「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

穏やかな日々と新たな出会い

　柔らかなベッドの中で目を覚ますと、室内には微かな花の匂いが漂てっいる。
キャスル侯爵家の朝は、穏やかに始まります。

　「お嬢様、お早うございます」エミリーが声を掛けてくれてからベッドから出るのが決まりです。

「エミリー、お早う」ベッドから、小さくジャンプして出るよ。とても豪華なベッドなんだけど足がとどかない！

エミリーの実家は、キャスル侯爵家の領地で、かなり成功している商家さんです。

魔力も少し有るらしく、侯爵家で私の、ねえや、をしながら侯爵家で行儀見習いを頑張っています。

此方の世界での、ねえや、の立場は主家の家の子守りかな。

魔力が有り、侯爵家の推薦、成功した商家で有れば下位貴族の家ぐらいなら嫁げるみたいです。


ピチピチの13才、婚活中でーす。

お嬢様、今日はこのドレスで宜しいですか？
エミリーがアイスブルーのドレスを用意してくれる。ドレスの型は、幼児用なので胸の下の切り替えになります。
「クリフォード様の色だね」笑みが漏れてしまう。
初夏にピッタリの色だ。

エミリーに手伝って貰い、ドレスに着替え、食堂に向かう。遅れてしまうのは、マナー違反です。

食堂の扉を、エミリーが開けてくれる。
「お早うございます」スカートを軽く摘まみご挨拶をして、自分の席に向かう。

食堂に居たのは、お母様とサイラスの２人で、私の席は基本的に、お母様の隣になります。
エミリーに椅子に座るのを手伝って貰って座ります。

神様に祈りを捧げて食事が始まります。

対面にいるサイラスを見詰めると「今日は、休みになったんだ。儀式の日以来だな」
そう、そうなんです。
あの日以来、お父様と、お母様、エミリーと過ごしています。
クリフォードは、宰相室の補佐官なので元々仕事が忙しい上に、今は召喚の余波で更にハードになってるみたいです。あの日以来、城から帰ってません。

サイラスは、国軍の中佐で、彼も仕事が忙しかったのに、召喚の直後の為か軍に詰めていました。

アルフレットは、学生で寄宿舎生活の為、基本的に居ないみたいです。
魔力が多く、将来は宮廷魔術師に成る事を期待されている学生さんです。

「５日振りだな。寂しかったか？」
甘い声で聞いて来ます。
「今日は、一緒に寝るか」
「ブッシュ」
いけない！持っていたパンを潰してしまいました。
隣の、お母様を見ると「クスクス」と、笑っています。
サイラスは、涙を流して笑ってます。

私の乙女心は、ズタズタです。

そんな時、食堂の扉が開き、お父様が入室されて来ました。
お父様の側には、知らない男性も一緒ですが、お母様もサイラスも彼を笑顔で迎えています。

「フレーゲル、先程、話した我が家の姫君だ」お父様が、彼に私の紹介を始めます。
「リリィー座ったままで良いから、挨拶なさい」
「初めまして。リィ・ブロンです」
「初めまして、お姫様。フレーゲル・フォン・キャスルだよ。何歳かな？」
「6歳です」
彼は、紫色の髪に銀色の瞳の貴公子ですが、私の年を聞いて引いてました。不思議です。


ですが、お父様とフレーゲルを加えた食事が再開されると、皆で和やかに食事を頂きました。


「旦那様、今日はお買い物に行きたいわ」
「母上。王都は、まだ落ち着付いてませんよ」
「仕方ないわ。今日は屋敷に商人を呼びますわ」
「リリィーの物も、まだ足りないわ」
何が足らないのかな？お父様を見詰めると、黙ってなさい、そんな視線が帰ってきたよ。
サイラスもフレーゲルも笑っているしね？

「リリィー、食事が終わったら庭に散策にでもいこう」
先程の事が会ったから、疑り深い目になってしまう。
「その後、東屋でお茶でも飲もう。料理長に焼き菓子を焼いて貰っている」
「はい、行きます！」
料理長の菓子は絶品だ。
この後、皆に笑われてしまった。




　私の名前は、フレーゲル・フォン・キャスル。
理由有りの産まれで、キャスルと名乗っているが、侯爵夫人の息子では、無い。
父親は、先代の侯爵の3男なので、サイラス達とは従兄弟になる。生みの母上とは、2どと会う事は無いだろう。父親とは、私が産まれる前に死別した。

侯爵夫人は、とても優しい方だ。
先代侯爵の元で育てられ、親が恋しいと泣く私を引き取り、サイラス達と共に育ててくれた。

先代侯爵が子爵の爵位を、生前譲ってくれたのは
恐らく、手切れ金の代わりだろう。

何時までもキャスル家に甘える事が出来ない事はわかっていたから、留学を決行したのが、3年前だ。

侯爵は、時折々の手紙を送ってくれていたが、先日、夫人の容態が悪い帰国せよと、速達が届いた。