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第一章
第三節
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その世界のほとんどは巨大な半球状の壁に覆われている。その外側でうごめく者たちに対処しきれないからだ。だから人々は生活圏を細かくわけ、その〝邪悪なるもの〟の侵入を防いでいる。その者たちは旧文明に属し、実体をもつが、光を嫌うため退けるすべはある。問題は彼らの生み出す魔力と悪魔の方だった。
「正しきものは罪を犯さず、犯したとして、悔いとともに生きる」
その世界の聖書の言葉を読み上げ、精霊と大精霊に感謝を告げると、そのシスター〝エンリル〟は朝の礼拝をおえ、掃除や、かたずけの準備に取り掛かる。さっぱりとした外はねの黒髪に内側を白くそめたツートーンショートヘアー、左目になきボクロ、目はほどほどにぱっちりで、めじりは鋭くも、まなざしは優しい。
昼からはある子供の通過儀礼が行われる。ただのそれではない。エクソシストになるものの通過儀礼である。通常、精霊ニア教では、預言者により、聖痕の出るものが特定され、聖痕がでたものに、預言者がその痛みと痕跡を肩代わりする〝形代〟としての聖痕器を授ける。
儀式は、滞りなく行われた。様々な幕が下ろされ、真っ白に彩られた教会内部で鼻と口と頭を十字の縫われた白い布でおおった預言者の使役するシスターたちが、特別な祈りと、祈りの言葉を捧げる。協会付きのシスターたちもそれをみまもり、距離をおき、教会の入り口付近で祈りをささげる。
ほとんど、その通過儀礼には苦しみはない。だがたまに悪魔や、憑依されているものがあると、それは子供が苦しみ悶える苛烈な儀式に代わることもある。しかし仕方がないことなのだ。エクソシストになるには子供の内にならなければならず、預言者は神の言葉を降し、その苦しみを和らげることしかできない。精霊にあだなす、邪教や〝壁の外の悪魔〟〝郊外の悪魔〟たちを遠ざけるために。
儀式の終わり際、神父が最後の言葉を述べる。
「悪しきものも、迷いしものも、なべて大精霊夫妻の御名において、救いたまえ」
その瞬間、シスター・エンリルは、神父の後ろに小さな、コウモリの羽をもち、一本のツノをはやした悪魔の姿をみた。
「ウソツキ、ウソツキどもめ!!」
悪魔はそう叫んだあと、最後にシスター・エンリルをみて、さらに嫌な顔をしてにやけながらいった。
「ウソツキィィ」
「シスター、私はファンなのです」
儀式が終わると、先ほど儀式を終えた子供が話しかけてきた。
「そうだったの、ありがとう」
「ええ、シスターは、郊外付近地区の誇りです」
「……そういわれると、私も自信がわくわ、また何かこまったことがあったら、私をたよって頂戴、エクソシストの先輩として、できることはするから」
「はい!!ありがとうございます」
そういうと、その緑髪、糸目の少女は、かけぬけていった。
「……」
シスターは教会のキレイな窓から、外をみた。薄暗い青い空を。
「郊外付近地区……か」
一般的に郊外に近づき、壁に近づくほど危険が多くなる、最悪の場合、魔物の襲撃を受けることもあるのだ。実際、それによってそのシスターは子供の頃、両親を失っていた。
「正しきものは罪を犯さず、犯したとして、悔いとともに生きる」
その世界の聖書の言葉を読み上げ、精霊と大精霊に感謝を告げると、そのシスター〝エンリル〟は朝の礼拝をおえ、掃除や、かたずけの準備に取り掛かる。さっぱりとした外はねの黒髪に内側を白くそめたツートーンショートヘアー、左目になきボクロ、目はほどほどにぱっちりで、めじりは鋭くも、まなざしは優しい。
昼からはある子供の通過儀礼が行われる。ただのそれではない。エクソシストになるものの通過儀礼である。通常、精霊ニア教では、預言者により、聖痕の出るものが特定され、聖痕がでたものに、預言者がその痛みと痕跡を肩代わりする〝形代〟としての聖痕器を授ける。
儀式は、滞りなく行われた。様々な幕が下ろされ、真っ白に彩られた教会内部で鼻と口と頭を十字の縫われた白い布でおおった預言者の使役するシスターたちが、特別な祈りと、祈りの言葉を捧げる。協会付きのシスターたちもそれをみまもり、距離をおき、教会の入り口付近で祈りをささげる。
ほとんど、その通過儀礼には苦しみはない。だがたまに悪魔や、憑依されているものがあると、それは子供が苦しみ悶える苛烈な儀式に代わることもある。しかし仕方がないことなのだ。エクソシストになるには子供の内にならなければならず、預言者は神の言葉を降し、その苦しみを和らげることしかできない。精霊にあだなす、邪教や〝壁の外の悪魔〟〝郊外の悪魔〟たちを遠ざけるために。
儀式の終わり際、神父が最後の言葉を述べる。
「悪しきものも、迷いしものも、なべて大精霊夫妻の御名において、救いたまえ」
その瞬間、シスター・エンリルは、神父の後ろに小さな、コウモリの羽をもち、一本のツノをはやした悪魔の姿をみた。
「ウソツキ、ウソツキどもめ!!」
悪魔はそう叫んだあと、最後にシスター・エンリルをみて、さらに嫌な顔をしてにやけながらいった。
「ウソツキィィ」
「シスター、私はファンなのです」
儀式が終わると、先ほど儀式を終えた子供が話しかけてきた。
「そうだったの、ありがとう」
「ええ、シスターは、郊外付近地区の誇りです」
「……そういわれると、私も自信がわくわ、また何かこまったことがあったら、私をたよって頂戴、エクソシストの先輩として、できることはするから」
「はい!!ありがとうございます」
そういうと、その緑髪、糸目の少女は、かけぬけていった。
「……」
シスターは教会のキレイな窓から、外をみた。薄暗い青い空を。
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一般的に郊外に近づき、壁に近づくほど危険が多くなる、最悪の場合、魔物の襲撃を受けることもあるのだ。実際、それによってそのシスターは子供の頃、両親を失っていた。
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