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5巻
5-1
しおりを挟むプロローグ さすがに問題になってきたババァ
ハンターギルドにおいて、今一人の人物が議題に上っていた。
「いつまであの娘に好き勝手にさせているつもりだ!」
声を荒らげるのは、議題を提出したギルドの幹部の一人だった。
「好き勝手とは言うが、元々彼女はハンターですらない一般人だ。我々の規則を適用できる道理はない」
対する言葉は、壮年の男。元はハンターであり引退を機にギルドの職員に転向し、今では支部の一つを任されるようになった経緯がある。
この会議に集まった者の半数近くは、ハンターとして名を馳せた者達だ。
金級までに至ったハンターが引退すると、その後は大きく分かれて二通りある。現役時代の稼ぎで悠々自適に過ごすか、こうして後進のためにギルドの裏方に回るかだ。中には商売を始めたりどこかの貴族や国お抱えになったりすることもあるが今はいいだろう。
「だとしても、近頃のあの娘は少しばかり調子づいている! その証拠に、ギルドの保有する建物に、さも当然とばかりに足を踏み入れているのだぞ!」
一方で、声を荒らげているのは元はギルドの職員だ。元ハンターでない者も幹部としてこの会議には参加している。
当然といえば当然だ。ギルド職員の半数以上は、純粋な内勤の人間である。支部の責任者を除くと元ハンターのギルド職員数は全体の二割程度だ。
「手配犯の引き渡しは支部の内部で行う規則だ。むしろ彼女は、こちらに筋を通していると言ってもいい」
「筋を通すというのなら、ハンターになるのが最初の筋だろう!」
「それは筋ではなく単なる通例の範囲だ。手配犯の捕縛は一般にも解放されている。それに、大多数のハンターの収入である危険種の討伐や他の狩猟に関しては手をつけていない」
ただ、支部責任者となると元ハンターが九割以上を占めることになる。これは、ギルドに所属する現役のハンターが暴走した場合、取り押さえるために名も実も備えた人間が必要になってくるからである。純粋な内勤の職員だと現役のハンターに舐められる恐れがあり、抑止力たり得ないからだ。
「あの娘をハンターと勘違いして依頼を出してくる者も出てくる始末だ! こちらの面子は丸潰れではないか! ハンター達の間では『剣姫』などと呼ばれているくらいだぞ!」
「手配犯を積極的に捕縛しようとする者のうち、ハンターはごく一部だ。それに、彼女の立ち寄った街では治安の向上が著しい。一般人が頼りたくなる気持ちは十分すぎるほどに理解できる」
元ハンターであるだけに、手配犯の捕縛というのは現役ハンターにとっては二の次三の次になってしまう気持ちはよく理解できた。
普段から野生の獣や危険種を相手にしていれば、戦闘時の思考や立ち回りがそちらに偏っていく。そこからいきなり人間相手ともなると後れをとることもままある。
人間というのは時に悪賢く生き意地が汚くなるものだ。腕利きの銀級ハンターが銅級相当の手配犯に返り討ちに遭い重傷を負うなどという話も出てくる。ハンターが積極的に手配犯の捕縛に乗り出さないのは、報酬に対して手間暇がかかりすぎるからだ。
現場としてはむしろ、ハンターが手を出したがらない面倒な仕事をこなしてもらっているという認識である。口には出せないが感謝しているほどだ。
「それに何も悪いことばかりではない。最近では、彼女に触発されてか、他のハンター達にも徐々にだが手配犯達の捕縛に乗り出す者が出始めている。この流れをただの一過性に終わらせるには惜しいと考える。これからは一部予算を投じて、手配犯への対処を強化することを考えるのも良いと思われるが」
「ぬっ……ん、んん。……わかった、予算分配に関しては持ち帰って検討しよう」
もっともな意見に、それまで声を荒らげていた幹部も一瞬は口籠り、やがて顔を顰めつつも頷いた。
職員上がりとハンター上がり。前者は内勤故の事情を、後者は現場を知るが故の事情をそれぞれ熟知している。それだけに、実際のところ両者の関係は決して良いものとはいえなかったが、互いの事情も知らぬほどでもなかった。
「……だが、これまで現場のハンターが手配犯を野放しにしていたことに関してはやはり問題だろう。手配犯捕縛の報奨金は、領主や貴族からの出資が大半だ。これまでは半ば放置されていたが、あの娘のおかげでせっつかれ始めている。改めて予算を組むにしても、現場の方も意識を変えてもらわなければ困る」
「それはまぁ、支部長達の仕事でしょうな。わかりました、こちら側でも話し合って意見をまとめておきましょう」
他の面々を見渡すと、おおよそから同意の頷きが返ってきた。
今更問うまでもないが、彼らの議題に上っていた少女というのはラウラリスのことである。
「話が少し逸れたが、あの女をこのまま放置しておくというのもやはりよろしくはないだろう。実際問題、剣姫の名は日々ハンター達の間で広まりつつある」
「でしょうな。一部の界隈では偶像まがいの熱狂的なファンまでできてると聞いてます」
「……そいつらは阿呆なのか? 馬鹿なのか?」
「誰もがすれ違えば一度は振り向いてしまうほどの美少女であり、銀級を超える実力を有しているとなれば、憧れを抱く者が出てきても不思議ではない」
ラウラリスはハンターギルドに属しておらず、あくまでもフリーの賞金稼ぎだ。ギルドへの干渉は捕縛した手配犯の引き渡しと報酬の受け取り以外は積極的に関わってはいない。ハンターとの揉め事を起こしているわけでもないし、未所属でありながらもハンターギルドの規則に抵触するような行いもほとんどない。
事実、彼女自身は特別にギルドに対して不利益を及ぼしていない。むしろ彼女のおかげで、一部で問題になっていた手配犯の問題が解決しそうな流れができ上がっていた。だからと言ってラウラリスの存在を放置できるわけでもなかった。
ある日突然、風のように姿を現し、瞬く間にハンターギルドの中で存在感を増した。しかしあろうことか彼女自身はハンターではないとくる。
もしラウラリスがハンターであれば、色々と理由をつけて彼女の調査も直接行うことができただろうが、それもできないとくる。ギルドの内部で、彼女の扱いには非常に困っているのだ。
――ラウラリスという少女は果たして何者なのか。
結局のところはこの点に尽きる。
今のところ、ラウラリスがギルドに対して明確な敵対行動をしたという報告はない。だがこの先はどうなるか不明だ。情報を総合すれば善良に区分できる人間像のようだが、それを鵜呑みにするほどギルドの幹部達もお人好しではなかった。
「――――よろしいだろうか」
白熱する会議の中で、挙手と共に声が響く。
会議が始まってからまだ一度も発言をしていなかった男だ。
「我らに届く情報はハンターや職員から上がってくるものばかり。それらを元にあれこれと意見を述べているだけでは、実のある対策も出しようがない。違いますかな?」
否定の言葉はどこからも出てこなかった。
「つまるところ、かの剣姫がどのような人物なのか、実態が掴めていないのが最大の問題。であるならば、ここは一度本格的に調査を行うべきではないだろうか」
「だが彼女はハンターではない。召喚しようにもそれはギルドの領分を超えて――」
「別に、彼女に命じる必要はない。ハンターに命じれば良い。剣姫の調査をしろ、とね」
実のところ、この提案を誰も考えなかったわけではなかった。選択肢の一つとしては思い浮かべていた。しかし、これまで誰も口にしなかったのには理由があった。
「……仮に、ハンターに剣姫の調査を命じるとしても、人選はどうする。剣姫は単独でドラゴンを討ったという情報もある。となれば、最低でも金級の実力は必要になってくる。だが、金級は数が少なく引く手数多の上に癖が強い。監視役などという裏方の仕事に回ってくれるとは限らないぞ」
「その点であれば問題ない」
彼がそう言うと、会議室の扉が開いた。幹部の面々の視線が一斉に集まる中、入室してきたのはハンターの様相をした人物だ。落ち着いた物腰に上半身を覆うゆったりとしたローブ。腰には、細身の剣を携えていた。
ハンターは発言者である男の側まで来ると、黙したまま佇んだ。
「名をアイル。先日に金級への昇格が決まったハンターだ。既にご存じの者もいるだろう」
幹部達の中にはハンターを見て頷く者も幾人かいた。それを確認して提案者が先を続ける。
「今回の件も事前に話を通して了承を得ている。ただ、これは私個人が進めて良い案件でもないと判断し、この場に持ち込ませてもらった」
「実力のほどはどうなのだ?」
「ここに彼女の実績をまとめた資料がある。必要であれば目を通してもらいたい」
彼は手近にいた他の幹部に自身が用意した書類を渡す。人の手を渡って他の者達にも順次に資料が届き、中身を改めていく。少なくとも、資料の内容に文句をつけるような人間はいなかった。
その後もいくつかの質疑応答があるものの、会議は順調に進んでいった。
そして――
「では正式にこの者へ依頼を発行することにする。異議のある者は挙手を」
手を挙げるものはいなかった。
第一話 若人と酒を飲むババァ
レヴン商会の依頼を完遂し、加えて諸々の事後処理を終えたラウラリス。
出立の前に、商会の仕事で面識のできた二人のハンター――リベルとバイスの二人と話をすることになった。といっても畏まったものではなく、一緒に酒を飲む程度だ。最初はいざこざがあったものの、最終的には共に仕事をするようになった仲。互いに労い話に花を咲かせようということだ。
ちょうど良いことに、商会からオススメの酒場を紹介してもらえた。飲食代の大幅な割引も添えてだ。おそらく、ラウラリスに対しては色々とあったからその心付けも兼ねてだろう。どうせならとリベル達も誘った次第だ。
「ふぅぅ……仕事終わりの一杯は格別だねぇ」
景気良くグラスの中身を飲み干したラウラリスは呟く。口ぶりは粗野であるが、グラスを手に持つところから、口をつけ、酒を喉に通してグラスを置くところまでの全てが妙に色っぽいのだから性質が悪い。酒精を含んだ吐息が悩ましげに唇から漏れる様など、女性であろうとも色香に当てられそうになる。
「いちいち色気を出すのやめてくれねぇか。素直に酒の味を楽しめねぇ」
そんなラウラリスに文句をつけるのは、同じテーブルの席に着いているリベル。こちらも同じくチビチビと酒を口にしているが、ラウラリスの醸し出す妖艶な雰囲気に気まずげな顔である。
「…………(もくもく)」
なおその隣ではリベルの相棒のバイスが、テーブルに並べられた料理を無言で食べていた。表情からして、味の方はだいぶん気に入っているようだ。
大商会のお墨付きの高級店なだけあり、用意されている酒も上物がほとんどだ。これを格安で飲めるというのだから商会の仕事を引き受けた甲斐があるというものだ。
三人は思い思いに酒を楽しみ料理に舌鼓を打つ。特にリベルとバイスはこの手の高級店に入る機会が滅多にないようで、存分に楽しんでいた。
そうやってしばらくしていると、当たり前だが酔いが回ってくる。酒のペースが下がると、今度は会話が場の中心になっていく。
「ちょいと胡散臭さはあったが、結果的には今回の仕事を受けて大正解だった。おかげさんで、レヴン商会からの高評価を得られた」
「そいつは重畳。ぶった斬らなくて良かったよ」
「……いや本当に、その節はどうもありがとうございました」
ラウラリスがサラッと口にした割と冗談にならない台詞にも、酔いが回ってきたのか赤ら顔のまま深々と頭を下げるリベル。そこからまた酒をちびりと口に含む。
「で、剣姫のお嬢さんはこれからどうするつもりなんだ?」
「さぁね。適当に手配犯をとっちめながらどこかに流れるさ」
「暇潰し扱いにされてる手配犯どもが哀れに思えてくるぜ」
二人が会話をしている間にも、バイスは酒と料理をチビチビと口に運んでいる。十分に体格の良い男性なのだが、仕草のせいでどこか小動物に見えてくるのが不思議である。
「近頃じゃ、剣姫をハンターと勘違いして依頼を出そうとする奴らも出てきてるって聞くぞ。おかげでギルドの奴らが愚痴を漏らしているのを聞くね」
「どこかの誰かがその『剣姫』って名前を広めたからだろう。私の責任じゃぁない」
『剣姫』と呼ばれること自体はもはや諦観してしまっているが、だからといって何も思っていないわけではない。しかし名が知れ渡る最大の原因はラウラリス自体の抜群すぎる行動力と美貌であるためにどうしようもない。
「かくいうおまえさんらはどうすんだい」
「俺らは対人に関わる銀級の仕事を回してもらえないか交渉するつもりだ。純粋に銀級で受けるよりかは条件は悪くなるだろうが、それでも得意分野の依頼を受けられるようになれればとは思ってる。会長さんからも紹介状を出してもらえるから、望みはある」
「そんな横紙破りみたいなことできるのかい?」
「通常ルートじゃちと難しいが、有力者の推薦があれば、条件付きではあれど上の階級の仕事を回してもらえる場合もある。ギルドも筋さえ通せば案外融通が利くもんさ。逆に筋を通さなきゃ余程の伝手がねぇと動かねぇがな」
リベルとバイスは対人戦闘に特化したハンターだ。先日の一件で実際に戦うことになったが、その分野に限定すれば現時点で既に銀級の最上位、もしくは金級に匹敵する実力を有している。だが、二人はそれぞれ格闘家と暗器使い。頑強な筋肉と骨を有する危険種にはいまいち攻撃が通りにくい。
対人関係の仕事がハンターに回ってくるのは銀級から。銅級には滅多に回ってこない。あるとすれば、今回のリベル達のように、依頼主がハンター個人を見出して依頼を出す場合だ。
ただこの場合、依頼主側が裏で何かを企んでいる可能性があったりもする。使い捨てにできる人員を確保したいだけという悪質な思惑を孕んでいることもある。リベルが口にした『胡散臭さ』というのはこれを指していた。
「個人宛の依頼だと、指名分の割増料金はかかるが、ギルドには大まかな概要だけで良いからな。なかなかの博打だ」
「その口ぶりだと、前に痛い目に遭ったと見た」
「はっはっは。……今でこそ笑い話だがかなり酷かったぜ。いや本当に」
一瞬だけ笑ったものの、すぐに顔を顰めたリベルは誤魔化すように酒を飲み干した。どうやら相当に危ない橋を渡ったようだ。なかなかに苦労しているらしい。
「あんたらもやっぱり金級を目指してるのか」
「田舎から相棒と一旗揚げようって出てきたんだ。ハンターを志した以上、トップを狙うのは当たり前だ。中には銀級で安定した収入を得て、老後を悠々自適に過ごしたいってのもいるが、大半の奴らは俺達と同じだろうさ」
ハンターというのはずっと続けていられる職業ではない。歳を重ねれば重ねるほど躰に無理が生じる。必ずどこかしらで剣を置く時がやってくる。あるいはその最中で野に伏して埋れることもあろう。己がどれほどやれるのか、どこまでやれるのか。追い求める先、足を止める時の見定めは人それぞれだ。
「……そういやぁ、ハンターには金剛級なんてのもあったか」
銀級、金級の話はちょくちょく耳にするが、金剛級はラウラリスがハンターギルドに赴いた際に、対応してくれた職員から聞いた限りだ。以降はほとんど話題にも上らない。
「金剛級だぁ? ありゃなろうと思ってなれるようなもんじゃない。救国の英雄とか、魔王討伐の勇者とかそういった類の伝説だ。便宜上は金剛級が最上だが、事実上の最高位は金級だ」
「伝説ねぇ……」
ラウラリス自身が伝説のような存在であるが、それは良いだろう。つまりは後の世に伝え語られるほどの凄まじい功績を残さなければならないということだ。
「馬鹿はいるだろうが、それでも今の平和な世の中じゃちと難しいだろうね。それこそ亡国の阿呆どもを壊滅させるぐらいはやらにゃ無理か」
「だろうな。ああでも、金剛級がいなかったわけじゃないらしいぜ。確か五十年くらい前に一人、二十年前にもう一人、金剛級が出てたって。噂話だが、信憑性はそれなりだ」
「いるにはいたのか」
「五十年前のは、おたくみたいにヤベェ犯罪者を手当たり次第に捕まえて、最後はドデケェ首を取った功績で金剛級になったって聞いてる。手配犯の制度がギルドに導入されたのもちょうどその頃だ」
リベルは酒を注ぎ足しながら続ける。
「もう一人――二十年前のやつは正直よくわからねぇ。何かしらのデケェ山を解決したらしいが話に聞くのはそのくらいだ。五十年前のはさすがに引退してるだろうし、そもそも生きてるのかすらわからねぇよ」
「つまりは、五十年あたりに一人か二人出れば良いって具合の階級ってことか」
時の英傑とまで称される実力者。その腕のほどは果たして如何様なのか。
僅かばかりの興味を抱きながら、ラウラリスはグラスを傾けた。
なお、バイスはやはり二人の話を聞き流しつつずっと酒と料理を摘み続けていた。
夜もたけなわとなり、酒盛りもお開きとなる。
というか、途中でリベルが酔い潰れた。滅多に口にできない酒だからと、調子に乗って飲みすぎたのだ。
一方で、彼と同じかそれ以上に酒を飲んでいたラウラリスは頬が若干赤らんでいる程度でほとんど正気を保っていた。健啖家である彼女だが、酒に関しても剛の者であるらしい。
「リベルが迷惑をかけた」
「いやぁ、なかなかに楽しい酒の席だったよ」
「そうか……あとで伝えておく。明日は確実に二日酔いだろうがな」
「はっはっは、違いない」
バイスの肩に担がれているリベルは、ほとんど意識がない。完全に相棒任せで脱力している。
「宿までついてかなくて大丈夫かい?」
「大丈夫だ。こういうのは慣れている」
どうやら、リベルが酔い潰れることはままあるらしい。その度にバイスが担いで帰るのだろう。
「あんたも大変だねぇ」
「……気づいてるだろうが、俺は人と話すのが苦手だし、考えるのも上手くない。空気も読めない。そういうのはいつもリベルに任せっきりだ。だからこのくらいならお安い御用だ」
と、バイスの無表情が小さく綻んだ。義務や建前ではなく、本心からの言葉であると表情が物語っていた。それを見たラウラリスも微笑んだ。
きっとリベルも、バイスのマイペースなところに助けられているのだろう。常に変わらぬ調子の相棒がいるからこそ、落ち着いていられるのだとわかる。
「やっぱり良いコンビだね、あんたら」
「剣姫にそう言ってもらえるとは、嬉しい限りだ」
ラウラリスとバイスは互いに手を出し、握手を交わした。
「リベルにも伝えておいてくれ。二人が金級になれるのを祈ってるよ」
「わかった。俺達が金級になったら、もう一度手合わせを頼みたい。今度はしがらみもなく純粋に勝負がしたい」
「ああ。心待ちにしてるよ」
最後に軽い挨拶をし、ラウラリスは帰路についた。
美味い酒と料理を存分に楽しみ、若人とも楽しい話ができた。
ご満悦なラウラリスは名もなき鼻歌を唄いながら夜道を歩く。
「――――ん?」
と、不意に足を止めた彼女は顎に人差し指を当て、可愛らしく首を傾げた。
ほとんど静寂に近しい夜の街。
緩やかな風の音。
遠くから聞こえる鳥の声。
時折に割り込む僅かばかりの人の声。
「……………………ま、いっか」
ラウラリスは一つ頷いてからまた機嫌良く歩を進め始めた。
第二話 新たなるババァの事件簿
馬車を乗り継ぎ、立ち寄った街で手配犯をとっちめ、現地のご当地グルメを味わいながら過ごすことしばらく。
ラウラリスはとある街を訪れていた。
街門を通り抜け、一歩足を踏み入れるとラウラリスはスンスンと鼻を動かす。肌に張り付く空気と合わせて、僅かばかり顔を顰めた。
「なるほど、確かにちときな臭いか」
事前に得た情報の通りか、とラウラリスは改めて街の中へと進んでいった。
時間はちょうど朝と昼の境目だ。そろそろ街中が活気付いてくる頃合いだが、行き交う人々はどこかしら憂いを帯びていた。特別に暗い雰囲気ではないものの、どことなく不安を抱いているといった具合だ。
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