龍血の系譜

盤上の観察者

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千年戦争

龍儀の宴

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 シンジとジークが庭園を荒らしている間、リビングでは天童が口を開く。

「そういえば、取引とおっしゃっていましたね」
「……」
 おしんは口いっぱいにどら焼きをほおばっているため、もごもごと言っている。

 天童がタイミングを間違えたと考えだしたころ。
 おしんはいきさつを語りだす。

 ――商人の存在。
  ――十日の命の話。

「……どうして、私にその話を?」

 おしんは、再度玉露を使って次の発言を絞り出す。

「あなたたちにならシンジを任せられるわ!」

 努めて明るく振る舞っているのではない。
 心の底からの響き。
 綾はそう感じた。

「でも、私たちから見たらシンジは……」
「シンジは?」
 きょとんとした顔で、おしんは間髪入れずに聞き返す。

「……私と源蔵さんは……それこそ龍と人。あの人、私になんて言ったと思います?」
 おしんは再度、玉露で舌を湿らせる。

「『お前のその業(ごう)、儂(わし)が肩代わりする……お前の不幸ごと全部もらってやるから、黙って俺のそばにいろ』……って」
「……」

 綾は言葉にならない。
(自分にそこまでの愛し方が出来るだろうか……)

「……あの子は、強い子です。それに……源蔵さんそっくり!」
 おしんはクスクスと笑い出す。

 綾の中で何かが吹っ切れた気がした。
 天童は考え込んでいる。

「その商人の目的は何なんでしょうか?」
「それは俺が少し知っている」

 シンジの心眼が自分の背中に向いているのを、巧みに躱(かわ)しながらジークが割り込んできた。

「……聞いていたのか」
 天童は計算が狂ったAIのように、慌てたように発言する。
 シンジを確認すると、空中からジークへ連撃を出しつつ、ほんのり頬を赤らめているように見えた。

「……そっちのバトルも決着がついたか? そろそろ疲れてきたぞ」
 ジークはシンジの連撃を全て受け止め、数十回分の轟音を庭園に響かせながら涼しい顔で聞いてきた。

「……シンジ、お前はサイコーだ! お前の仲間もな」

 シンジは木刀を左腰におさめた。

 ***
「で、どうするんだ?」
 再びジークとシンジもイタリア製ホワイトレザーに吸い込まれ、本題に入る。

「あなた、源蔵さん並みに不器用な人ね」
「まあな、俺はいつでもこうやって女を泣かせてきたからな...」
「でも、おかげで助かったわ!」
 ジークとおしんは既に打ち解けていた。

「こちらから斬りにいく」
「おうよ、その意気だ!」
 シンジとジークはずっと同じことを言い続ける。

「理人様、準備は万端です」
 初めて美代が口を挟んだ。

 その声と同時に、リビングの奥にある巨大な漆塗りの引き戸が音もなく開く。
 そこには、庭園の緑を借景にした壮麗な和室と、巨大な一枚板の座卓。
 そして、すでに完璧な配置で並べられた超高級料亭顔負けの和食フルコースが鎮座していた。
 伊勢海老の造りに、美しく霜の入った和牛の炭火焼きが、上品な香りを漂わせている。

「Wao!俺はこのためにJapanに来たんだ!!」
「あなた、さっき龍がどうこうとかいっていましたよ?」
 綾の突っ込みを聞き流し、ジークは着座し祈りだす。

 第一日目は被害総額が数十億であったらしい。
 綾がそれを知るのは、まだまだ先の事であった。
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