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8月5日 悪霊ハンター「another view」
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最近、今までになく「スターダスト」が多い。
スターダストとは、この町に巣くう、「悪霊」とでも…いうべきか、そういう存在だ。
俺たちはそれを、「風北町が反転した世界」から退治するチームだ。たった今活動中で、メンバーは俺を入れて4人。相変わらず、この世界は不気味で、不安定に思う。
町内に異変がないか確認中で、それぞれが各地区を回っていた。俺は担当の地区の異常がないことを確認し、いつもの待ち合わせ場所の、風北駅に向かっている。
メンバーとの通信手段は、主に「RINE」という無料通話アプリだ。メッセージも送信できるので、それで情報を共有している。
ー森江地区は問題ないから、私、いつものとこ向かうねー
メンバーの藤崎通瑠からメッセージが入る。俺たちは、「この世界」に入ることによって、特殊な能力が身につく。
ミチルは、微弱ながら磁気を発し、操ることができる。主な役割はサポートで、スターダストの探知や、磁器によって相手の方向感覚を狂わせたり、いろいろなことができる。
接近戦はめっぽう苦手で、力を使いすぎると、周りの電子機器が破壊されてしまう。
最も、彼女の能力は、「現実世界」でも使用できるが…。
―了解。こっちも問題なしだ。俺も今から向かう―
素早くメッセージを打ち、集合場所へ向かう。
「はあっ…!」
俺の能力は、単純なものだが、こういうときに役に立つ。単純にパワーが現実世界より何倍、何十倍にもアップするだけだが、案外、この能力に目立った弱点は無い。
足に力を込めて、普段の何十倍も跳躍する。
軽々と電柱の高さを超え、商店街の屋根上を抜ける。ここから駅までは目と鼻の先だった。
その時。
ーピロンー
不意に、閉じたRINEがメッセージを受信した。
ーミモリちゃんが交戦中。コーヘー君とミチルちゃんは至急、木戸地区へ向かってー
オペレーターの、二階堂 葵衣(にかいどう あおい)からだった。
彼女は「開門(ゲート)」と言われる能力の持ち主。現実世界から、「この世界」へと繋げることができる能力。
主に現実世界からのサポート。大雑把ではあるが、スターダストや生命体を探知できる。ゆえに、誰かが敵と遭遇した場合、他のメンバーにRINEで知らせることができる。
通瑠の能力で探知できるのは、せいぜい半径20メートル。それもあり未鈴の能力は不可欠。
通瑠に電話を掛ける。こんな世界でも電話も通じる。
「もしもし、コーへ―君?」
「ああ、今どこだ?」
ミチルの場所を確認し、合流する。通瑠は商店街付近を担当していたのですぐ見つけられた。ミチルを背中におんぶして、全速力で木戸地区へ向かう。場所は、木戸地区の、旧小学校跡だ。
「はあはあ…このっ…!」
到着すると、ミモリが能力を使い戦っていた。相手は空を飛び回る大型の鳥のような敵。モデルはプテラノドンだろうか。そう思わせるような見た目をしていた。
通瑠を降ろし、隠れるように指示。彼女は基本戦えない。その為、俺ともう一人のメンバー、ミモリがメインで先頭をしている。
「はあはあ…コーヘ―…くんっ」
最後のメンバーの、(いわくま みもり)だ。彼女の能力は、右手から「つた」を生やし、それを自在に…とまではいかないが、コントロール出来る。そうして相手の行動を封じたり、陽動したりする。
「大丈夫か?鳥型のスターダストか…。他に特徴は?」
「ふう…特には。攻撃してくる時は、基本あのおっきなクチバシ」
見ると、いかにも鋭そうなクチバシを持っている。遠距離の攻撃がないのであれば、俺の得意な肉弾戦だが…なにぶん相手は空を飛んでいる。俺が跳躍しても、飛んでいるわけではないし…。相手が下りてくるのを待つしかない。何か投げてぶつけようにも、ここのは何もなかった。
「動きも早いから気を付けて…」
これはカウンターしながらじゃないと厳しいか…。そう思っていた時。
ーバサッ!!-
鳥型のスターダストは羽を折りたたんで突進してきた!
「ちっ…!」
寸でのところで深杜を抱えてよける。スターダストは地面に激突したが、なんともないように再び空へ舞い戻った。
「はあはあ…」
深杜は、戦闘を始めておそらく30分以上だろう、消耗が激しいようで、肩で呼吸していた。
(これは…長くは戦えないな…)
長期戦は危険と判断し、一撃で決着をつけられるように思考回路を働かせる。
俺一人では、射程距離外にスターダストいるため、確実に不利。深杜のサポートが必須だ。
空を飛ぶ敵とは稀に戦うが、ここまでの大きさの敵は初めてだろうと思った。
「深杜!」
疲労から、今にも膝をつきそうな深杜に声をかける。早めに決着をつけることを伝え、一つの作戦を早口で伝える。
「…分かった。やってみる…」
深杜は完全に息切れしているが、スターダストに向かって作戦通りに、つたをスターダストの足に絡ませる。
「ガーネット・アイビー!!」
彼女は自分の能力をそう呼んでいる。直訳すると『紅色の蔦』。
深杜の『紅色の蔦』が鳥型のスターダストの足に絡む。何本も何本も右手から生やし、敵を捕らえる。
しかしこのままでは、体重の軽い深杜がそのまま引っ張られてしまう。スターダストは例え小さくとも、生身の人間より強靭で、力も比べ物にならない。
「深杜!あの外灯に巻き付けろ!」
深杜の後方にある外灯に、深杜側のつたを絡ませることによって、パワーを補わせる。これが深杜の、相手を捕らえる戦法だ。
「あれだね!分かった!」
深杜がダッシュする。しかし敵も引っ張られまいと上空へ舞い上がろうとする。
「…くっ…!」
きついか…。あともう少しだが、もう限界。深杜の能力は消えかかっていた。
本来なら、完全に相手をロックしてから一撃を食らわせたかったが、やむを得ない…。
足に力を籠める。
―ダンっ…―
相手の高さより高く跳躍。このまま拳を振り下ろす…!
「っしゃああああああああああ!」
―ドゴオオオンッ!!!―
命中。スターダストは地面に叩きつけられた。地面との距離を確認し、俺も着地。
「……」
敵は声を上げる間もなく絶命し、すでに砂化し始めていた。
「はあはあ…なかなか、強かったな…」
一瞬しか戦っていないとはいえ、それに全力を込めたためか、疲労が表れてきている。
「…ふう、やっと落ち着けるよぉ…」
深杜は疲労が完全に限界を超え、その場にぺたんと座り込む。
遠くから通瑠も駆け寄ってきている。
「二人ともお疲れ様。お水あるけど、飲む?」
そう言って、紙コップを取り出し、俺たちに渡す。
「ふわぁ…ホント疲れた…。鳥型は久しぶりだったね」
「最近は不定形型が多いからな。まあいい練習になったよ」
不定形型とは、ほんとの悪霊のように、現実世界に存在するものに近い形をしているのではなく、はっきりとした形をしていないスターダストをさす。
―ピロンー
RINEがメッセージを受信する。
―みんなお疲れ様。速やかに離脱してー
未鈴からのメッセージだった。戦闘が終わり次第、この世界は役目を終えるため、早急に脱出が必要だった。
ーピロンー
続けてRINEがメッセージを受信する。今度は、未鈴からの個人メッセージだった。
ー気になることがあったの。とにかく、戻ってきてから話すからー
とのこと。何か意味あり気で気にはなったが、まずは離脱が先だ。
さっさと帰るぞと言い、二人を促す。離脱するためには、まず風北駅に向かう必要があった。
俺は通瑠を背負い、深杜は『紅色の蔦』を電柱や民家の屋根に、瞬時に絡ませ、ターザンのように飛び移り移動する。
風北駅が、この世界と現実世界を繋ぐ架け橋になっていた。
こちら側の世界に来る時のスタート地点が、必ずここになっていた。その為、戻る時もここに来なければならない。
戻り損ねると、世界に幽閉されてしまう。そうなってしまったらどうなるか、誰にも分からない。
今日も無事に俺たちは、元の世界に戻るため、光に包まれた風北駅の中へ入っていった。
「いったいいつになったら終わるんだろうな…」
戻り際、誰に言うでもなくつぶやいていた。
スターダストとは、この町に巣くう、「悪霊」とでも…いうべきか、そういう存在だ。
俺たちはそれを、「風北町が反転した世界」から退治するチームだ。たった今活動中で、メンバーは俺を入れて4人。相変わらず、この世界は不気味で、不安定に思う。
町内に異変がないか確認中で、それぞれが各地区を回っていた。俺は担当の地区の異常がないことを確認し、いつもの待ち合わせ場所の、風北駅に向かっている。
メンバーとの通信手段は、主に「RINE」という無料通話アプリだ。メッセージも送信できるので、それで情報を共有している。
ー森江地区は問題ないから、私、いつものとこ向かうねー
メンバーの藤崎通瑠からメッセージが入る。俺たちは、「この世界」に入ることによって、特殊な能力が身につく。
ミチルは、微弱ながら磁気を発し、操ることができる。主な役割はサポートで、スターダストの探知や、磁器によって相手の方向感覚を狂わせたり、いろいろなことができる。
接近戦はめっぽう苦手で、力を使いすぎると、周りの電子機器が破壊されてしまう。
最も、彼女の能力は、「現実世界」でも使用できるが…。
―了解。こっちも問題なしだ。俺も今から向かう―
素早くメッセージを打ち、集合場所へ向かう。
「はあっ…!」
俺の能力は、単純なものだが、こういうときに役に立つ。単純にパワーが現実世界より何倍、何十倍にもアップするだけだが、案外、この能力に目立った弱点は無い。
足に力を込めて、普段の何十倍も跳躍する。
軽々と電柱の高さを超え、商店街の屋根上を抜ける。ここから駅までは目と鼻の先だった。
その時。
ーピロンー
不意に、閉じたRINEがメッセージを受信した。
ーミモリちゃんが交戦中。コーヘー君とミチルちゃんは至急、木戸地区へ向かってー
オペレーターの、二階堂 葵衣(にかいどう あおい)からだった。
彼女は「開門(ゲート)」と言われる能力の持ち主。現実世界から、「この世界」へと繋げることができる能力。
主に現実世界からのサポート。大雑把ではあるが、スターダストや生命体を探知できる。ゆえに、誰かが敵と遭遇した場合、他のメンバーにRINEで知らせることができる。
通瑠の能力で探知できるのは、せいぜい半径20メートル。それもあり未鈴の能力は不可欠。
通瑠に電話を掛ける。こんな世界でも電話も通じる。
「もしもし、コーへ―君?」
「ああ、今どこだ?」
ミチルの場所を確認し、合流する。通瑠は商店街付近を担当していたのですぐ見つけられた。ミチルを背中におんぶして、全速力で木戸地区へ向かう。場所は、木戸地区の、旧小学校跡だ。
「はあはあ…このっ…!」
到着すると、ミモリが能力を使い戦っていた。相手は空を飛び回る大型の鳥のような敵。モデルはプテラノドンだろうか。そう思わせるような見た目をしていた。
通瑠を降ろし、隠れるように指示。彼女は基本戦えない。その為、俺ともう一人のメンバー、ミモリがメインで先頭をしている。
「はあはあ…コーヘ―…くんっ」
最後のメンバーの、(いわくま みもり)だ。彼女の能力は、右手から「つた」を生やし、それを自在に…とまではいかないが、コントロール出来る。そうして相手の行動を封じたり、陽動したりする。
「大丈夫か?鳥型のスターダストか…。他に特徴は?」
「ふう…特には。攻撃してくる時は、基本あのおっきなクチバシ」
見ると、いかにも鋭そうなクチバシを持っている。遠距離の攻撃がないのであれば、俺の得意な肉弾戦だが…なにぶん相手は空を飛んでいる。俺が跳躍しても、飛んでいるわけではないし…。相手が下りてくるのを待つしかない。何か投げてぶつけようにも、ここのは何もなかった。
「動きも早いから気を付けて…」
これはカウンターしながらじゃないと厳しいか…。そう思っていた時。
ーバサッ!!-
鳥型のスターダストは羽を折りたたんで突進してきた!
「ちっ…!」
寸でのところで深杜を抱えてよける。スターダストは地面に激突したが、なんともないように再び空へ舞い戻った。
「はあはあ…」
深杜は、戦闘を始めておそらく30分以上だろう、消耗が激しいようで、肩で呼吸していた。
(これは…長くは戦えないな…)
長期戦は危険と判断し、一撃で決着をつけられるように思考回路を働かせる。
俺一人では、射程距離外にスターダストいるため、確実に不利。深杜のサポートが必須だ。
空を飛ぶ敵とは稀に戦うが、ここまでの大きさの敵は初めてだろうと思った。
「深杜!」
疲労から、今にも膝をつきそうな深杜に声をかける。早めに決着をつけることを伝え、一つの作戦を早口で伝える。
「…分かった。やってみる…」
深杜は完全に息切れしているが、スターダストに向かって作戦通りに、つたをスターダストの足に絡ませる。
「ガーネット・アイビー!!」
彼女は自分の能力をそう呼んでいる。直訳すると『紅色の蔦』。
深杜の『紅色の蔦』が鳥型のスターダストの足に絡む。何本も何本も右手から生やし、敵を捕らえる。
しかしこのままでは、体重の軽い深杜がそのまま引っ張られてしまう。スターダストは例え小さくとも、生身の人間より強靭で、力も比べ物にならない。
「深杜!あの外灯に巻き付けろ!」
深杜の後方にある外灯に、深杜側のつたを絡ませることによって、パワーを補わせる。これが深杜の、相手を捕らえる戦法だ。
「あれだね!分かった!」
深杜がダッシュする。しかし敵も引っ張られまいと上空へ舞い上がろうとする。
「…くっ…!」
きついか…。あともう少しだが、もう限界。深杜の能力は消えかかっていた。
本来なら、完全に相手をロックしてから一撃を食らわせたかったが、やむを得ない…。
足に力を籠める。
―ダンっ…―
相手の高さより高く跳躍。このまま拳を振り下ろす…!
「っしゃああああああああああ!」
―ドゴオオオンッ!!!―
命中。スターダストは地面に叩きつけられた。地面との距離を確認し、俺も着地。
「……」
敵は声を上げる間もなく絶命し、すでに砂化し始めていた。
「はあはあ…なかなか、強かったな…」
一瞬しか戦っていないとはいえ、それに全力を込めたためか、疲労が表れてきている。
「…ふう、やっと落ち着けるよぉ…」
深杜は疲労が完全に限界を超え、その場にぺたんと座り込む。
遠くから通瑠も駆け寄ってきている。
「二人ともお疲れ様。お水あるけど、飲む?」
そう言って、紙コップを取り出し、俺たちに渡す。
「ふわぁ…ホント疲れた…。鳥型は久しぶりだったね」
「最近は不定形型が多いからな。まあいい練習になったよ」
不定形型とは、ほんとの悪霊のように、現実世界に存在するものに近い形をしているのではなく、はっきりとした形をしていないスターダストをさす。
―ピロンー
RINEがメッセージを受信する。
―みんなお疲れ様。速やかに離脱してー
未鈴からのメッセージだった。戦闘が終わり次第、この世界は役目を終えるため、早急に脱出が必要だった。
ーピロンー
続けてRINEがメッセージを受信する。今度は、未鈴からの個人メッセージだった。
ー気になることがあったの。とにかく、戻ってきてから話すからー
とのこと。何か意味あり気で気にはなったが、まずは離脱が先だ。
さっさと帰るぞと言い、二人を促す。離脱するためには、まず風北駅に向かう必要があった。
俺は通瑠を背負い、深杜は『紅色の蔦』を電柱や民家の屋根に、瞬時に絡ませ、ターザンのように飛び移り移動する。
風北駅が、この世界と現実世界を繋ぐ架け橋になっていた。
こちら側の世界に来る時のスタート地点が、必ずここになっていた。その為、戻る時もここに来なければならない。
戻り損ねると、世界に幽閉されてしまう。そうなってしまったらどうなるか、誰にも分からない。
今日も無事に俺たちは、元の世界に戻るため、光に包まれた風北駅の中へ入っていった。
「いったいいつになったら終わるんだろうな…」
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