ようこそ幼い嫁候補たち ③

龍之介21時

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憎奪戦争編

奥の手

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【西の古代遺跡地下1F】
成長期のカルーアと、魔王の遺伝子を解放しているヨシュアの2人は黒龍(ブラックドラゴン)に対し、やや優勢に戦っている

聖騎士勇者隊はメリーズの氷系魔法を中心にした戦闘の布陣が上手くハマり、古代兵器と戦っているコチラも優勢だ

1番戦力を集中させた対シータイガーは、敵の数が増員されている上にBOSS級まで現れていて、予想外に互角の戦いになっている
が、予想外に苦戦させられているのは双頭龍(ヒュドラ)と戦うアリスとエリエスだ。前回も大したダメージを与えられなかった相手だが…
皮膚の異常な硬さと凄まじい体力、何よりも本気を出した双頭龍(ヒュドラ)の口からの火球の連射が、予想以上に早かった

「このお!…このおぉ!」

「アリスお姉様、近付き過ぎないように注意してください!ヤツの一撃は危険で…えっ!?」

回避重視のアリスが双頭龍(ヒュドラ)に何度か切り付ける。が、ヤツは突然2頭ともエリエスの方を向いた

「グアァッ!!」

突然の咆哮の後、双頭龍(ヒュドラ)はエリエスに近寄り思い切り脚を地面に叩き付けた!!

「ゴワッン!」
地震波(アースクェイク)が発動し、双頭龍(ヒュドラ)を中心に大きく地面が揺れた

「うあっ!コレは!?」
「エリエスちゃん!」

双頭龍(ヒュドラ)に接近していたエリエスが、波打つ地面の揺れに足を取られ一瞬だが、動きを止められてしまう

「ギュオアァ!」
「グボオォッ!」

イキナリ双頭龍(ヒュドラ)の両方の口がエリエス目掛けて連続で火球を吐き出した!地震波(アースクェイク)で動きを止められたエリエスは、直撃こそは喰らわなかったものの…四方で炸裂した火球の熱波に飲み込まれてしまった!

「うあああぁぁっ!?」
「避けてぇっ!!」

強過ぎる風圧に吹き飛ばされるエリエス。威力の凄まじさからエクスカリバーが、手からこぼれ落ちてしまう

「うっ!いたっ…エクスカリバーは!?…あ!」
「エリエス、私はここです!」
 

エクスカリバー(ロマーニャ)の声を聞き、数メートル先に落ちたエクスカリバーを見付けたエリエスだが…

「ゴアァッ!」
「ギュボォッ!」

エリエスの動きを完全に止めた双頭龍(ヒュドラ)が、武器を手放してしまったエリエスにトドメを刺そうと2頭とも息を吸い火球を生成し始めた。前回は使わなかった奥の手【地震波(アースクェイク)】により、絶体絶命の危機(ピンチ)を迎えるエリエス

「駄目えぇぇ!!」

予想外のエリエスの大ピンチに、何があってもHIT&AWAYを徹底していたアリスが、遂に双頭龍(ヒュドラ)の懐(ふところ)に大きく踏み込んでジャンプし、片方の頭部を強く叩き火球の発射を阻止した

「グボオォッ!!」

「アリスお姉様、逃げてぇっ!!!」

しかし、その攻撃が双頭龍(ヒュドラ)の逆鱗に触れた!強い1撃を与えられる距離まで詰めた事が、アリスにも双頭龍(ヒュドラ)の攻撃を回避出来ない位置に立たせていた

「バキイィィィっ!!!」
「あぎゃっ!?」

双頭龍(ヒュドラ)の長い尻尾が遂にアリスを捉えた!咄嗟に2本のミスリルソードでガードはしたものの、巨体を誇る双頭龍(ヒュドラ)の尻尾の渾身の一撃は、軽いアリスを吹き飛ばし岩壁に細い彼女の身体を叩き付けた

「あっ…あっ…あぎゅぅぅ…」
 

小柄ながらもタフさを誇る獣人族のアリスが、たった一撃で大ダメージを受けていた。ビリビリに破かれた衣服、全身の傷と吹き出る汗からもソレは容易に想像できる

「アリスお姉様っ!!」
「あっ…あぁ……」

エリエスが大声で呼ぶが、受けたダメージがデカ過ぎて起き上がれないアリス
今、追撃を受ければアリスは回避も出来ず、直撃をもらい木っ端微塵に殺されてもおかしくはない…エリエスは覚悟を決めた!

「基本(ベース)型超人類エリエス。【安全装置解除(システムバースト)】!!」

エリエスは1度使うと、1時間は回復に集中せざるを得ない奥の手を発動した

「ギュオオオッ!」
「ギャヒィィッ!」

素早くエクスカリバー(ロマーニャ)を拾い上げたエリエスは、超高速で移動を始めロマーニャの魔力をエクスカリバーに付与し、双頭龍(ヒュドラ)の全身に高速で切り傷を与え始めた

「くっ!早く致命の一撃を与えないと、私もアリスお姉様も負けてしまう…」

硬さとパワーが桁違いの双頭龍(ヒュドラ)だが、ステイタスをマックスまで振り切っているエリエスの動きなど、捉えられるハズもなく…全身に切り傷がどんどん増えていった


「ふぎゅうぅぅ…お、起きなきゃ…エリエスちゃんと打ち合わせした…絶好のタイミングを逃しちゃうぅ…あっ!?」

片膝を立てチカラを振り絞り起き上がろうとするアリスだが、先程の尻尾の直撃で脳を激しく打ち付けられていたので、頭がクラクラと揺れ上手く起き上がれない


【沖田家】
「アリスちゃん。全力を使い果たし起き上がるのも困難な時に、どうしても立ち上がらねばならない状況になったら…どうすれば良いと思うかな?」

ボンヤリしているアリスは、地球の沖田家で師範代から教えを受けている時の事を思い出していた

「普通に起き上がれないんだよねぇ……メッチャ、チカラを振り絞って何とか起き上がるぅ!」

「ふはは(笑)」

純粋無垢なアリスらしい、何とも真っ直ぐな回答だった。ソレを聞いた師範代は、この問答でも何も捻りも入れないアリスの純粋さに、自然と笑いが込み上げていた

「いやいや、笑ってしまいすまないね。正解は……毎朝起きる時の感じで、変に力まずに最低限必要なチカラだけで自然に起き上がるんだよ。極限状態ほど、人は力(りき)み過ぎてチカラを出せない。ならば逆に最低限のチカラだけで…」


【対双頭龍(ヒュドラ)戦の途中】
「そうだったぁ…極限状態の時ほどぉ…最低限のチカラでぇ…ゆっくり起き上がるぅ…うぅ!」

アリスは師範代の言葉を思い出し、慌てることなく力むこと無く、毎朝起きる様に自然なチカラでその身体を立ち上がらせた

「うあああぁぁっ!!!」

起き上がったアリスは大きな声で咆哮した!

「!?…アリスお姉様…」

その声でアリスが起き上がった事に気が付いたエリエス。ステイタスマックス状態は長くは続かない!起き上がったアリスも、どれだけ動けるか分からない!
その状況で、エリエスはアリスと打ち合わせていた双頭龍(ヒュドラ)を討伐する為の絶好の機会を狙う

「私のこの状態も、あまり長くは持ちません。早く致命の一撃を与えなければ…私もお姉様も…はぁはぁ…」

エリエスは追い詰められたこの状況で絶対に外せない好機を逃がすまいと、必勝の機会を伺っていた



続く
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