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1章
決闘祭
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翌週から、孤児院はバタバタとしはじめた。といっても、大人たちは置いてけぼりで、子供たちだけで準備をするのだ。“決闘祭”だ、“決闘祭”だ。と叫ぶ、8月のこの時期、その大陸では、故人を思い、再会する時期とされ、祭りなども行われ、花火が打ち上げられる。孤児院はお金がそれほどないので、こじんまりとした祭りを行い、自分たちで出し物を用意したりするのだが、それらがすべておわったあと、孤児院の子供たちだけで、オンボロのオートマタをつかって、決闘をするのだ。大人たちもそれを黙認する、いわば孤児たちの中で受け継がれている風習のようなもの。
そこで賭けられるものは、大人の目を見てもこまらせないもの。たとえばかすかな願い事など、今年もその用意が進んでいた。小さなテーブルに、かざりつけ、今年の決闘祭はトーナメント形式で、準決勝以外は、事前に行われる。プラグはほとんど興味はなかったが、しかし、あの少年―クラン―が参加するというので、気になって自分も参加する方法がないかと考えていた。
だがプラグは、そもそもオートマタというものに興味もなく、決闘というものにもその年まで一切興味をもっていなかった。だからオートマタを用意することができずにいたのだ。
クランは、その頃になると、孤児院も中心にいた。エリサとも仲良くしていた。プラグは、自分の顏の傷をつけた人間を黙っていることを選択したことをずっと悩み続けていた。
“夜道で大人につけまわされた”
そういうことにしておいたが、マルグリッドにだけは話していた。マルグリッドはそれ以来ずっとクランを監視しているし、プラグのことをじっと見守っているように思えた。それだけでよかったのだ。
顔が傷だらけになり目を覚ますと、マルグリッドがいた。マルグリッドは自分にとって、母のようで姉のような存在、あるいは天使―。そんな事を考えていると、その日の決闘祭の準備は終わっていて、プラグはほとんど手伝わなかった後悔と、エリサに自分もでるからどうにかしてオートマタを用意してくれないかと言い出せなかったことを悔いた。エリサはその点、顔が利くのだ。
(はあ)
どこかでエリサが、あのクランと仲良くしていることにやきもきした感情を抱きながら、眠る前、月明りをみていた。その時だった。
“ここへ……ここへ……”
「!?」
声でもない、音ではない何かの信号を頭に直接流し込まれた用な言葉が頭にひびた。
「だれだ?」
振り返り周囲を見渡す。しかしそこには何の気配もなかった。だがプラグはどこかから自分を呼ぶ声と、その場所のイメージが送られてきているような気がした。きっと向こうだ。コの字型の庭をつっきって、裏庭、修道院に続く道のあたり、あそこには確か……。
歩いて行って歩みをとめた、その瞬間、プラグはあるゴミ箱を見下ろしていた。ふたがされた青いごく普通のプラスチック製のごみ箱。
“そうよ―それをあけて”
プラグはフタに手をかけた。禁断の感覚を、何かの背徳感を感じながらフタをあけると、そこにはオンボロで、ツギハギ、しかし骨格のしっかりした。オートマタが捨てられていた。
“そうよ”
ふと、プラグはオートマタではなく周囲から気配を感じてそちらを振り向く、と、裏庭を突っ切った先、フェンスのある裏口に人影をみた。
だがそんな事は関係なかった。誰のものかしらないし、もし問題があれば返せばいい。これで、このオートマタで戦えば勝てる。そんな気がした。そのオートマタは、カブトムシのような角のついた、キリリとした目と、頑丈な下あごをもっていて、どこか獣人のような体つきをした、異形のオートマタだった。その異形さを自分と重ねたのだった。
そこで賭けられるものは、大人の目を見てもこまらせないもの。たとえばかすかな願い事など、今年もその用意が進んでいた。小さなテーブルに、かざりつけ、今年の決闘祭はトーナメント形式で、準決勝以外は、事前に行われる。プラグはほとんど興味はなかったが、しかし、あの少年―クラン―が参加するというので、気になって自分も参加する方法がないかと考えていた。
だがプラグは、そもそもオートマタというものに興味もなく、決闘というものにもその年まで一切興味をもっていなかった。だからオートマタを用意することができずにいたのだ。
クランは、その頃になると、孤児院も中心にいた。エリサとも仲良くしていた。プラグは、自分の顏の傷をつけた人間を黙っていることを選択したことをずっと悩み続けていた。
“夜道で大人につけまわされた”
そういうことにしておいたが、マルグリッドにだけは話していた。マルグリッドはそれ以来ずっとクランを監視しているし、プラグのことをじっと見守っているように思えた。それだけでよかったのだ。
顔が傷だらけになり目を覚ますと、マルグリッドがいた。マルグリッドは自分にとって、母のようで姉のような存在、あるいは天使―。そんな事を考えていると、その日の決闘祭の準備は終わっていて、プラグはほとんど手伝わなかった後悔と、エリサに自分もでるからどうにかしてオートマタを用意してくれないかと言い出せなかったことを悔いた。エリサはその点、顔が利くのだ。
(はあ)
どこかでエリサが、あのクランと仲良くしていることにやきもきした感情を抱きながら、眠る前、月明りをみていた。その時だった。
“ここへ……ここへ……”
「!?」
声でもない、音ではない何かの信号を頭に直接流し込まれた用な言葉が頭にひびた。
「だれだ?」
振り返り周囲を見渡す。しかしそこには何の気配もなかった。だがプラグはどこかから自分を呼ぶ声と、その場所のイメージが送られてきているような気がした。きっと向こうだ。コの字型の庭をつっきって、裏庭、修道院に続く道のあたり、あそこには確か……。
歩いて行って歩みをとめた、その瞬間、プラグはあるゴミ箱を見下ろしていた。ふたがされた青いごく普通のプラスチック製のごみ箱。
“そうよ―それをあけて”
プラグはフタに手をかけた。禁断の感覚を、何かの背徳感を感じながらフタをあけると、そこにはオンボロで、ツギハギ、しかし骨格のしっかりした。オートマタが捨てられていた。
“そうよ”
ふと、プラグはオートマタではなく周囲から気配を感じてそちらを振り向く、と、裏庭を突っ切った先、フェンスのある裏口に人影をみた。
だがそんな事は関係なかった。誰のものかしらないし、もし問題があれば返せばいい。これで、このオートマタで戦えば勝てる。そんな気がした。そのオートマタは、カブトムシのような角のついた、キリリとした目と、頑丈な下あごをもっていて、どこか獣人のような体つきをした、異形のオートマタだった。その異形さを自分と重ねたのだった。
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