に向けてはいけないのに。
「……わかったわ……会いましょう」
「本当!? やったぁ!」
「お互いに残業もあるでしょうし、都合が合えば……でも仕事以外の予定は入れない」
「俺は全部都合は利佳子優先にする! 仕事は……あるけど」
「もちろんよ。仕事を、夢を最優先にして。……遅くなってもいいわ」
「……利佳子……」
この若さなら、あと6日くらいなら大丈夫だろう。
そして、最後には無理を続けて疲れてしまって嫌になるだろう……そう思った。
しかし隆太朗は、幸せそうに満面の笑み。
今度はパタパタと尻尾を全開で振ってそうな笑顔。
またぎゅーっと手を握られた。
「ごめんなさい、またワガママなんだけど……俺、今水曜日が休みなんだ。俺の都合に合わせてもらっちゃうんだけど……最後は泊まりに来ない?」
「……と、泊まりに……」
「利佳子さんは仕事だけど、必ず朝には元気に会社に行けるようにします……!」
また『利佳子さん』で敬語に戻っている。
「あの……今みたいに時間気にしないでさ……お話したり……したくって……布団は用意しておきますから……!」
「うん、わかったわ。来るね」
「や、やった! ありがとう~~!!」
利佳子は冷静になって答えたわけではなかった。
勝手に答えてしまっていた。
利佳子ブレインは……起動しなかった? エラーが起き始めている?
でも、撤回はできない。
「礼なんて、いいのよ」
内心焦っているのを気付かれてはいけない。
そろそろソファーから立ち上がって用意をしなければ、と思ったその時。
「付き合って1日目でごめんなさい」
肩を両腕でぎゅっと掴まれて、優しく引き寄せられた……。
隆太朗の顔が近づいてくる。
ちゅっと、唇が触れ合った。
優しいキス。
「好きだよ。利佳子」
「あ……っ」
「あの、ごめん。我慢できなくなっちゃった……」
「あ、あら、そう……ほほほ。準備するわね!!」
顔が赤くなっているのをバレないように、隆太朗の横をすり抜けた。
隆太朗の方は耳まで真っ赤になっている。
ガタガタと、洗面所のドアを閉めた。
鏡を見て、深呼吸!
「ひっひっふー、ひっひっふー。キスくらい別に。キスくらいなんだというの。冷静に冷静に。食う寝る処に住む処。すいへーりーべーぼくのふね……!」
隆太朗の香りがするスウェットから白いニットに着替える。
香害を気にして、利佳子は香水はつけていないが自分の香りを嗅いで少し冷静になった。
「……わんちゃんの友好の証みたいなものよ……さすが若者、感覚の違いよ……」
急に、男ということを思い出す。
「あ……」
隆太朗も、今までの笑顔と違って急に熱っぽい男の瞳になった。
覆い被さられたまま、見つめ合う。
ドクン、ドクンと利佳子の心臓も音を立てた。
「利佳子……」
ぎゅっと手を合わせられ……。
見つめ合う瞳……。
その時、冷静沈着・利佳子ブレインがフル稼働する!!
「明日も早いんだったわね! もう帰らなきゃいけない時間だわ!」
「あ、そ、そうだね」
パティシエの朝は早い。
ごそっと隆太朗が起き上がって、利佳子も起き上がらせる。
「た、楽しい時間はあっという間ね」
なんとかフォローも入れる。
クゥーンと隆太朗は寂しそうな瞳になった。
耳も尻尾も垂れ下がっていそうな顔。
「俺……残りがあと6日間なら、毎日会いたい」
残りあと6日。
そう、彼とは期間限定なのだ。
一週間、7日の約束で……もう一日が終わる。
利佳子は、こんな年上と……私なんかと付き合うなんて馬鹿げてる……と教えてあげないとと改めて思う。
隆太朗が、すごくすごく、すごくすごく、良い子だからだ。
ぎゅっと利佳子の胸が苦しくなる……利佳子ブレインには理解できない、胸の痛みだ。
「利佳子……あの、だから少しでも会えないかな? 俺、利佳子の家に仕事終わったら行くので会ってくれませんか? 5分でもいい、1分でもいい……」
朝も夜も遅い仕事のために、家から職場は近い。
でも、利佳子の家とはそれなりに距離がある。
懇願するような瞳。
そんな瞳を、素敵な若い子がこんな女に向けてはいけないのに。
「……わかったわ……会いましょう」
「本当!? やったぁ!」
「お互いに残業もあるでしょうし、都合が合えば……でも仕事以外の予定は入れない」
「俺は全部都合は利佳子優先にする! 仕事は……あるけど」
「もちろんよ。仕事を、夢を最優先にして。……遅くなってもいいわ」
「……利佳子……」
この若さなら、あと6日くらいなら大丈夫だろう。
そして、最後には無理を続けて疲れてしまって嫌になるだろう……そう思った。
しかし隆太朗は、幸せそうに満面の笑み。
今度はパタパタと尻尾を全開で振ってそうな笑顔。
またぎゅーっと手を握られた。
「ごめんなさい、またワガママなんだけど……俺、今水曜日が休みなんだ。俺の都合に合わせてもらっちゃうんだけど……最後は泊まりに来ない?」
「……と、泊まりに……」
「利佳子さんは仕事だけど、必ず朝には元気に会社に行けるようにします……!」
また『利佳子さん』で敬語に戻っている。
「あの……今みたいに時間気にしないでさ……お話したり……したくって……布団は用意しておきますから……!」
「うん、わかったわ。来るね」
「や、やった! ありがとう~~!!」
利佳子は冷静になって答えたわけではなかった。
勝手に答えてしまっていた。
利佳子ブレインは……起動しなかった? エラーが起き始めている?
でも、撤回はできない。
「礼なんて、いいのよ」
内心焦っているのを気付かれてはいけない。
そろそろソファーから立ち上がって用意をしなければ、と思ったその時。
「付き合って1日目でごめんなさい」
肩を両腕でぎゅっと掴まれて、優しく引き寄せられた……。
隆太朗の顔が近づいてくる。
ちゅっと、唇が触れ合った。
優しいキス。
「好きだよ。利佳子」
「あ……っ」
「あの、ごめん。我慢できなくなっちゃった……」
「あ、あら、そう……ほほほ。準備するわね!!」
顔が赤くなっているのをバレないように、隆太朗の横をすり抜けた。
隆太朗の方は耳まで真っ赤になっている。
ガタガタと、洗面所のドアを閉めた。
鏡を見て、深呼吸!
「ひっひっふー、ひっひっふー。キスくらい別に。キスくらいなんだというの。冷静に冷静に。食う寝る処に住む処。すいへーりーべーぼくのふね……!」
隆太朗の香りがするスウェットから白いニットに着替える。
香害を気にして、利佳子は香水はつけていないが自分の香りを嗅いで少し冷静になった。
「……わんちゃんの友好の証みたいなものよ……さすが若者、感覚の違いよ……」
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