魔境調理師は戦えない〜追放を決めた仲間達にもう遅いを添えて〜

龍尾

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レイブ一派・1

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レイブパーティー(1)
 
 シェリフとサニャを追放して二日後。レイブ一派は普段から通っている魔境の前に集まっていた。

 人員は今までとほぼ変わらない。しかしシェリフの代わりに新たに狩人が、サニャの代わりに新たに魔術師が加わっていた。

 これでレイブ一派の戦職は、【特】である勇者を除いて【武】一色。より戦闘に強い一派になったと仲間を見渡しソドスは一人大きく頷く。

「これから、魔境の十層で資金集め目的の狩りを行う。準備はいいか?」

 魔境との境界にある綻びの前に立ったレイブが一派に振り返り、一人一人に視線を合わせた。

「もちろんだぜ。本当ならいつもの層まで行きたいところだが、今回は新たな仲間もいることだしよ! な、アーチ!」

 ソドスは豪快に笑い、仲間になった狩人の肩をバンッと叩く。

「ははっ、悪いな。俺っちも噂のレイブ一派の力になれるように頑張るよ」

 アーチは探索者としてはレイブ達の数年先輩だった。しかし、最高到達成長度に関してはレイブ一派の面々の方が上。

 実力主義である探索者界隈においてはソドス達が上の立場となっていた。

「よし、それでは調子がいい者は手を上げてくれ」

 魔境に入る前に必ず行うレイブの確認。今回手を上げたのは新たに加わった二人とレイブの幼馴染のシーアだけだった。

「悪いな、どうもいつもより力が出ない感じがしてよ」

 ソドスはへらへらと笑いながら肩を回す。周囲の仲間達もそれに合わせて頷いていた。

 丁度シェリフが出て行って次の日あたりから、ソドス達は妙な身体の怠さを抱えていたのだ。

「そうか。俺が言った店の料理は食べたか?」

「あー、あの調理師特製とかいう高い奴か? 悪いが俺の金は基本武器に使ってるからな。そんな余裕あはなかったぜ」

「……そうか。とりあえず調子がいいのはシーアとアーチ、それとリリーだな」

 少し残念そうに頷いたレイブは諦めたように息を吐き、手を上げた三人に視線を移した。

「『探索配置につけ』、《指令》!」

 レイブの指令が下される。その瞬間、初めてレイブの指令を受けたアーチとリリーは驚きに目を見開いた。

「これが勇者の指令技能か……。俺っちの力が、三割り増しにもなったぜ」

「凄いです! 勇者ってこんなに凄いんですね! さすが【特】の戦職です!」

 アーチとリリーが尊敬の眼差しをレイブに向けた。その視線を受けて、レイブは不機嫌そうに眉根を寄せる。

「そんなに凄いものじゃない。現状、俺の指令は自分含めて四人にしか発動できない。多少効力が弱くとも全員を強化できる方が、俺は優秀だと思っている」

 レイブが探索前に調子の確認をする理由は、指令を出す相手を選ぶためだった。

 レイブの指令は強力かつ長く効く。代わりに消耗が大きく数人にしか使えないのだ。

「噂のナリアさんのことですね! たしかに、これを全員にできるのは凄いかも……」

「ははっ、それはないものねだりって奴だぜ。俺っち達は俺っち達で頑張る。それでいいじゃないか」

「ないものねだり、か。……そうだな。やれることをやるしかない。では、行くぞ」

 少し遠くを見つめてレイブは頷くと両隣のシーアとアーチに手を差し出した。

 レイブを中心に全員の手が繋がれていく。それを確認したレイブは、綻びに向け一歩を踏み出した。

***

 転移の瞬間から誰もが意識を張り詰めていた。成長度十五にもなる魔境は少しの油断が命取りだ。

「俺っちの魔物探知に反応なし。多分大丈夫だぜ」

 レイブの隣にいたアーチが仲間達に声をかける。他の狩人も肯定するように頷いた。

「よし。俺と指令を与えた三人……あとソドスで班を組む。残りは魔術師以外で一班として魔術師は後衛から魔術を頼む。十層まで駆け抜けて行くぞ」

 素早く仲間を班分けし、レイブ一派は魔境を駆け抜ける。

 出会う魔物は全て一瞬の内に高火力の攻撃で轢き殺していった。

 守らなければいけなかったサニャとシェリフがいなくなり、レイブ一派はかつてない速度で五層まで辿り着く。

 その結果に、ソドス達は多いに満足していた。

「おぉー、やっぱり凄いな。こんな速さで五層まで来たのは俺っちも初めてだぜ。【知】の戦職が一人もいないと知った時は少し不安だったが、これなら納得だ」

「あぁ、そうだろ? 【武】がいりゃどうにかなるんだよ」

 楽しそうにソドスとアーチが話す。

 ここまでは順調な魔境探索だった。

 レイブの次の一言をきっかけに、それがまやかしであったことが判明するまでは。

「よし、ここらで一度休憩としよう。全員、携帯食糧で腹を満たしておけ」

 狩人による周辺の確認後、階層穴の周囲に座りこんだレイブが休憩の指示を出した。

 アーチやリリー、そしてシーアも座って身体を楽にすると携帯食糧を鞄から取り出す。

 レイブの指示に従ったのはその三人だけだった。

「レイブさん、携帯食糧なんて言わずにさっき倒した魔物でも焼いて食いましょうよ。俺達、あんな邪魔な物買ってきてないっすよ」

 ソドスが残りの仲間達を代表してレイブに声をかける。

 その言葉にアーチは吹き出すように笑った。

「ははっ。いやー、ソドスの旦那も面白いな! 携帯食糧買わない探索者なんて、浅い層を探索する奴だけだもんな。レイブ一派にとっては、十層は浅いってか! それに魔物の肉を食うときたもんだ!」

「あ? おい、新入りが何笑ってんだよ」

 大きな声で笑うアーチにソドスは苛立ち混じりの視線を向けた。

 アーチはソドスからの予想外の返しにきょとんと目を瞬かせる。

「え、いや……。まさか本気で言ってるのか?」

 アーチはソドスとその後ろにいる仲間達を見て顔を青く染めた。

 携帯食糧を取り出さない仲間達、その全てがアーチを怪訝な目で見ていたのだ。
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