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イシス王国&ドルイド王国編

【消去の魔女】現る

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【イシス防衛戦】
カルーアを助けるべく獣人化(ヴォイドゥルフ)して魔操機兵の右腕を切り落としたアリスだが、全力を振り絞った渾身の一撃の為、一瞬その場に立ち尽くすアリス
ソコを起き上がった吸血姫(コハラコ)が一気に間を詰めて来た!恐ろしい程の速度の手刀で、アリスの首を狙って振り下ろされた!

「氷結(アイスクル)!」

アリスは覚えたばかりの【スノーウーマン】のスキル【氷結】を使った。アリスの足元を中心に、一瞬で地面は半径5メートルほど凍りついた

「うあっ!?」

突如、足元が凍ったので足を滑らせた吸血姫(コハラコ)はバランスを崩し、魔操機兵とカルーアの中間地点を転がりながら通り過ぎて行った

「あひゃぁぁぁ…目がまわりゅ~」

カルーアの危機を救い吸血姫(コハラコ)の攻撃もかわせた事で、アリスは一瞬だが気が緩んでしまった


翼を砕かれた吸血鬼オデュッセウスは、マントの中からレイピアの様な武器を取り出した

「んっふっふ…これは魔剣吸魂(ソウルイーター)のひとつ、決して折れないソードでっす!相手に刺せば僅かな時間でも、相手から魂を吸ってしまう魔剣でぇす!」

オデュッセウスは最後の切り札を出した!アドルの剣撃をレイピアで絡めとる様にさばき、隙あらばアドルに突き刺そうとしていた。対して剣に魔法を乗せて戦う魔法剣士のアドル。2人の戦いはほぼ互角だった


しかし、ベイ・ガウザーとの戦いは圧倒されていた。ユーカ、ランスロット、オルガス、優輝、ミントスの5人がかりでも、ほとんどダメージを与えられないのに、逆に一撃もらえば致命傷!くらいの戦力差があった
ベイ・ガウザーの一振りを必死にかわしたランスロットだが、かわした所に蹴りを喰らう
「バキッ!」
肋骨が折れた音がして、地面に這いつくばるランスロット

ミントスらの魔法攻撃は、ベイ・ガウザーの表面手前辺りで勝手に消滅していく。目に見えないコーティングが施されている様だ!4人の剣撃が当たってもダメージにならない

「コイツ…化け物過ぎだろ!?」

まさしくオルガスの言う通り、強さの次元が違いすぎたのだ


(三姉妹の方はどうなっている?)

スグ隣の三姉妹の戦いが、ふと気になった優輝は横目で魔操機兵の方を見た
2つのピンチを凌いだアリスがひと息付いたところだった。しかし、ソコへ魔操機兵の左のパンチが襲おうとしていた

「アリスちゃん、避けて!」

「ふえっ!?」

獣人化(ヴォイドゥルフ)したまま氷結を使ったアリスは、その疲労から動きが止まっていた

「グチャァッ!!」

アリスはカルーアの目の前で、魔操機兵のパンチを顔面でモロに喰らってしまった!

「グッ……ゲハッ!!」

目と耳と口から血を吐いたアリスは、静かにその場に倒れ込みその場から動かなくなった

「なっ!?アリスー!!」

しかし、アドルはオデュッセウスと互角の戦いをしていて、三姉妹を助けに向かう余裕が無い
オルガスはベイ・ガウザーの剣撃をソードで受け止めたが、あまりのパワーの差に吹き飛ばされ大木に打ち付けられた。しかも、剣撃を受けた彼のソードは、その強過ぎる衝撃で折れていた……絶望的な状況だった

目の前でアリスを見ていたカルーアはショックのあまり声も出ず、魔法の使い過ぎで身体もマトモに動かせなかった

(負ける…絶望的に負ける……)

優輝の頭の中は、圧倒的な敗北感に満たされていた

「優輝避けろっ!」

「えっ!?」

三姉妹の方も大変な事になっていて、あまりに酷い状況に呆然としてしまった優輝。そこにベイ・ガウザーの一撃が襲った!

「ぐあぁっ!」

優輝とベイ・ガウザーの間にミントスが割って入って来た。とっさに背部に防御結界を張ったようだが、ベイ・ガウザーの一撃はソレを砕き彼女(ミントス)の服も吹き飛ばし、ミントスの背中を真っ赤に裂傷させた

目の前でミントスは虫の息
ユーカ姫達もベイ・ガウザーに打ちのめされた
アリスは生きているか?も分からない。カルーアは魔力枯渇に消耗過多。サーシャは周りの状況も気にせずに、アリスに回復を掛けている

(終わった…完敗だ…全滅する…誰か…助けて…)

優輝は絶望のドン底に居た
見知らぬ世界に召喚され与えられた2つのチートスキルを掲げ、安っぽい正義心で国家間の戦争に首を突っ込んだ結果…自分も仲間も絶望的な状況に追い込まれた……その時、彼(ゆうき)の頭の中にある言葉が浮かんだ

(困ったら呼んでね。何でも、とはいかないけど、何かひとつ助けてあげるわ)

自分より25年前にこの世界に召喚され、持ち前の頭脳と研究心から魔族の最強の魔女となっている徳川有栖の言葉…

「助けてくれ!…ありすっ~!!」

優輝は天に咆哮した。同郷の彼女(ありす)の言葉にすがるしか手は残されていなかった。その言葉を虫の息ながら、傍で聞いたカルーア

「あっ!?何言ってるんだ、このポンコツ勇者は?姉さんは今、目の前で死にかかってるじゃないか…頭悪いのか!?」

確かにそうだが、優輝が呼んだのは別のありすだった
追撃のソードを振り上げたベイ・ガウザーだが!その時、彼と優輝の間の地面に魔法陣が現れた!その六芒星のまばゆい光の中から、1人の少女が形成されていく

「あら、優輝君じゃない…どうしたの?あれから数日だけど、もう困難を迎えちゃったのかな?」

六芒星から現れたのは【徳川 有栖】だった。彼女が現れると六芒星は消えていった。彼女はゆっくり辺りを見渡した

「はーん、なるほどねぇ…絶望的にやられてるわね~堪らず私に期待した。って訳かな?」

「消去の魔女か…久しいな…こんな場所へ今更、何をしに来たのだ?」

突然現れた【消去の魔女】に問いかけるベイ・ガウザー

「本当に久しぶりねベイ。実は、そこの異世界勇者の優輝君に1度助けられていてね、そのお返しをする為に呼ばれた。って所かな…」

「ほぅ…それで何をする気なのだ?」

「そうよね。ねぇねぇ優輝君。この状況で私に何を望むのかな?」

「こ、このままだと俺達は全滅しちまう。頼む、助けてくれ!」

そう言われて徳川有栖は黙り、両手を後ろにまわし左手で右手首を掴み、その場でクルリと回った

「それって…私のチカラで、この状況をひっくり返してくれ。って事かな?」

「も、もしも…それが叶うなら…」

有栖は頭を下げて小刻みに震えだした
そして、顔をあげると腹を抑えて大笑いした  

「あはははははははははっ!流石にソレは無いんじゃない?貴方から提供された物と、今の貴方の願いって釣り合いが取れるの?…無理でしょ?ベイ達が前の戦争に負けて…5年だっけ?
それから今日までの彼らの準備、彼らの努力、この日に賭けた彼らの想い…ソレを私のチカラで台無しにしろ、と?同郷の者とは言え、考えが甘過ぎて流石に呆れちゃうわ」
 

優輝は微かな希望を賭けて彼女(ありす)を呼んだ!以前交わした約束の通りに徳川有栖は現れた…しかし優輝の望みは彼女に笑い飛ばされてしまった

まさに手の打ちようが無くなった優輝
彼は有栖の高笑いを聴きながら、絶望で膝を折りその場に座り込んでしまった



続く
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