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役者は揃った
あっち
しおりを挟む数分後。
隣のブースの女性が苛立ちを募らせていたその時、通路の向こうからジークが戻ってきた。
彼の巨大な手には、満面の笑顔をした少女の小さな手がしっかりと握られていた。
ジークは自分のスイートに戻ると、その広大な座席に少女をヒョイと座らせ、自分もその横に強引に腰を下ろした。
「さあ、3人で観ようか?」
ジークが隣のブースの女性にウインクしてそう言うと、女性は顔を真っ赤にしながら。
「……仕方ないわね」
ジークが大型のパーソナルモニターでアニメ映画を再生すると、少女は終始ジークをじっと見つめ、隣の女性と同じ、『女の眼』で彼を追っていた。
気付くと、スチュワーデスや周囲の乗客まで数人、いつの間にかジークの周りに自然と集まっていた。
その様子に気付いた女の子の両親は、ただただ目を丸くして固まるしかなかった。
***
成田空港、到着ロビー外。
日本の湿気を含んだ空気が、行き交う人々の熱気と混ざり合っている。
リムジンバスの窓際席。
機内でジークの隣にいた女性が、窓の外のタクシー乗り場を恨めしそうに見つめていた。
彼女の視線の先には、周囲から頭二つ分は飛び抜けている巨大な金髪の男の背中がある。
「チッ、振られたか…」
女性はわざとらしく目線を外し、むすっとした顔でシートに深くもたれかかる。
「……あんな男、日本にいないっつーの!」
その頬はほんのりと赤く、悔しさと諦めが入り混じった溜息をひとつついた。
一方、バス乗り場の列では小さなトラブルが起きていた。
「ほら、行くよ!」
「やだ!」
機内でジークに救われたあの少女が、バスのタラップに足をかけるのを頑なに拒否して駄々をこねている。
困り果てた両親がなだめようとするが、少女の目は遠くのタクシー乗り場——ジークの姿——をずっと追いかけていた。
「よかったら一緒に乗るかい?」
不意に、頭上からあの軽快で低い声が降ってきた。
振り返ると、片手をポケットに突っ込んだジークが人懐っこい笑みを浮かべて立っている。
「少し案内してもらえると助かる」
ウインク一つで誘うジークに、少女の顔がパッと輝く。
機内での一件ですっかりジークの人柄に惚れ込んでいた父親も、困惑する母親の肩をポンと叩いて人の良い笑みを浮かべた。
「まあまあ、母さん。いいじゃないか?」
数分後。
成田を出発する大型タクシーの後部座席には、なぜかジークの巨体と、彼にピッタリとくっついて離れない少女、そして苦笑いする両親がすし詰めで乗っていた。
「…それで、どこまでですか?」
タクシー運転手は、誰に聞いていいか分からない感じで聞いてきた。
「あっち」
といって、ジークは指を指す。
「方角は…私たちと一緒ですね…私たちは世田谷に向かいます」
「あっち!」
少女も指を指す。
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