スターダスト・ジョーカーズ

劇団バスターズ

文字の大きさ
3 / 15

8月4日 流れ星の言い伝えと殺人鬼の噂

しおりを挟む

「ねえおにいちゃん」


日曜日の昼過ぎ。部屋にいた俺に妹の愛未が訪ねてきた。


「なんだ?」


事故の後は後遺症もなく、それまでと変わらない生活に戻り、現在に至るまで何事もなく過ごしてきた。

後遺症ではないが、唯一事故の事だけは思い出せていない。本人曰く、霧がかかったように、記憶の本のページがめくれないのだそうだ。…医者曰く、事故のショックからなのだろうと。確かに妹は当時幼かった。俺もそれで納得していた。


「今日のニュース見た? 商店街抜けたところで事故だってさ。 しかも結構おっきい」


妹は一つ下の高校一年。部活には入らずコンビニのバイトをしているが、今日は休みだったらしく一緒に昼めしもさっき食べた。
しかし事故とは何事だろう。朝にそんなニュースはやっていなかったし、起きたばかりなのだろうかと思った。

妹に連れられ、リビングでテレビを見る。小さいころから見慣れた場所がテレビに映し出されている状況に、俺は
「またか」と心の中で思っていた。


「最近多いよね…ほんと」


妹の言う通り、風北町ではこの手の事故や事件が多い。先日も、愛未のバイトしているコンビニで強盗まがいのことがあった。犯人は捕まっているのだが、この事件や事故に関連しているのが、犯人は全員「気づいたらやっていた」
ということだ。それ以外に関連はない。同じことが、隣のF市でも起きていた。


「確かに、昔に比べて、頻発してるよな…。流れ星の人さらいのかもな」


この地方の人間は、誰しも聞いたことある話だが、流れ星のあった日は、人がいなくなると。全く科学的根拠はなかったが、都市伝説的にこの地域では噂されている。なんでも流れ星が人をさらっていくとか。今では嘘っぽい作り話だが、小さいころ聞いた時は、恐怖しか感じなかった。


「そういや昨日流れ星見たな」

「えー、うそでしょ。そんな話信じるの?」

「んなわけあるかよ」


まさかな。そんな根も葉もないうわさ信じるわけなかった。ただ、今後も用心していくに越したことはない。いつ我が身に降りかかるのかは、誰にもわからない。


「でも一応、気を付けていかないとね。護身用の道具も買ったし」

「道具?」

「これ」


そう言って妹は買ったばかりなのだろうか、ビニール袋からスプレー缶を取り出した。俺はその文字を読んでみた。


「催涙スプレー…? はあ…?」


大方ホームセンターでも行って買ってきたのだろう。有名なホームセンターのロゴが入った袋の中から取り出していた。
他にも何か買っているのだろうか。袋にはたくさんのものが入っている。


「殺人鬼が潜んでいるって話も聞くしね。死体が見つからないから、相当な手慣れてるだとか」


その話も以前から出ていた。さすがにこれだけの人間が、何の痕跡も残さないまま居なくなるのはおかしい。普通に考えて、何か原因がある。それが自然がもたらしたものか、人間がやったことなのか。


「山﨑さんも言ってたよ。 この町には何かドス黒い何かがあるって」


妹も、所長には定期的に会いに行っていた。まあ、自分が巻き込まれた事件で、それを解決(?)してくれた命の恩人だからであろう。
しかしそんな話、俺は聞いたことがなかったので、興味をひかれた。


「へえ…。 その話、俺も聞いてみるかな」


ああみえて所長も元刑事だ。何か感じるものがあったのだろう。俺にはどうすることもできないが、自分が生まれ育った町で起きていることに、興味を引かれた。


「じゃあ、私、お父さんと買い物行くけど、お兄ちゃんは?」


俺へ少し考えたが…。


「めんどくさいからいいや…。どこ行くの?」

「スーパーだよ」

「行ってらー」


そして俺は、夜の準備を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...