10 / 12
レイブ一派・2
しおりを挟む
「おい待て、待ってくれ! 魔物の肉が毒だなんてことも知らない一派に俺っちは入っちまったのか?」
「そ、そんなアーチさん。そんな探索者、駆け出しでもなければいるわけ……」
アーチとリリーが顔を見合わせる。
魔物の肉に含まれる魔素は人にとって有害だ。食べてしまえば運が良くても数日寝込み、運が悪ければ即死。それは探索者の共通認識だった。
「んなわけないだろ。俺達は今までも魔物の肉を食ってきたんだぜ」
ソドスはアーチの言葉を鼻で笑う。
その顔は、嘘を言っているようには見えなかった。
「おいおい、そんなわけ……。いや、待てよ? 俺っちの前に抜けた戦職ってのは」
アーチはふとある可能性に気がつき、確かめるようにレイブに振り返る。
その視線を受けてレイブは小さく頷いた。
「あぁ、予想の通りだとは思うが片方は調理師だ。もう一人は賢者だな」
「……なるほど、そういうことか。俺っちは、調理師に見捨てられた一派にまんまと入っちまったのか!」
アーチは頭を抱えてソドスを睨む。
冷静になればおかしな話だったのだ。破竹の勢いであったレイブ一派を抜ける人なんているはずがない。
いたとすればそれは相当な邪魔者か、はたまた一つ頭抜けて優秀な者かである。
「おいおい調理師がなんだってんだ。あいつは何一つ役に立たなかったぜ?」
「役に立たない? そんなわけないだろ! 魔物を食べられるようにできるだけでどれだけ魔境の探索が楽になるか! しかも調理師の料理と言えば大金を払ってでも買うべき切り札だ! 俺っちだって、買ってある!」
冒険鞄からアーチは保存食として調理された魔物の肉を取り出してソドス達に見せつけた。
「もちろんリリーも買ってますよー」
リリーの鞄から取り出される魔物の干し肉。
そこまでを見て、ようやくソドスは異常に気がつき始めた。
「待てよ? もし、魔物の肉が食えないんだとしたら……。深く潜る数日間に俺達は何を食うんだ?」
「携帯食糧を大量に持ちこむんだ。賢者の保存箱技能やそれと同様の能力を持つ魔宝を使ってな!」
続いてアーチが取り出したのは運搬袋と呼ばれる袋だった。
魔宝と呼ばれる魔境で発見される特殊な能力を持った道具達。その中でも比較的多く発見され、その利便性から市場にも頻繁に出回っているのが運搬袋だ。
その能力は、規定の容量までは物を入れても重くなることもなく膨らむこともないというもの。物を持ち運ぶのに非常に便利な袋だった。
「けど、そんな物買う金は……」
「初めはないだろうな。だから初心者は浅い層で金を稼ぐんだ」
アーチは吐き捨てるように言い放ち、魔物の肉と運搬袋を冒険鞄に入れなおした。
より高みを目指して入ったレイブ一派で初心者講習のようなことをすることになるとは思ってもいなかったアーチは、深く息を吐き出して心を落ち着かせる。
「はぁ、悪いなレイブさん。熱くなりすぎた」
「いや、いい。言ってることは正しいからな」
レイブは小さく頷くと、残りの携帯食糧を口に放りこんだ。その反応にソドス達は驚く。まるでアーチが話したことをレイブは知っていたかのような反応だったからだ。
「待ってくれ、レイブさん。知ってたのか? 調理師のことも、携帯食糧のことも、全部?」
「当然だろう。教習所で習わなかったのか? 調理師に関してはそもそも人が少ないから詳しいことはシェリフを見るまで知らなかったがな」
「じゃあどうしてシェリフを追放なんか……」
そこまで言ったところでソドスは言葉を止めた。
レイブが今までになく鋭い瞳でソドスを睨んでいたのだ。
「追放したのはソドス達だろう。俺が喜んでシェリフを見送ったとでも思ってたのか?」
「それは……」
不機嫌そうなレイブの声音に気圧されてソドスはそれ以上何も言えなくなった。
そうしてソドス達が携帯食糧も持っていないことが判明したことで、その日は五層にいる魔物の素材集めで探索は終わりを迎える。
賢者もなくしたレイブ一派は持ち帰れる物も少なく、今までに比べて遥かに少ない戦果で彼らは帰ることになったのだ。
「そ、そんなアーチさん。そんな探索者、駆け出しでもなければいるわけ……」
アーチとリリーが顔を見合わせる。
魔物の肉に含まれる魔素は人にとって有害だ。食べてしまえば運が良くても数日寝込み、運が悪ければ即死。それは探索者の共通認識だった。
「んなわけないだろ。俺達は今までも魔物の肉を食ってきたんだぜ」
ソドスはアーチの言葉を鼻で笑う。
その顔は、嘘を言っているようには見えなかった。
「おいおい、そんなわけ……。いや、待てよ? 俺っちの前に抜けた戦職ってのは」
アーチはふとある可能性に気がつき、確かめるようにレイブに振り返る。
その視線を受けてレイブは小さく頷いた。
「あぁ、予想の通りだとは思うが片方は調理師だ。もう一人は賢者だな」
「……なるほど、そういうことか。俺っちは、調理師に見捨てられた一派にまんまと入っちまったのか!」
アーチは頭を抱えてソドスを睨む。
冷静になればおかしな話だったのだ。破竹の勢いであったレイブ一派を抜ける人なんているはずがない。
いたとすればそれは相当な邪魔者か、はたまた一つ頭抜けて優秀な者かである。
「おいおい調理師がなんだってんだ。あいつは何一つ役に立たなかったぜ?」
「役に立たない? そんなわけないだろ! 魔物を食べられるようにできるだけでどれだけ魔境の探索が楽になるか! しかも調理師の料理と言えば大金を払ってでも買うべき切り札だ! 俺っちだって、買ってある!」
冒険鞄からアーチは保存食として調理された魔物の肉を取り出してソドス達に見せつけた。
「もちろんリリーも買ってますよー」
リリーの鞄から取り出される魔物の干し肉。
そこまでを見て、ようやくソドスは異常に気がつき始めた。
「待てよ? もし、魔物の肉が食えないんだとしたら……。深く潜る数日間に俺達は何を食うんだ?」
「携帯食糧を大量に持ちこむんだ。賢者の保存箱技能やそれと同様の能力を持つ魔宝を使ってな!」
続いてアーチが取り出したのは運搬袋と呼ばれる袋だった。
魔宝と呼ばれる魔境で発見される特殊な能力を持った道具達。その中でも比較的多く発見され、その利便性から市場にも頻繁に出回っているのが運搬袋だ。
その能力は、規定の容量までは物を入れても重くなることもなく膨らむこともないというもの。物を持ち運ぶのに非常に便利な袋だった。
「けど、そんな物買う金は……」
「初めはないだろうな。だから初心者は浅い層で金を稼ぐんだ」
アーチは吐き捨てるように言い放ち、魔物の肉と運搬袋を冒険鞄に入れなおした。
より高みを目指して入ったレイブ一派で初心者講習のようなことをすることになるとは思ってもいなかったアーチは、深く息を吐き出して心を落ち着かせる。
「はぁ、悪いなレイブさん。熱くなりすぎた」
「いや、いい。言ってることは正しいからな」
レイブは小さく頷くと、残りの携帯食糧を口に放りこんだ。その反応にソドス達は驚く。まるでアーチが話したことをレイブは知っていたかのような反応だったからだ。
「待ってくれ、レイブさん。知ってたのか? 調理師のことも、携帯食糧のことも、全部?」
「当然だろう。教習所で習わなかったのか? 調理師に関してはそもそも人が少ないから詳しいことはシェリフを見るまで知らなかったがな」
「じゃあどうしてシェリフを追放なんか……」
そこまで言ったところでソドスは言葉を止めた。
レイブが今までになく鋭い瞳でソドスを睨んでいたのだ。
「追放したのはソドス達だろう。俺が喜んでシェリフを見送ったとでも思ってたのか?」
「それは……」
不機嫌そうなレイブの声音に気圧されてソドスはそれ以上何も言えなくなった。
そうしてソドス達が携帯食糧も持っていないことが判明したことで、その日は五層にいる魔物の素材集めで探索は終わりを迎える。
賢者もなくしたレイブ一派は持ち帰れる物も少なく、今までに比べて遥かに少ない戦果で彼らは帰ることになったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい
夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。
しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。
リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。
一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。
これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる