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第33話
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体育祭当日。
皆張り切っていて、各場所から声援が飛んでいる。
美緒が出る二人三脚の種目の番になって、パン、と開始の合図がなる。
放課後よく練習しているのを見かけたから、かなり早い。1番でゴールして、両手を上げてはしゃぐ美緒。みんなの声援を受けて、手を挙げて笑った。
聡介はこの体育祭のメイン競技、リレーのアンカーだ。
「リレーに出る生徒は入口に並べー!」
先生が集合をかけて、聡介が行ってくる、と席を立った。同じクラスの生徒たちが聡介を激励する。
アンカーは1番大事なポジションだ。みんなの期待を一身に背負っているといっても過言じゃない。
他クラスのアンカーをみると、圭太がいた。
目が合って、控えめに手を振られる。
笑って手を振り返すと、圭太も笑った。
「浮気か?」
後ろから声をかけられて、びく、と体が跳ねる。
「楠木くん、行ったんじゃなかったの」
「柊が他の男に手を振ってたら気になるだろ」
「案外嫉妬深いよね……」
「最初にそう言ったと思うけど?」
そういえば、そんな事を言ってたっけ。
あの雨の日の出来事が遠い昔のようで懐かしい。
「アンカー、頑張ってね」
「絶対1位取る」
じっと圭太のほうをみて真剣な顔で宣言する聡介。対抗心むき出しで、なんだか少し可愛くも思える。
また先生に呼ばれて、じゃ、と集合場所に走っていった。
種目のリレーが始まって、皆がわっと盛り上がる。
1年のクラス対抗がおわって、2年の番になる。
ほかのクラスの子が全体的に早くて、うちのクラスが最下位を走っていて絶望的だった。圭太のクラスが先頭を走っていて、いよいよアンカー対決になる。圭太の番が回ってきて、圭太が走る。
その後ろから続いて、アンカーたちが続々と走る。やっとうちのクラスのアンカー、聡介にバトンが渡される。
そこからの快進撃は凄かった。聡介がごぼう抜きで一気に圭太に距離を詰める。
「きゃー!聡介くん超かっこいいー!」
「いけー!楠木ー!」
「やったれ聡介!あんたなら出来る!」
最後の激励は美緒だ。みんな熱くなって叫ぶように声を上げる。
「がんばれ!楠木くん!」
僕が叫ぶと、一瞬聡介と目が合ったような気がした。
そして、ついに圭太をギリギリで抜いてゴールする。僕たちのクラスが1位だ。
わっとクラスの皆が立って歓声を上げる。ハイタッチしたり、ハグし合う生徒もいた。
競技が終わって聡介たちリレーチームが帰ってくる。
「お疲れ様、楠木くんすごくカッコよかったよ」
「柊の声、聞こえたから。負けられないなって思って最後頑張ったんだ」
くしゃり、と頭を撫でられて嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなる。
「楠木くん早すぎ!注目掻っ攫われて超気分悪い」
横から圭太がきて、聡介の肩に肘をつつく。
「なんだ、またお前か。柊は俺を応援してくれてたぞ」
「そりゃ同じクラスなんだから応援するでしょ。走る前に手振ってくれたもん、ね?」
「え、いや、それは」
あたふたと困っていると、ぷ、と圭太が吹き出して笑う。
「焦りすぎだから。ごめんねからかって。あーあ、俺が入る余地ミリもないなあー」
「当たり前だろ」
はいはい、と圭太が聡介を一瞥してため息を盛大に吐いた。
皆張り切っていて、各場所から声援が飛んでいる。
美緒が出る二人三脚の種目の番になって、パン、と開始の合図がなる。
放課後よく練習しているのを見かけたから、かなり早い。1番でゴールして、両手を上げてはしゃぐ美緒。みんなの声援を受けて、手を挙げて笑った。
聡介はこの体育祭のメイン競技、リレーのアンカーだ。
「リレーに出る生徒は入口に並べー!」
先生が集合をかけて、聡介が行ってくる、と席を立った。同じクラスの生徒たちが聡介を激励する。
アンカーは1番大事なポジションだ。みんなの期待を一身に背負っているといっても過言じゃない。
他クラスのアンカーをみると、圭太がいた。
目が合って、控えめに手を振られる。
笑って手を振り返すと、圭太も笑った。
「浮気か?」
後ろから声をかけられて、びく、と体が跳ねる。
「楠木くん、行ったんじゃなかったの」
「柊が他の男に手を振ってたら気になるだろ」
「案外嫉妬深いよね……」
「最初にそう言ったと思うけど?」
そういえば、そんな事を言ってたっけ。
あの雨の日の出来事が遠い昔のようで懐かしい。
「アンカー、頑張ってね」
「絶対1位取る」
じっと圭太のほうをみて真剣な顔で宣言する聡介。対抗心むき出しで、なんだか少し可愛くも思える。
また先生に呼ばれて、じゃ、と集合場所に走っていった。
種目のリレーが始まって、皆がわっと盛り上がる。
1年のクラス対抗がおわって、2年の番になる。
ほかのクラスの子が全体的に早くて、うちのクラスが最下位を走っていて絶望的だった。圭太のクラスが先頭を走っていて、いよいよアンカー対決になる。圭太の番が回ってきて、圭太が走る。
その後ろから続いて、アンカーたちが続々と走る。やっとうちのクラスのアンカー、聡介にバトンが渡される。
そこからの快進撃は凄かった。聡介がごぼう抜きで一気に圭太に距離を詰める。
「きゃー!聡介くん超かっこいいー!」
「いけー!楠木ー!」
「やったれ聡介!あんたなら出来る!」
最後の激励は美緒だ。みんな熱くなって叫ぶように声を上げる。
「がんばれ!楠木くん!」
僕が叫ぶと、一瞬聡介と目が合ったような気がした。
そして、ついに圭太をギリギリで抜いてゴールする。僕たちのクラスが1位だ。
わっとクラスの皆が立って歓声を上げる。ハイタッチしたり、ハグし合う生徒もいた。
競技が終わって聡介たちリレーチームが帰ってくる。
「お疲れ様、楠木くんすごくカッコよかったよ」
「柊の声、聞こえたから。負けられないなって思って最後頑張ったんだ」
くしゃり、と頭を撫でられて嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなる。
「楠木くん早すぎ!注目掻っ攫われて超気分悪い」
横から圭太がきて、聡介の肩に肘をつつく。
「なんだ、またお前か。柊は俺を応援してくれてたぞ」
「そりゃ同じクラスなんだから応援するでしょ。走る前に手振ってくれたもん、ね?」
「え、いや、それは」
あたふたと困っていると、ぷ、と圭太が吹き出して笑う。
「焦りすぎだから。ごめんねからかって。あーあ、俺が入る余地ミリもないなあー」
「当たり前だろ」
はいはい、と圭太が聡介を一瞥してため息を盛大に吐いた。
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