引き籠もりVTuber 配信者編

龍之介21時

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食べられる女

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【都内某所マンション】
亜沙美とすもらはカウントダウンライブを行った会場からタクシーに乗り、数km離れたメルルのマンションへ向かった

「お邪魔しま~す」
「お邪魔しますぅ」
「どうぞ。遠慮なく寛(くつろ)いでね♪」

「なんと言うか…質素な部屋ですね」
「でも綺麗ですよぉ」

「ぬいぐるみとかアクセサリーを置き過ぎて部屋がぐちゃぐちゃするのは、あんまり好きじゃないのよ」

亜沙美からするとメルルは女っ気が強い方だと思っていたので、飾りが少なくシンプルで整理整頓されている部屋に意外さを感じていた

「2人とも初めての箱コラボお疲れ様。流石に疲れたし、お腹も空いているでしょ?」

「そうですね。全力をぶつけましたから、かなり空腹ですね…」

「言われてみれば…今から何処かに食べに行くんですかぁ?」

カウントダウンライブでかなり疲労した亜沙美は、今から料理するという発想など頭に無かったのでそう答えたのだが…

「食べには行かないわよ。こんな時間に開いてるお店なんか限られてるし、今から出掛けるのは危ないわよ?」

「えっ?そうなんですかぁ…」

「アミ先輩って、本当に警戒心低いですよね。都内で借りられるライブ会場なんて限られてるし、大きな配信終了後スグに迂闊に女だけで食事に出掛けたら、ファンの人達に見つかってしまうよ?」

「ひえぇ。ファンの人達ってソコまでするもんなんですねぇ…気を付けますぅ…」

時間は早朝の2時頃だ。開いてる飲食店は少ない。ソコへ女だけで出掛けようものなら、配信終了後のライバーかも知れないと勘ぐられ聞き耳を立てられて、彼女らの声から身バレしてしまう可能性は高いと言えよう

「2人を泊めるのは前もって分かってたから、焼き肉の用意をしておいたけど食べられる?」

「焼き肉ですか?有難うございます!」
「はい。嬉しいです。食べりゅ~♪」

こんな時間から先輩の家で焼き肉をご馳走してもらえるなんて完全に想定外だった2人は、強い空腹感と疲れから「焼き肉」という言葉にものすごく喜んだ



【夜食タイム】
キッチンに行ったメルルは、冷凍庫の中から数種類の肉を出してレンジで解凍しがてら、何種類かの野菜を切ってくれた

……………………………………………

「どう、2人とも食べてる?」

「はい、頂いてます。肉もビールも美味しいでっす♪」

「良いなぁ。すもらちゃんはお酒が飲めて…」

火影すもらは、配信者としては亜沙美より1ヶ月後輩ではあるが、去年20歳を迎えているのでビールを飲んでいる

「アルコールは飲みますけど煙草は吸いませんよアミ先輩。煙草は喉を痛めてしまいますからね」

「…ねぇ、すもらちゃん。私は先輩と言ってもたった1ヶ月だしぃ、年はすもらちゃんの方が4つも上なんだから…私に敬語は使わなくて良いんだよォ?」

「そうですか?…そうですね。でしたら、アミちゃんと呼ばさせてもらいます」

「うん。そうしてね、すもらちゃん♪」

亜沙美は同期と言える火影と仲良くなりたいので、敢えて火影を「ちゃん」呼びしていた。しかし、その相手から敬語を使われて話されている事に、抵抗感があったようだ


「(*>∀<)oぷはぁ!コレは恵比寿ですか?肉もビールも、良い物を用意してもらって有難うございます。メルル先輩♪」

「まーね。可愛い後輩2人をもてなすんだから、先輩としてソレくらいはね♪」

メルルは、某人気ライバーがある酒造とコラボして販売している日本酒を、チビチビと静かに飲んでいるが…すもらは焼き肉を流し込むようにビールを飲んでいる

「2人とも美味しそうに飲んでますねぇ…私にも少し飲ませてもらっても良いですかねぇ?」

「アミちゃんには、まだ早いわよ」

「そうですよ。それに未成年の内からアルコールなんか飲んだら、身体の成長に良くないんですからね!それに【現役女子高生】を売りにしてる先輩が万が一、酒や煙草を嗜んでいる。なんて話題になったら、配信者として終わってしまいますよ!」

「わ、分かってるよぉ…2人があんまり美味しそうに飲んでるからァ、ちょっと飲んでみたいなぁって思っただけだもん…」

「だもんって…アミちゃんは子供ですか?(笑)」

既に1リットル以上のビールを飲んだ火影は、アルコールが回って来ていて上機嫌のようだ

「子供じゃないもん…ふぅ、お腹いっぱいです。ご馳走様でしたメルル先輩♪」

「お粗末さまでした。喜んでもらえて良かったわ。さて、片付けしちゃいましょうね」

「あ、お手伝いします」

「わ、私も手伝いをぉぉ…あ、痛っ!?」

すっかり酔っ払った火影は立ち上がろうとした時に、テーブルの角に膝をぶつけて痛がっている。オマケに足取りもフラフラだった

「大丈夫ぅ、すもらちゃん?」

「えぇ、でも…ちょっと飲み過ぎたみたい…少し、クラクラするわ…」

「仕方ないわ。部屋に運んでげましょうね。アミちゃんも手伝ってくれる?」

「あ、はい」

酔っ払った火影を背中に担いだメルル。寝室の扉を開けて、キッチンに水を取りに行った亜沙美

……………………………………………

「水を持ってきましたぁ」

「ありがとう。でも彼女、寝ちゃったわ」

水を持ってきた亜沙美が寝室のベッドを見ると…上着とスカートを脱がされ下着姿となった火影が、ベッドの上に横たわっていた

「凄く張り切ってたから、疲れちゃったのかなぁ?」

亜沙美は縦横無尽にステージを駆け回り、チカラいっぱい歌っていた彼女の姿を思い出していた


「私達も昼過ぎまで寝ましょうか?明日のコラボ配信は夜だし、疲れた分ゆっくり寝ましょ」

「そうですねぇ…私も眠くなってきました…」

配信者としては、まだまだ起きている者もいる時間だが、箱でのライブを終えた疲労から寝ることにしたのだが…



【朝4時過ぎ】
「う、う~ん…もぉロミータちゃん。私の身体あんまり触っちゃ…駄目だよぉ…」

亜沙美は本当に久しぶりに、ロミータと一緒に居ない夜を過ごしていた。しかし、いつもの習慣からか?身体を触られている感触があったので、夢の中でまたロミータに弄ばれていると思ったようだ。だが…

( (⊃ωー`).。oOう~ん…胸の辺りがスースーするぅ…また服を脱がされてるのかなぁ?注意しないと…むにゃむにゃ…)

「……あら?起こしてしまったかな?意外と敏感なのね。まだ、起きれないと思ったのに(笑)」

「えっ…えぇ!?メルル先輩!?ナニしてるんですかぁ!?」

うっすらと目を開けた亜沙美の目の前に、ニヤニヤしたメルルの顔があった

「ふふふ。アミちゃんって本当に可愛いから…少し触らせてもらってるの♪」

パジャマの上着のボタンの上半分を外され、ソコから中に手を入れられ身体のラインをなぞられている事を理解した

「だ、駄目ですよぉ…ベッドにすもらちゃんが寝てるんですよ。気付かれちゃいますぅ…」

メルルの寝室には、女が寝るのに少し大きめなベッドが1つしか無い。ソコに3人が寝るのは不可能だ

なので床に布団を2組み敷いて、ソコに亜沙美とメルルが並んで寝ていたのだが…彼女は寝ている亜沙美にイタズラをしていたのだ

「ふふふ…すもらちゃんは昼頃までは起きれないと思うわ。ビールに気持ち良く眠れる薬を入れたからね♪」

「えっ!?…すもらちゃんに薬を?…ど、どうしてですかぁ?」

度々メルルから「アミちゃん可愛いね。食べちゃいたいわ」と言われていた亜沙美だが、まさか本当に手を出されるとは思ってもみなかった。それも睡眠薬を使ってまで…もはや犯罪行為と言っても良いレベルの行いだ

「アミちゃんは知らないかもだけどね…ロミーは前までは人を寄せ付けない雰囲気だったのよ。コラボも滅多にしなかったし、自分から先輩達に甘えたりもしなかったみたいよ」

「えっ!?そうなんですかァ?」

「…やっぱり知らなかったのね…私はね…貴女と火影ちゃんくらいの差だけど、私の方がロミーよりも先にこの業界に入ったの…私は人気を出す為に積極的にコラボもしたわ…でも、私がどれだけ頑張っても、私よりもロミーの方が人気だった。ロミーには負けたくないし、ロミーの持ってるモノは欲しくなっちゃうの…」

「だからって、こんな事を?」

「それもあるってだけよ。アミちゃんは本当に可愛いから、どんな声で鳴くのか興味が芽生えたら抑えられなくなっちゃって…」

「…そうなんですか…でも!ここまでにしてください!すもらちゃんに睡眠薬を使ったことを言いませんし、私の身体を触ってきたこともロミーちゃんには言いませんから…ね?」

「……分かったわ。「バレなきゃ犯罪じゃない」って言葉もあるけど…バレた以上は、ここで手を引くのが正解でしょうね…ごめんなさいねアミちゃん。正直、貴女が欲しいわ…」

「ご、ごめんなさい。私は…まだまだお付き合いは考えていません。ロミータちゃんは…ロミータにだけは信頼してるから、特別に少しだけ許してるだけなんです…」

以前の亜沙美なら、こういう時は上手く言葉に出来なかったのだが…ロミータや梨香、太一との交流を経て、大切な時にハッキリ言葉に出来ないのは、周りの人も傷付けてしまうことになるのを学習していたので、彼女なりにキッパリとメルルに「NO」を突き付けた

「分かったわ。もう手出ししないから…それじゃおやすみなさい」

「はい。おやすみなさい…」

そう言うとメルルは、自分の布団を引っ張り亜沙美の布団と少し距離を開けた。本当にもう手を出さないよ。という意思表示なのだろう



【早朝5時頃】
「……うぅぅん…誰ぇ?」

何かの話し声が耳に入ってきた亜沙美は、すぐ側で寝ている火影すら反応しないような小さな声を出した

「…今日は困るわ。2人が泊まりに来ているのは知ってるでしょ?私達のことがバレちゃうわ…」

うっすら目を開けた亜沙美は、寝室のドアを開け廊下に居る誰かと話しているメルルに気が付いた。しかし、彼女は亜沙美が起きたことに気付いていないようだ

「……分かった。と、トイレで相手します…でも30分だけにして…彼女たちが起きちゃう前に帰ってね?…うん…」

(ヤバっ!?)

誰かと話し終えたメルルが寝室内に視線を向けた。直感的に、起きているのがバレるとマズイ!と思った亜沙美は目を閉じ、静かな寝息を立てているフリをした

メルルが口にして移動したトイレは、寝室の横のリビングの更に横にある。寝室に居てはトイレで何が行われているか?聞こえないのだが…

(もしかして…メルル先輩って彼氏が居たりするのかなぁ?私たちが泊まっているのを知らずに来ちゃったのかなぁ?)

寝ぼけていて気が付かなかったのか?最初に「2人が来ているのは知ってるでしょ?」とメルルが何者かに言っていたのを覚えていないようだ

(話しを聞きに行かない方が良いよね?もし見付かったら、危ないことになっちゃうかもぉ?)


亜沙美は、トイレでメルルが来訪者とナニをしているのか?凄く興味を引かれたが…それ以上に首を突っ込むことの危なさを感じていた

それは今まで、迂闊にロミータに優しさを魅せた時に…予想していなかったセクハラをされた経験から来る危機感だった

メルルの話し方から、恐らく相手は男だろうと予想している亜沙美。その男とメルルの関係が凄く気になるのだが、迂闊に踏み込むべきではないと胸の内にしまい込み、再び眠りに落ちるのだった



続く
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