虚ろ青年、水の巫女に転生する

ショー・ケン

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第一章 スキル授与

クロトの街

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 クロトの街は主に魔石採掘や、鉱物の採掘、加工が有名で、職人気質な大人が多い。ごつごつとした筋骨たくましく背が低く、また耳のとがった人間も多いことから、古代のドワーフの血筋の人間が多くいるといわれている。

 ニヨネと別れ歩いていると、ふとどこかでヒソヒソ声が聞こえる。耳はぴくぴくと少し動かすだけでその方向にアンテナを張る事ができた。大人たちの声だ。
「聞いたか、ケローネのところのチビ獣人、ヘリオっていったか、“水”のスキルだってよ」
「ははは!嫁も恋人もつくらねえ変わり者だと思っていたが、まあ娘も変わり者ってこったな!」
「まあ、大声じゃいえねえがな、何せやつの発明や医療スキルには何度助けられたか」
「俗にいう天才、だが偏屈なのがいけねえな、“獣人好き”で人間の女にゃ興味ないしな」


 聞いてはいけないと自分の手で耳に栓をした。折り曲げて塞ぐ事もできるが、違和感があるし急ぐとよくクセでこうやってしまう。ヘリオが過保護であまりにもオレをかわいがるので、奇妙な噂がたつ。ほっぺをすりすりしたり、この歳で背中におぶったり、多少のいじめに介入したり……。
(いいのだ、変わりもの何てことはいわれなれているし……)


 ションボリしたまま家に到着する。自宅は教会横の掘立小屋のようなものだ。狭いドアを開けると玄関には、横に鏡がある。それを見て―オレは驚いた。
「やっぱり……私……」
 ピンとたった綺麗な獣耳、ショートカットの金髪、くっきりとした大きな瞳を際立たせる二重、小動物を思わせる鼻、困り顔でまた頬は柔らかく丸みを帯びていて、おっとりとした雰囲気があった。

 見るからに美少女であるが、根暗な自分には、不釣り合いに思える。人前でふるまう時にはあまり問題にならないが……(演技力に自信がある)

 奥にすすみソファーに座る。頭上に証書を広げる。パッと明るくはにかんで見せる。
「ケローネ!!私、これで冒険者を諦められるわ!!この街で、静かに働いて暮らすの!!」
 ふと、脱力し肩を落とす。ケローネが帰ってきたときの予行演習だ。
(そんな風に、演技したくなかったなあ……)

 前世の記憶が強く思い出された今こそ、余計に現実が重くのしかかる。転生者というアドバンテージがありながら、最弱のスキルを手にするとは。
「しかし……蛇水術ってなんだ?蛇口?蛇と水……何か神話や言い伝えに関係するのだろうか?」
(そういえば、神官は、スキルが付与されてすぐは不安定な事があるので、無理にスキルを使おうとしないほうがいいといっていた……2,3日は使えないこともあると)

 頭をひねっていると、ふと、魔石リングが気になった。正式名称、フォームリング。キラキラと光る赤色の光で、古代の龍族の体内で生成される《レッドスケイル》を利用して作られている。


(綺麗……)
 まじまじと見ていると、その魔石の半透明な反射する表面に映る自分の表情がきになった。転生前とくらべ生き生きとし、らんらんと輝いた子供のような瞳。もしや、この世界では何か、幸福に生きたいという願望が叶うのでは?という期待の光がまだ消えていなかった。
 フォームリングに声をかける。
《スキル詳細をだしてくれ》
 リングは応えて、ステータス画面をホログラムで表示する。

【LV1】
【HP500】
【MP10】
【STR1】
【INT1】
【DEF1】
【RES1000】

「ハウワッ!!!」
 驚いてひっくり返った。頭を掻きまわし、表示を消してなかった事にした。初期ステータスにしてはあまりに低すぎる。しかしレジスト(魔法攻撃に対する抵抗力が異常に高い)

 
 《コトン……》
 テーブルにおいたコップに目をむける。この世界でのスキルとは、超能力のようなものだ、頭でイメージして、その精度を高めるらしい。まずは念じてみよう。動かしてみてどれほど動かし使えるか、話はそれからだ。
 
 両手でコップにふれず、囲うようにして力をこめる。
「……」
 何も起きない。
「ぬぬぬぬぬ…………」
 より力をこめる、目を閉じたりしてみる、だが、何も起きない。しかしなぜ“水”なのだろう。そう考えると、念じる気力が失せてしまった。
「この世界でも同じかあ……私は薄情で、何にも興味をもてないんだ」
 死んだ目をして、背もたれに持たれた。
「ふん!!」
 と突然起き上がり、もう一度力をこめて、水を凝視した。しかし、何もおきない。だがふと、背筋に何か魔力の流れのようなものを感じた気がした。だが、水はうごかない。(背後で水が宙にういていたが、この時のヘリオは気づかなかった)
「やっぱりだめかあ……」
 といつも感じたことのない頭痛が頭を駆け巡る。フラッシュバックのように、前世の記憶―炎上する家―の映像が浮かび上がってくる。
(無理に力を使おうとしたからか?)
 自分の力が圧倒的に及ばず、だが運命をたやすく捻じ曲げるような、赤い炎に対する恐れが生まれた。体がプルプルと震える。もしかしたら、トラウマが……自分のスキルの行使を邪魔しているのかも。

 あきらめてリングを見つめた。ふと、何か妙な違和感に気づく。そして、背後から妙な物音が聞こえる。
「わ、わ……」
 振り向いてキョロキョロするも何もいない。席を立ち探し回るも、何もなく、ソファーに座りなおし前を向き直る。

 その魔石に目を凝らす、獣人の血があるせいか、自分の視力がとてつもなく高い事に気が付いた。それはまるで、ビデオカメラの小さなレンズで映像を移し、大きな画面に拡大して映したような……。と同時に、耳元で声が響いた。
「私、私よ、気づいてるの?ったく!!」
 ふと目の前に小さなものが浮かび上がった。……手のひら大の小さな肢体。昆虫のような羽。間違いない、寓話で語られるような、妖精がそこにいた。自分の肩をブンブンとうるさくとんでいる。
「ようやっと“気配”がしてめざめたら、イケメンでもないし、女だし、なんなの……ったく、この“エィミア”様がお目覚めになったというのに、ふん、気品だって感じないわね、ったく……いいこと?ヘリオ?っていったかしら、あんた“女神様”に気に入られて“試練”を受けることになったのよ!!本当ならあんたは、“転生のチャンス”なんてなかったんだから!それにねえ、今は覚えてないけれど、あんたのスキルはあんたが思っているより……」
「よ、妖精だ……!!」
 興奮して、その妖精に両手を近づけ、遠慮なくつかんだ。
「わっ……!!」
 そのあまりの柔らかさ、想像の数十倍のやわらかさと思わぬ質感に、オレは驚嘆した。
《ベチャッ…………》
 その瞬間、後悔とともに懺悔の気持ちがわいてきた。手を見ると、妖精はただの水になっていた。たしかに彼女は、全体が水色で、半透明の姿をしていたが。本当に水でできていたなんて。

 だが、殺ってしまったのなら、仕方がないのだ。開き直っていると同時に玄関の扉が開いた。
「ただいまーーーー!!!」
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