令嬢の願い~少女は牢獄で祈る~

Mona

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少女は再び目覚める

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 暗やみの中で紺碧の瞳が開く。

 紺碧の瞳、白金の髪は帝国の皇太子よりも皇族の特徴を実体化している。

少女は暗やみの中、ベッドから飛び起きる。

「うっわー、火刑はさすがに熱いわ!」

そして、花瓶から花を引き抜き・・・・。
《ごくごく》花瓶から直接、水を飲む。

「何て美味しい水なの。獄中で飲んでいた水とは比べられないわ」
少女は、まるで聖水のように誉め称える。

口元を、寝着の袖元で拭いながら鏡の前に立ち、胸元の小さな星形の痣を確認する。

月明かりが、鏡の前に立つ少女を照らす。

「返って来たわよ。地獄から甦ってやったわ」
10才位の少女は泣きながら、鏡の前でニヤリと微笑む。

「負けないわ。そう、自由に生きたい。」

少女は、おもむろにベッドに倒れ込む。

「何て柔らかい寝具なの。シーツの肌触りも最高ね」

そして、ベッドの上でピョンピョンする。
「最高のスプリングだわ」
獄中と比べると雲泥の差に、ため息を吐く。



 公衆の前で火刑になった自分を、冷静に見ていた皇太子。

皇室の特徴を実体化した自分が苦しむのを、民衆は嬉々として見ていた。

皇太子に寄り添う異母妹であるエリスは、いつも涙を流していた。

「お姉さま、ご免なさい」妹は、いつも私に誤りながらも婚約者を奪っていた。

無邪気な悪意に、反吐が出そうだ。

「彼女は悪く無い」婚約者である皇太子のセリフはいつも同じだった。

何を言ってるんだ!

お前らが悪いんだ!

少女は、天涯の布を見つめる。

口調が悪くなったけど仕方ないわ。
だって何回も獄中にいたんだもの。

尋問の時に爪を剥がされるのは、当たり前だった。
少女は、小さな爪を撫でる。

巨大な水槽の中に放り投げられた、処刑もあったわね。

水槽の中には、肉食の魚が放たれていた。

「お姉さまご免なさい」妹は涙を流しながらも、しっかりと見ていた。

そんな側面が有る娘。




 同じ時間を繰り返している記憶が蘇るのは、いつも処刑されている最中だった。

 皇太子と妹の婚儀を整える為、私は悪い魔女の役にされる人生だった。

それは、時代の転換期にある帝国の贄とされたのだ。

この苦しみを忘れてはいけない。
奴等の犯した罪を忘れない。

処刑された直後に甦った過去の記憶。

だから、私は邪神様に願ったのよ。




 邪神様は、私の願いを叶えてくれた。

「邪神様、有り難うございます」

大願成就の暁には、この国の女神信仰を廃止する運動をします。

お休みなさい邪神様、明日から頑張ります。




 眠りに着いた私は、過去の夢を見た。

私は、庭の片隅で泣いていた。

「見てしまったのですね」
彼は、私よりも悲しげにうつむいていた。


人目につかないように彼は、私を自分の胸の中に隠してくれた。

あの頃の彼の立場は、危うかった筈。


彼の胸を借りて泣いている私を、最後まで抱き締めてくれた人。

人の温もりを、私に教えてくれた人。

その後の私は、彼の事を考えると理由が解らない感情に襲われたわ。

ある人が、それを恋心と教えてくれた。

 




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