SF短編集

ショー・ケン

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大事な窓際族

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「ったく、なんて余計な事をしてくれたんだあいつ」
「あいつのせいで大変なことに」
「ん?」
 Aさんがふりむくと、驚いた様に愚痴を言っていた二人がちかづいてくる。洗面所で手を洗うと、出たところでその二人とあった。
「A、お前、Bさんのこと“社長”にちくったろ」
「ああ、あいつかあ、全然しごとしねえっていったくらいだ、なんだ?俺の愚痴をいってtなおか?」
「ああ、そのせいでBさん配置転換だよ、彼は有能じゃいけないんだよ、十分仕事をしてたし」
「そんなわけあるかよ!!」
 Aさんは声を荒立てた。
「統計的には、さぼる人間がでるのは仕方がない、だが社会が許すか!?この少子化だ、この人手不足ってときに、人間は24時間働かなきゃならない、社会が回らないだろ社会が!!」
 といつめてきた社員と愚痴を言っていた社員は、ため息をついた。
「お前、彼は仕事をしていたさ、俺たちが休憩をする、さぼる時間をつくってくれていたんだ、“さぼらせ係”さ、優秀なハッキングによってな、優秀なプログラマでもある……だが、少しさぼる癖があるくらいだ、なあ、それくらい多めにみてやれよ」
 Aさんの肩をなでて、やさしくその社員はつげた。
「お前も“社長AI”の会社に勤めるのは初めてだろ?最近社長だけAIに業務を任せるのが流行ってるが、実際務めたものは少ない、悪い事はいわねえ、いいなりになるな、この社会はどうにもならない、雇用主側が自分勝手で自尊心が高いんだ、責任感もない、だが俺たちにはそれを要求する……“社長AI”は、プログラムがむちゃくちゃで、労基なんてくそくらえってくらいだ、だがあのAIは、まともさ、まともすぎるほどに、お前も今にわかる」
(労基に隠れて悪さしたり、法律をグレーゾーンでやぶるのは、当然行われてきたことじゃないか)
 嫌な顔をしながら、彼は彼らと分かれた。

 なぜか怒られたことに気分を悪くしたAさんだったが、自分のデスクに戻り仕事を続ける。ふと、眠りそうになったときに、上から風ふいてきた。とても匂いのキツイ辛い食べ物の香りがついている。
 目を覚ますと、仕事に集中し初める。次に食事だ。あまりに休みなく働いて一息つこうとたべていると、上空からアームが伸びてくる。見ると、ドローンが浮いている。
「?」
《早く咀嚼してください、仕事を早く終えるために、あと30パーセント強い力で噛んでください》
 指令だけではなく、アームで顎を抑えられて、力を加えられる。たまったものじゃない。電話対応にも、ガミガミとクローンが注意点をのべたり、伸びをすることすら禁止されたりもした。

 退勤時に一人ぐちる。
「どうなってんだ、この会社は」
《社長AIは正しく機能しています、従業員の無駄と暇を最小限に抑えています》
「ゲッ」
 そうか、さっきの社員たちがいっていたのはこういう事だったのか、すぐさま、ドローンや、このシステムの管理者をたどった。すると、ある個室で、そこではBさんがぐうすかと寝息をたてていた。物音に目を覚まして振り返る。
「ん?どうした?」
 浮遊するドローン、彼のドローンは、一切彼の問題を指摘しなかった。
「どうして、そいつは働かせないんだ!!」
 Aさんがいうと、ドローンは答えた。
《この会社は優秀な社員をいかに効率よく使い、優秀なアイデアをだし、企業に提供するか、そうした業務を担っています、彼は優秀ですが、あまりに怠慢で怠惰な点は問題です、しかしながら、成果主義的にいえば、彼は十分な仕事をしています、我々はもっとも効率的な彼の労働方法を考え、彼の“怠慢さ”を分析することにしました、彼は、一般的な人々の“いかに楽をするか”というデータを提供してくれます、それは恐ろしく平均的なデータでした、我々は新しい仕事を与えました、彼が怠惰を行ったとき、彼の脳内信号を分析すると、必ず社内の部員が怠惰にひたります、それは彼の信号傾向と紐づいています、そこで私は彼を監視し、同じく怠惰に浸っている人間を割り出し、仕事をさせ続けることで業務効率を改善しています》

 Aさんは呆れたし、社内で浮くようになっていった。それだけなら不服ではあるものの、まだ耐えられた。問題は、次々に人が辞めて行ったり姿をくらませたことだ、やがて、この会社は倒産した。
「仕事がばりばりできるってのも、考え物だな」
 Aさんは呟いた。この会社を作ったのはAさんの祖父で、祖父はスーパーマンのように働いていたが、Aさんは、人間そんな優秀で疲れを知らない人間ばかりではできていないことを初めてしったのだった。
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