「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

キャスル侯爵領

新年の祝賀会

　雪が深々と降る中、この世界に来て初めての新年を迎えました。

秋の終わりに、お義父様と、お義母様、フリーゲルと馬車と魔導列車を乗り継ぎキャスル侯爵領入りしたと思ったばかりです。

　そう、これは異世界ルールとでもいうのかな？
新年を迎える時、皆、一斉に年を取るの。

フフッ・・・・7才になりました。

そして、ご機嫌なのはクリフォード、サイラス、アルフレッドも領地入りしたこと。


やはり彼等が側にいてくれる、それだけで嬉しくなるのです。


　そして、赤い絨毯が敷かれている、この広間で新年の祝賀会が始まるのです。

今日は、キャスル一族に対して私の御披露目も予定に入っている。

ちゃんと、練習しましたよ。

広間の上座であり、一段高くなっている場所には豪華な椅子が置かれてます。

お義父様と、お義母様が座る場所ですよ。




ド～ン！重みのある音が広間に響く。

侯爵夫妻の入場の合図なのだろう、老若男女が深々と頭をたれる。

「皆、頭を上げよ」

キャスル侯爵の言葉で、皆が頭をあげる。

「今年は、隣国と戦もあったが勝利を勝ち取ることができた。また、花の乙女の召喚で託宣の花嫁も迎えた」

広間に集うキャスル一族から歓声が沸き拍手が起こる。

召喚された少女が、侯爵家の長男と手を繋ぎながら侯爵と夫人の前に進み出るのだ。

一族の者の中には少女の幼さに、驚く者もいただろう。

「新年の挨拶を申し上げます。同時に若輩者ながら一族の栄達に扶翼する旨を付け加えさせて頂きます」

侯爵家の長男らしいクリフォードの挨拶が終わる。


「新年の挨拶を申し上げます。心身を鍛え、一族に相応しい身になることを、このよき日に誓います」

幼い少女の声が広間に広がる。

少女は、侯爵夫妻を背にするように向きを変える。


「リィ・ブロウです。どうか良しなに」
小さなカーテシーを披露する。

広間は盛大な拍手で溢れる。

「クリフォード様」
リリィは隣にいるクリフォードと、離れた場所にいる婚約者達に笑顔を向けた。

新年の良き日に、召喚された花嫁に未来の侯爵領の栄えを夢見る者。

少女に嫉妬を覚える者もいるのだ。

此処は現実の世界なのだから。



　私達の挨拶が終わると一族の重鎮の方、戦で手柄を立てた人、成人を迎えた人達からの挨拶が順番に行われたの。

私は、お義母様の横に席が設けられ、クリフォードはお義父様の後ろに立ちながら控えていましたよ。

重鎮の方の中には笑いながら、お義父様に苦言を言って広間に笑いが起こる場面。

戦で手柄を上げた人達は、報奨にとても喜んでいた。

成人を迎えた人達は、青くなったり、赤くなったりして挨拶をしていましたね。

緊張し過ぎた人の中に、語尾が少し可笑しくなった人もいましたよ。

でも、今日は、新年の御目出度い日です。

「がんばれ！」「がんばれ～！」
なんて、広間にいる人々から応援もありました。

緊張もしたけど終わってみると、ほのぼのとした新年の風景でした。