3S

蚊でした

私は蚊だ。
自分でも意外なことに前世の記憶がある。前世は人間だったようだ。
人間の頃の私は蚊をこれでもかという程毛嫌いしていた。そんな記憶があるせいか人の血を吸う気にはなれなかった。
しかし、空腹に負け、私は人の元へ飛んでいった。辿りついた人間の顔を確認した。私に気付いているかを確かめるためだ。幸い私に気付いた様子は無かった。私は感謝と謝罪の気持ちを胸にその人の腕から血を頂き始めた。体から力が抜けそうになる程美味しものだった。
そんな中、ふと違和感を抱き、もう一度人間の顔を見上げた。
驚いた。その人、いやその娘は私の娘だったのだ。正確に申し上げると、人間だった頃の私の娘だ。よほど早く生まれ変わったのだろう。人間の頃の生涯を終えた時と全く同じ容姿だったためすぐに気付いた。
娘だと分かり離れようとするも、私の体は血の味を完全に知ってしまった。仕方なく体が満足するまでありがたく血を頂くことにしようと思っていると急に周りが暗くなった。
異変に気付いた途端、破裂音が耳に残った。