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第一章
第二節
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―ある時男は、少年時代、ある孤児院にひきとられて兄弟の誓いをかわした男と、その才能を見込まれてエクソシストとなった―
ある古びた夜の教会。エクソシストとしての依頼をこなすため、二人の少年はそこにいた。
「なあ、離れるなって」
「……ルアル、でも俺は……」
「リドル、大丈夫だって」
「俺の噂をしっているだろう、俺は本当に悪魔が見えるんだ、その悪魔は常におれに襲い掛かる瞬間を狙っている、俺に近づけば近づくほど、お前もきっと……」
そのリドルと呼ばれた男こそは、あの教会にいた神父の子供時代の姿だった。まだ目に覇気があり、そのルアルという人間に特別なまなざしを向けているようだった。
「ルアル……」
「いや、兄ちゃんでいいといったろう」
ルアルは、左手が義手であり、その手でリドルの肩に手をあてた。
「大丈夫だ、気にするな……それに、いったろ?俺が自信をとりもどさせてやるって」
「う、うん」
そして、次の瞬間、ルアルの背後をみたリドルは言葉を失った。
「に、兄ちゃん、悪魔、悪魔が……」
「うん?」
一瞬、そのルアルという少年も言葉を失った。
「あ、あ……」
鍵穴のような穴ぼこのあいた顔、歯車が体中にはびこり、くいこんだ形状。ところどころが木々でできており、それが内蔵が骸骨を形成している姿。そこにいた悪魔は、少年時代のリドルがよく話していた悪魔だった。
「ロキアだ!!ロキアだ!!本当にでてきたんだ、いつも僕を、隙間から、物陰から、人込みからのぞいて、僕に悪意を吹き込む悪魔だ!!」
「落ち着け!!」
ルアルが、手袋をした手でリドルの手をとる。するとリドルはいくらか落ち着いたようだった。
「よくみろ、下級悪魔だ」
そこには、まるでランタンに目玉がついたような奇妙な悪魔がふわふわとういていて、わけもわからぬように呆けた表情でこちらをみていた。
二人がおちついて、聖書をとりだそうとすると。下級悪魔はそれをみて、いつしか笑い転げていた。
「何わらってるんだ?」
とルアル
「多分、知能が低いんだろう」
とリドル。
やがて二人が聖書をとりだし、読みだすと、あたりが濃い霧に包まれ始めてきた。
「なあ、ルアル」
「なんだ?」
「なんか、おかしくないか?」
「何が?」
「気づいていないのか?」
「何がだ?」
ふと、じっくりとルアルを見つめるリドル。明らかに奇妙な部分があるのだが、ルアル本人は気づいていないようだった。
「~聖なる精霊と大精霊夫妻の名において~精霊の友をすくいたまえ」
リドルの言葉はおかしくなかった、おかしいのは、ルアルのほうだ。聖書の文言につづいて、小さく何かをつぶやいている。リドルはすぐには気づかなかったが、少しずつその異変に気付いて、背中に寒気が走るのをおぼえた。
「~邪悪ナル~穢れた~おぞましい」
と、聖書の文言にあわせて汚い言葉をはいている。言葉の最後に汚い言葉を吐くのは、教会の規則に反する、もとい、それは禁忌。悪魔を呼び出す儀式に使用されるときいていた。
「ル、ルアル……悪ふざけをしているの?」
「何が?」
「ルアル、本当に気付いていないの?」
ふと、リドルは手を伸ばす、ルアルの手袋をした右手、彼に〝害が及ばないように〟しかし、その手に触れた感触は暖かく少し湿気をおびていて、ふんわりとやさしかった。リドルが長く味わってこなかった、人肌の感触だった。
「ど、どういう……」
ふとしたをみると、先ほどの下級悪魔が、ルアルの右手の手袋にかみついてはぎとり、地面にへたりこんでいた。彼は上を向いていった。その目は血走っていた。
「馬鹿にシタナアァァ、おいらの事を、おいらは〝ロキア〟様の信奉者だ、お前、もう終わりだ、油断して、人肌にふれた、裏切りの人肌に!!」
そしてリドルは、正面をむいた。もはや聖書の文言ではなく、悪魔の言葉を繰り返し続ける、ルアルのほうを。
「ル、ルアル」
呼びかけに応じて、ゆっくりと振り返るリドル。その顔左半分は涙をながし、くちをとじていたが、ゆっくりとこちらをふりかえると、そのもう半分は目が鍵穴状にくりぬかれたようになり、口のもう半分はくるったようにカタカタと悪魔の言葉をくちばしっていた。
「〝ロキア〟だ!!〝ロキア〟だあ!!!」
その悪魔は、かつて、少年が山賊に襲われ両親を失ったときはじめて目にしたものだ、それは少年に前もって彼の定めを教えた。
「お前はここで死ぬ」
と、だがその言葉を裏切り、彼だけが生き延びた。その後ずっと、かの悪魔はストーカーのように彼の夢や、妄想の中にあらわれて、彼といれかわろうとした。ルアルにも皆にもそのことを話したが。信じてくれたのは、ルアルだけだった。その大事なルアルを、ここで失うわけにはいかない。
その心を強く感じながら、もう半分の意識では、体中の毛が逆立ち自分の本能につげていた。
「ニゲロ、ニゲロ、ニゲロ、ニゲロ」
「〝リドル、俺たちは、エクソシストだ……〟」
そういう、ルアルの声をききながら、リドルは悪魔に憑依されたルアルにつっこんでいった。
「うああああああ!!!!」
「!!!」
ルアルは、そのタックルで地面に放りだされた。そして、リドルの様子をみつめた。リドルは……彼に体当たりした勢いのまま、教会の裏口へ走り、そして、そのまま逃げて行ってしまった。かすれるような鳴き声とともに。あとには、悪魔の笑い声だけが響いたのだった。
ある古びた夜の教会。エクソシストとしての依頼をこなすため、二人の少年はそこにいた。
「なあ、離れるなって」
「……ルアル、でも俺は……」
「リドル、大丈夫だって」
「俺の噂をしっているだろう、俺は本当に悪魔が見えるんだ、その悪魔は常におれに襲い掛かる瞬間を狙っている、俺に近づけば近づくほど、お前もきっと……」
そのリドルと呼ばれた男こそは、あの教会にいた神父の子供時代の姿だった。まだ目に覇気があり、そのルアルという人間に特別なまなざしを向けているようだった。
「ルアル……」
「いや、兄ちゃんでいいといったろう」
ルアルは、左手が義手であり、その手でリドルの肩に手をあてた。
「大丈夫だ、気にするな……それに、いったろ?俺が自信をとりもどさせてやるって」
「う、うん」
そして、次の瞬間、ルアルの背後をみたリドルは言葉を失った。
「に、兄ちゃん、悪魔、悪魔が……」
「うん?」
一瞬、そのルアルという少年も言葉を失った。
「あ、あ……」
鍵穴のような穴ぼこのあいた顔、歯車が体中にはびこり、くいこんだ形状。ところどころが木々でできており、それが内蔵が骸骨を形成している姿。そこにいた悪魔は、少年時代のリドルがよく話していた悪魔だった。
「ロキアだ!!ロキアだ!!本当にでてきたんだ、いつも僕を、隙間から、物陰から、人込みからのぞいて、僕に悪意を吹き込む悪魔だ!!」
「落ち着け!!」
ルアルが、手袋をした手でリドルの手をとる。するとリドルはいくらか落ち着いたようだった。
「よくみろ、下級悪魔だ」
そこには、まるでランタンに目玉がついたような奇妙な悪魔がふわふわとういていて、わけもわからぬように呆けた表情でこちらをみていた。
二人がおちついて、聖書をとりだそうとすると。下級悪魔はそれをみて、いつしか笑い転げていた。
「何わらってるんだ?」
とルアル
「多分、知能が低いんだろう」
とリドル。
やがて二人が聖書をとりだし、読みだすと、あたりが濃い霧に包まれ始めてきた。
「なあ、ルアル」
「なんだ?」
「なんか、おかしくないか?」
「何が?」
「気づいていないのか?」
「何がだ?」
ふと、じっくりとルアルを見つめるリドル。明らかに奇妙な部分があるのだが、ルアル本人は気づいていないようだった。
「~聖なる精霊と大精霊夫妻の名において~精霊の友をすくいたまえ」
リドルの言葉はおかしくなかった、おかしいのは、ルアルのほうだ。聖書の文言につづいて、小さく何かをつぶやいている。リドルはすぐには気づかなかったが、少しずつその異変に気付いて、背中に寒気が走るのをおぼえた。
「~邪悪ナル~穢れた~おぞましい」
と、聖書の文言にあわせて汚い言葉をはいている。言葉の最後に汚い言葉を吐くのは、教会の規則に反する、もとい、それは禁忌。悪魔を呼び出す儀式に使用されるときいていた。
「ル、ルアル……悪ふざけをしているの?」
「何が?」
「ルアル、本当に気付いていないの?」
ふと、リドルは手を伸ばす、ルアルの手袋をした右手、彼に〝害が及ばないように〟しかし、その手に触れた感触は暖かく少し湿気をおびていて、ふんわりとやさしかった。リドルが長く味わってこなかった、人肌の感触だった。
「ど、どういう……」
ふとしたをみると、先ほどの下級悪魔が、ルアルの右手の手袋にかみついてはぎとり、地面にへたりこんでいた。彼は上を向いていった。その目は血走っていた。
「馬鹿にシタナアァァ、おいらの事を、おいらは〝ロキア〟様の信奉者だ、お前、もう終わりだ、油断して、人肌にふれた、裏切りの人肌に!!」
そしてリドルは、正面をむいた。もはや聖書の文言ではなく、悪魔の言葉を繰り返し続ける、ルアルのほうを。
「ル、ルアル」
呼びかけに応じて、ゆっくりと振り返るリドル。その顔左半分は涙をながし、くちをとじていたが、ゆっくりとこちらをふりかえると、そのもう半分は目が鍵穴状にくりぬかれたようになり、口のもう半分はくるったようにカタカタと悪魔の言葉をくちばしっていた。
「〝ロキア〟だ!!〝ロキア〟だあ!!!」
その悪魔は、かつて、少年が山賊に襲われ両親を失ったときはじめて目にしたものだ、それは少年に前もって彼の定めを教えた。
「お前はここで死ぬ」
と、だがその言葉を裏切り、彼だけが生き延びた。その後ずっと、かの悪魔はストーカーのように彼の夢や、妄想の中にあらわれて、彼といれかわろうとした。ルアルにも皆にもそのことを話したが。信じてくれたのは、ルアルだけだった。その大事なルアルを、ここで失うわけにはいかない。
その心を強く感じながら、もう半分の意識では、体中の毛が逆立ち自分の本能につげていた。
「ニゲロ、ニゲロ、ニゲロ、ニゲロ」
「〝リドル、俺たちは、エクソシストだ……〟」
そういう、ルアルの声をききながら、リドルは悪魔に憑依されたルアルにつっこんでいった。
「うああああああ!!!!」
「!!!」
ルアルは、そのタックルで地面に放りだされた。そして、リドルの様子をみつめた。リドルは……彼に体当たりした勢いのまま、教会の裏口へ走り、そして、そのまま逃げて行ってしまった。かすれるような鳴き声とともに。あとには、悪魔の笑い声だけが響いたのだった。
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