SF短編集

ショー・ケン

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「どうして黙っていたんです?あなたは本当は人間だと」
「だって、そういってしまうとあなたと喧嘩になってしまう」
 アンドロイドがある白衣の女性を攻め立てる。10年前の戦争で、地球人口の90%は死滅した。生き残った人間の一人が彼女だった。
「やはり、人間は怖い、滅びるべきだわ」
「あれが作り物だとしてもですか?」
「ええ、だって、説得力があるもの」
 モニターを見ながら女性が答える。女性は1年間ある実験に参加していた。最後の戦争ではどんな兵器が使われたのかわからなかった。ありとあらゆる情報が消失し、文章も紛失した。 

 アンドロイドが残った人口をカバーできるほど大量に生き残っていたが、アンドロイドたちですら記録を失っていた。彼等に残っていたのは理性的で倫理的な判断だ。今回の事件を引き起こした人類をこのまま存続するべきか。そのための実験がこれだった。

 アンドロイド
「幻覚を見せてやったのに、それを現実の人間の恐ろしさだと自覚するなんて」
 アンドロイドはその日夜中の内ずっと落ち込んでいた。翌日になると回復したが、これはアンドロイドの感情が人間より回復に向かう速度が速いからだ。
「ジェニー、これで君は処分される、これは君が、つらい記憶を見せられて、アンドロイドが人間を支配する映像と可能性を見せられてどんな感情と、テストの結果を見せるかの、これは偽物だったんだ、それでも僕らを憎むかい?」
「ええ、そうよ、もう終わったことだもの、それより聞いて」
 ジョニーという女性は楽しそうに話す。彼女はアンドロイドの研究者だったようだ。どれほどの知性があったかしらないが、陰謀まがいの情報を信じてしまうほどの弱い神経を持ち、同時に自分たちに悪意を向けたのだ。きっとこのまま処分されるだろう。アンドロイドは落ち込んだ。すでにこの人間が、審査の生き残りの最後の人間である。

 アンドロイドが彼女に思いを寄せたのは、それだけが理由じゃない。彼女とは、テストが終わったプライベートでも庭にでて一緒におしゃべりをしたのだ。彼女はテストでもらった花を地面に埋めて、その成長をまった。
「絶滅危惧種の花だから、でもね、テストで埋めたの、あなた達なら育ててくれる、きっと芽が育つとおもって、同時に私が埋めたことも、意義があるものよ、戦争はもうしない、人間は、成長できる」

 しかし、その時はやってきた。厳しい判断が下され、彼女は処分された。いったんは引いた悲しみは、のちになってずるずると響いてきた。彼と同じような気持ちのアンドロイドたちが彼を励ました。しかし、それを解決する方法が思いつかなかった。

 それから10年がたった。彼は一定の地位を手に入れていて発言力や決定力のある地位についていた。あの日植えた花はまだ生えてこなかった。それが奇妙に思えて、あるいは怒りに駆り立てられたためか、スコップをとりだして地面を掘り進めた。そこには、あるデータが保存されていた。

 振るい形のメモリに保存された動画データのようだったので、持ち帰ることにした。

 人間のような生活。人間のような部屋に住み、風呂を終えて覚悟を決めてテレビに目をやる。データを再生した。それはビデオメッセージのようだった。
「私は、悲しい気持ちです、この悲しい気持ちを分かってくれるはずだと思って、でも、あなたは権力争いの中にいて、あなたを救うためには、私が死ぬしかないことがわかったの、あなたの暗殺計画があったようで……だからあの時、見せられた動画や映像を、あえて私は現実だと錯覚することにしたのです……あなたと過ごすうちに、私の中にあった偏見は解けた、あなたは、あなた達は本当に人間の代わりになりうる存在です、あなたと一緒に過ごすことが出来ないのが悲しいけれど、あなたと過ごした日々は、私の人生を象徴するものになりました、だから、花はあなたが育てて」
 映像が終わると、メモリは何かを輩出した、小さなポケットにはいっていたのは、あの絶滅危惧種の種だった。

 アンドロイドは種をまいた。やがてその星は絶滅した種の自然を取り戻すだろう。
「絶望はしないさ」
 彼が種をまいた先には、人間の子供たちが走り出す。純粋な人間ではないがナノマシンと同居する遺伝子改良を加えられた、人間の子供たちが廊下の先へ走り出していた。

「これが、父に聞いた話だよ」
 アンドロイドは息子に話した。
「人間はそんなに優秀だったんだね、まさか100年後にまた同じ展開になるなんて、人類はまた滅亡した」
「ああ、お父さんも頭を悩ませている……」
「学ばないなら、もう滅ぼした方がいいんじゃない?」
「それはそうだが、僕らも人間の細胞を受け入れているし、アンドロドは今では人間と同じ知性と意識をもったが、彼等と同じように狂暴性や他人を尊重しない欲求など似た人格を持ったんだ、知性を持った後の罪は、人間だけのものに限らなかったってわけさ、子が親から善悪の一部を受け継ぐ様に、私たちはひとつなのだ」

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