「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

物語の始まり

神様に貰う名前、家族になる誓い10

　『異界から来た花の乙女に婚姻を申し込む。冬の凍てつく寒さも、嵐の夜の激しさからも守り、大地に共に根を張、種子を残す事を望む』
クリフォードの声が響くと、腰までの銀髪がキラキラと光。

　『夏の暑さから守り、清水が涌き出る泉に導こう。生涯に渡り、同じ泉の清水を共にし、種子を残す事を望む』
サイラスの、堂々とした声に胸が鼓動が大きくなる。

　『例え長い夜が続くとしても、乙女の手を決して離さない。安寧の大地に導き大地に根を張り、種子を残す事を望む』
アルフレットの、ルビーの様な瞳に吸い込まれてしまう。


　６才の体になった事を、異世界に来てから初めて後悔した。

こんな素敵な、貴公子達に婚姻を申し込まれても私の身体は幼児なのだ。

私は、跪き胸の前に腕をクロスにして頭を垂れる。

『如何なる時も、共に根を張る者として誠意を持って向き合う事を誓います。泉の清水を共にし、苦楽を共にする事に喜び、大地に根を張り、種子を大地に残します』

幼女の誓約せいやくが終わると、礼拝堂に魔方陣が立体化し儀式の完結を告げ、祝福の拍手が起こる。

魔方陣の光が止むとクリフォードが、跪いている私の手を取り立たせてくれたの。

その後、３人が額にキスをしてくれる場面が会ったんだけど、自分の顔が赤くなるのが恥ずかしかったの。




　サイラスに抱っこされ、キャスル侯爵家のボックス席に向かうと、先程の儀式の時に会った、キャスル侯爵と侯爵夫人が出迎えてくれた。

サイラスに、床に卸してもらったの。

御二人に御挨拶しないとね。

拙いながらもドレスを摘まんでカーテシーを披露したの。

「リィ・ブロンです。6歳です、よろしくお願いします」


暫くすると優しい温もりに包まれたの。
花系統の石鹸の匂いが私を包む。




　侯爵夫人が身を屈め、私を抱きしめてくれたの。
「何て、愛らしいのかしら。この年齢の女の子を育てられる何て嬉しいわ！！」

「お母様？そう読んでいい？」

「勿論よ、お母様と、お父様と、読んでちょうだい」

クリフォードと良く似た侯爵を見上げ「お父様？」と読んでみた。

侯爵は私を抱き上げ「改めて言おう、君を歓迎しよう。リリィ」

侯爵夫人は、私の頬っぺたを指でツンツンしながら「仲良くしましょうね。リリィ」と笑っていた。


『私こそ、宜しくお願いしす』
私は、コクコクと頷く。



　お父様は私を抱き上げながら、お母様をエスコートしてボックス席の最も手前まで出たの。
両脇には、サイラスとアルフレットが付き添ってくれている。

階下を、見下ろすと召喚された少女達が、国との約定の儀に臨んでいた。
少女達のドレスが花ように見えて、見とれているとサイラスが瞼にキスをしたの。
私は、驚き声を出しそうになった。


「見られている事を忘れてはいけない」

侯爵が、小さな声で教えてくれた。

この場所に立つ意味を、理解した。


　花の乙女を高々と抱き上げながらも、美しい夫人をエスコートしている姿に貴族、有力者達はキャスル侯爵家の繁栄を確信した。