「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

物語の始まり

神様に貰う名前、家族になる誓い8

　神殿の空を舞った花びらは、姿を消してしまった。

そして、神像の前で厳かな儀式が行われている。

クラーク公爵家による約定の儀式。

異界から紹介された（花の乙女）が、元の世界との繋がりを切り捨て、この世界に渡る儀式。


クラーク公爵家の花嫁は託宣の花嫁（神がクラーク一族に託した花嫁）の為、約定の儀に続き婚約の儀が行われている。


水色の髪、菫色の瞳は彼女の気質を反映するように、アーモンドの様な瞳が少し上がり気味で気の強い仔猫の様な少女だ。

「我が名はヴィオレット、クラーク一族に根を張る事を望みます」

幼い身体からは、驚く様な凛とした声で第一声が礼拝堂に響く。


　約定の儀を行うのは爵位順。本来なら聖女と国とが最初の儀式を行う予定になっていたけど「くだらなないわ」と聖女はいなくなったらしい。

私の隣に要る巫女が残念そうに教えてくれたよ。

巫女と手を繋ぎながらヴィオレットを見守ったの。


これは奴隷契約だね、国と一族に有利な契約内容になっているもの。
乙女達の中に気付いた人はいるかな。

ヴィオレットは気付いているんだろうね。

解って契約する事は愚かだと思うよ。

でもね、この小さな身体で国や権力者と渡り合うなんて無理。
私は自我を抑え生きてた、女子高生でしかないのだから。
この世界は現実で、綺麗な夢物語のような世界なんてあり得ない。

だって、これは誘拐だから。

それでも私は契約に望むの、無垢な幼子のふりをして。
何故なら、彼等と一緒にいたいと思ったから。


　撫子はバカではないよね、そう思いたい。跡取りとして英才教育されていた事はしっていたから。

礼拝堂に歓声が響き大きな魔方陣が立体化した。
「お嬢様、契約の完了ですよ」巫女さんが教えてくれる。

ヴィオレットが4人の男性に抱きしめられ、笑っているのが見える。
彼？彼女から苦労した人間に漂う、独特の匂いがするんだよね。

私達は同じ秘密を持つ者同士。
彼女に幸せになって貰いたい。
　

　私の番になり巫女に手を繋がれて、神像の正面に進む。

巫女が緊張しているのが解る。


正面に進むと小さな台座が置かれ、神像を背にクリフォードと似た男性が台座から少し離れて立っている。


召喚された幼女は跪く

「我が名はリィ・ブロン（白百合）キャスル一族に根を張ることを望む」

幼女の声が響く。