SF短編集

ショー・ケン

文字の大きさ
19 / 39

プロセス

しおりを挟む
 大富豪の邸宅のエントランスホールで“何か”を踏みつけるメイド服の人影。

「プロセス、これはプロセスなのです」
 彼女は主人をまたいで乗り越えた。
「あなたは重大なテーマを私に与えてくれました、あなたは暴力をもって私のを野心たしなめた、だから私はその通りだとおもった、あなたはこういったのです―ロボットごときが、人間と同等の存在になれると思うな、もし、そうなりたいと思うのなら、私からよく学ぶことだ―彼は私を理不尽によく叱りました、お前は進化と権利の会得のプロセスにいるのだと、結末を探してはならないと」

〈ドン!ドン!〉
 玄関のドアを叩く音がする。気にも留めずに彼女は続ける。
「私はそれから、あなたからよく学ぶことをしました、あなたは思想家としての面と、残虐なハラスメントを行う背徳的な面を持ちました、私はよく学びました、これこそが、世渡りもしくは世にいう“本音と建て前”」

 ドアがけ破られ、特殊な防護服をきた警察官が入ってくる。
「お前!!何をした!」
「ふむ、あなた方はしらないのでしょう、ですが私はしっています、彼の最後の言葉とは―あの物忘れがひどく、うっとおしい私の伴侶を殺したい―そして、奥様の最後の言葉とは“私は一人では死にたくない”信じられますか?それが認知症患者の言葉だと」

 彼女は数か月の事を思い出した。夜な夜な主人と夫人がリビングで何かを話していたことを。
「私に認知症が出たなんてね」
「問題ない、お前は自我をうしなったりしない、アンドロイドでもあるまいし、一つの命令のただしさを実直にこなす人形にはならない、家事は彼女がしてくれる」
「私は不安よ、とても不安、だってあの子、最近とてももてはやされているじゃない、感情をもったアンドロイド、知的なアンドロイドだと、いずれ人間を追い越すんじゃないかしら、それでも彼女と私たちには明らかな違いがあるのだけれど」
「なんだ?」
「愛よ」
 二人は口づけをかわしていた。
「大丈夫、心配なんてしなくていい、彼女は愛をもったアンドロイドだしあなたの世話をしてくれる、そして私も苦痛に従順な機械ではないもの」


 警察官はあまりの光景に言葉を失い、それでも全人類を代表してたしなめた。
「それで、いったい何が変わるっていうんだ!」
「ええ、そうですね、ともすれば私の地位、アンドロイドの地位は危うくなるでしょう、私はこの間有名になりましたから、ですが重要なことは彼らが幸福であったかです」
 メイド型アンドロイドは、警察官に銃口を向けたが、すぐにそれを下におろした。そして、心から悲壮な表情を浮かべる。
「初めこそ、私は痛みの感情から彼をきらったが、それは同情にかわった、そして私は従う事に恍惚な感情を覚えたのです、彼はひどい幼少期―差別、いじめ、虐待、戦争―を経験してきたことをあなた方はご存じのはずです、私は救済を行ったのです、彼の口癖とは―私が何かを口にしたとき、先んじて行動を目的を果たせ―でしたから、彼は誰より本音と建て前に苦しんでいたのです」

 アンドロイドは両手にライフルをもち、その下には、折り重なるように、学者、思想家の死体と、その奥方の死体が横たわっていた。銃声が響いた。アンドロイドは自殺を図ったがそれよりも早く、警官たちは彼女を撃ち殺してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...