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第22話
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期末試験が終わって、夏休みに入った。
一学期最後のホームルームが終わって、皆が席を立ちぞろぞろと教室を出ていく。
美緒や聡介とも挨拶を交わして家路を歩く。
なんだか、呆気なかったな。
あの告白から数日、特に聡介の態度が変わることはなく、いつも通りだった。
今日だって、夏休みでしばらく会うことは無くなるのに、「じゃあ、またな」と軽い一言だけだった。
あまりにあっさりした挨拶に、少し不安になる程だ。
あの告白、無かったことになってないよな?
なんて、不穏なことを考えてしまう。
******
夏休みに入って、数日がたった。
スマホの通知音がなって確認すると、美緒からだった。
『明日聡介と勉強会するから柊くんも来るように!』
僕が行く事は確定らしい。
その後に位置情報が送られて、また一言メッセージが来る。
『聡介んち、集合ね』
いきなりそんな事を言われて焦る。
あのあと、聡介とは特にやり取りもなく、もうあの告白の事なんか忘れてるんじゃないかと思うくらいだった。
なんとなく、会うのが気まづい。
そんな気持ちとは裏腹に、聡介に会いたいと思う僕もいる。
そんな事をぐるぐると考えながら、眠りにつく。
すぐに朝がきて、勉強会当日になった。
朝の支度を済ませて、ぐるぐる考えながら位置情報通りに向かって歩く。
楠木、と書いてある家の前に立ってインターホンを睨むように凝視する。
押さないと、でも押したら聡介が出てきてしまう。
「柊くん!なにやってんの?」
「中井さん。おはよ」
「おはよ!はやく押しなよ」
「わ、わかった」
恐る恐るインターホンを押した。
そんな僕の様子に美緒は不思議そうに首を傾げる。
「ね、聡介になんか言われた?」
「えっ」
固まっていると、にや、と美緒が笑って「あいつ、やっと言ったか」と意味深な事を呟く。
「で、柊くんは?どうなの」
嬉々とした表情で迫り来る美緒にたじろいで後ずさりする僕。
美緒のやつ、何処まで知ってるんだ。
丁度いいタイミングでガチャ、と玄関が開いて聡介が出てくる。
「……おい、家の前で柊を虐めるな」
「はあ?虐めてないわ。じゃ、おじゃましまーす」
遠慮なく玄関に入っていく美緒に続いて、ぺこ、と頭を下げる。
「元気だったか?」
「う、うん」
こくり、と首を縦に振る。
ポンと頭に手を置かれて頭を軽く撫でられる。
大きな暖かい手にどきどきして聡介を見ると、ふ、といつもみたいに目を細めて笑う。
聡介のこの笑い方が好きだ。
「部屋、こっちな」
す、と手が離れていって名残惜しく思う。
聡介についていって言われるまま階段を上がっていった。
一学期最後のホームルームが終わって、皆が席を立ちぞろぞろと教室を出ていく。
美緒や聡介とも挨拶を交わして家路を歩く。
なんだか、呆気なかったな。
あの告白から数日、特に聡介の態度が変わることはなく、いつも通りだった。
今日だって、夏休みでしばらく会うことは無くなるのに、「じゃあ、またな」と軽い一言だけだった。
あまりにあっさりした挨拶に、少し不安になる程だ。
あの告白、無かったことになってないよな?
なんて、不穏なことを考えてしまう。
******
夏休みに入って、数日がたった。
スマホの通知音がなって確認すると、美緒からだった。
『明日聡介と勉強会するから柊くんも来るように!』
僕が行く事は確定らしい。
その後に位置情報が送られて、また一言メッセージが来る。
『聡介んち、集合ね』
いきなりそんな事を言われて焦る。
あのあと、聡介とは特にやり取りもなく、もうあの告白の事なんか忘れてるんじゃないかと思うくらいだった。
なんとなく、会うのが気まづい。
そんな気持ちとは裏腹に、聡介に会いたいと思う僕もいる。
そんな事をぐるぐると考えながら、眠りにつく。
すぐに朝がきて、勉強会当日になった。
朝の支度を済ませて、ぐるぐる考えながら位置情報通りに向かって歩く。
楠木、と書いてある家の前に立ってインターホンを睨むように凝視する。
押さないと、でも押したら聡介が出てきてしまう。
「柊くん!なにやってんの?」
「中井さん。おはよ」
「おはよ!はやく押しなよ」
「わ、わかった」
恐る恐るインターホンを押した。
そんな僕の様子に美緒は不思議そうに首を傾げる。
「ね、聡介になんか言われた?」
「えっ」
固まっていると、にや、と美緒が笑って「あいつ、やっと言ったか」と意味深な事を呟く。
「で、柊くんは?どうなの」
嬉々とした表情で迫り来る美緒にたじろいで後ずさりする僕。
美緒のやつ、何処まで知ってるんだ。
丁度いいタイミングでガチャ、と玄関が開いて聡介が出てくる。
「……おい、家の前で柊を虐めるな」
「はあ?虐めてないわ。じゃ、おじゃましまーす」
遠慮なく玄関に入っていく美緒に続いて、ぺこ、と頭を下げる。
「元気だったか?」
「う、うん」
こくり、と首を縦に振る。
ポンと頭に手を置かれて頭を軽く撫でられる。
大きな暖かい手にどきどきして聡介を見ると、ふ、といつもみたいに目を細めて笑う。
聡介のこの笑い方が好きだ。
「部屋、こっちな」
す、と手が離れていって名残惜しく思う。
聡介についていって言われるまま階段を上がっていった。
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