SF短編集

ショー・ケン

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シンギュラリティ

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「やったぞ!!勝ち取ったぞ!!労働者の権利だ!!」
「AIの芸術分野への浸食は、これで収まった!!」
 テレビ、ネットで華やかな式典の様子が流れる。脚本家、作家の大規模なストライキは、これにて終焉。映画界、出版社は、一定のルールを設けて、AIによって彼らの仕事が奪われない事を確約した。

が、その半年後、その約束の範囲内で、様々な小説、映画が大量につくられた。それが悉くヒットした。だが"プロ"はモノを言えなかった。なぜなら、生成AIに"見本"として取り込まれたデータは、すべて素人のものだったから。

そう、半年前まで素人同然だったアマチュア作家の、金にもならなかった作品軍だ。
彼らをAIを使う企業が雇い入れ"彼らの創作物"としてAIを使い世に発表した。

彼らは喜んだし、プロは誰も文句をいえなかった。成果がすべての世界だ。それもそうだろう。

だが喜んだのは社長だった。そして秘書が、社長室でコーヒーを組み終えると社長に尋ねた。
「こうなるとわかって確約を?」
「ええ、そうですねえ」
「いずれ“すべては明らかになるのでは?”」
「自分が夢を見たい人の方が多いのですよ、人に夢を見せているという夢を、私は拮抗した状況の中で社運をかけ、あのストライキを終わらせた、そして、それを条件にあらゆる企業から、投資やワイロをうけとった」
「あなたの名前は、知れ渡りました、もともとAI分野では天才といわれていましたが」
「私にはひとつも成果がありませんでした、私と同じような立場にいる人間をすくっただけですよ、たとえそれが夢だとしても」
 社長は、コーヒーをすする。

 きっと数十年先だろうと思えた。生成AIの深部には、ばれないようにありとあらゆるプロ作家の学習データがある。だがそれが一切表面上にはでないように、表面上の言語や表現は、アマチュア作家だった雇用者の物を利用している。つまり、要するに“タッチ”だけを利用しているのだ。
「私は彼らに夢を与えた、その夢は中身を伴わないものだ、けれど、名声は手にする事ができる、私と逆だ、これほどフェアな事があるでしょうか」

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