銀河(ユリース)最弱の賞金稼ぎと、朽ちゆく惑星(ほし)のハンドガン

ショー・ケン

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第一章

カルシュの戦い

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「ふう」

 とため息をもらし、頭のアンテナのようなアホ毛をゆらし、眉毛の天辺の傷跡をぴくりとゆらして、けだるげに頭をかくと、やがてカルシュは目的地である南へ歩きだした。スマートガジェッドをみながらコンパス機能を使う。しばらく歩いているとバイクと砂におおわれている建物の群れを見つけた。

「年代もの……なんで砂漠の真ん中に放置されているんだろう」

 その奥には、鉄骨でくまれたテント型の家屋とそれが密集した集落がありった。
「誰かー誰かいませんかー」
 砂は屋根ばかりではなく、屋内に浸食し、実に奇妙な光景だった。テントは60近くあり、そのすべてから生活臭がする。しかしその生活臭は、もはやずいぶん昔に時をとめたようだった。
「ううん、誰も住んでいないのか」
 彼はその中のもっとも大きなテントへ入る。ひときわ大きく責任ある立場の人のものだろう、入れかけのコーヒー、その上から砂が積もっている。ほかに書きかけの書類、開きかけの本。“何か”が起きる直前まできていたであろう服などがそのまま、2,3人分地べたに放りだされている。

「ご主人……でましょう」
 ロジーがカルシュを促す、そして続けた。

 バイクにまたがり、走り始めた。丁度南半球にはいってしばらくいったとき、バイクのエンジン音にまじって奇妙な音が聞こえた。
「て!!!……てー!!」
(何だ?声?)
「助けて!!!助けて!!!」
 間違いない、女性の声だった。

カルシュは、考えるより早く体が動くのを感じた。バイクから飛び降り、急いで声のする方へ走る。
「はあ、はあ!!どこだー!!」
「ここです、ここです!!」
 目の前に巨大な岩山があらわれ、そのふもと、横穴らしき場所から声がした。奥に人影がある少女のよう、彼女の声らしい。
《ズン……》
 その岩穴の手前に、大きな影をもつ、人型の巨大な人工物の影があった。まるで巨巨人。それは、カルシュが近づくと頭部をぎゅるりと回転させた。まるでフクロウのように180度以上回転させる。顔もまたフクロウのよう。手足には奇妙な針がはえており、その内側に小さな機械の棒状のアームがあった。肩の部分が膨れ上がっており、マフラーのようになっている。体は細身で、骨盤付近がまた膨れ上がっている形状。短い脚に、長い手。背中は恐竜のトゲのようなものが生えている。
「クルゥ、クルゥ、クゥルゥゥ」
 まるで西洋の甲冑のような、中央に斜めの線の入った目、口。カルシュはつぶやいた。
「旧式の星間防衛アーマー……」
 それは、かつて星間開発協力機構IDCA(※Interstellar Development Cooperation Agency)が開発し、回収しきれなかったかつての防衛機能の残骸。星間開拓の初期に法と秩序をまもった機械だ。だがそのほとんどは、違法改造され盗賊などに流用されている。

 カルシュは、少女が穴蔵の奥にひそみ、星間防衛アーマーの攻撃をぎりぎりその狭さと深さで耐えているのだとわかり、すぐさま、大声をあげた。
「おおい!!こっちだ!!」
「クルゥウ?」
 鈍い動きの星間アーマーは、肩部のライトを点滅させながら、ゆっくりとカルシュに近づいてくる。
 《ドス、ドス、ドス》
その鈍い動きで一歩ずつ歩く間に、カルシュは全速力でそれに向かった。
「ハアッハアッハアッ」
「クルゥ!!?」
 衝突するか!?と思われた瞬間にカルシュはフェイントで、その巨体の股下をくぐりぬけた。星間アーマーも驚いているようだった。その時やっと事態に気づいた星間アーマーが、腕を伸ばしカルシュを捕まえようとした。しかし、カルシュはするりとぬけ、やがて少女が隠れている横穴の中に入り込んだのだった。
「ご主人……!!どうするつもりですか」
 ロジーが咎める。カルシュは傍らの少女をみる。心配そうな顔でカルシュをみている。フードつきのマントをはおり、スカーフをまき、そして白い兎耳のカチューシャをつけている。ただの純朴なかわいらしい少女だ。
「わかっている、でも……」
「ほっとけなかった、ですよね?仕方がないです、きっとこの後のことも何も考えていないでしょう……先ほど件のバイクに遠隔操作機器を取り付けて起きました、私が合図をしたら、バイクを動かします、囮になってもらいましょう」
「その後は、どうする?」
「ご主人様が考えてください」
 その背後で、二人のやりとりをみていた少女。そのポケットからは、鉄製の棒状の何かがのぞいていた。少女が申し訳なさそうに声をあげる。
「あのー……武器なら、あります、拳銃が……」
 少女がホルスターから手のひらにそれをさしだすと、カルシュとロジーは顔を見合わせた。ロジーは一瞬少女をみて、そして苦い顔をした。
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