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夢忘れ編
もう1人のロミー
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【ヒルドルブ砦】
アルバートファミリーが【ヘパイトスの街】を出発した前日の昼過ぎのこと。強烈な眠気に襲われたロミーはメイドのクーニャが戻ってくるまで待てずに、夢の中に落ちていた
「起きて…ねぇ起きてよ!」
「誰?ママ?うぅん…梨香なの?…まだ眠いよ…」
ヒルドルブ砦の1番高級な部屋で寝ているロミーは、夢の中で自分と近い年齢の少女の声に呼ばれていた
「何を言っているの?私になっている貴女は誰?」
「貴女こそ何を言ってるの?…ロミーはロミーよ…貴女こそ誰なのよ?」
「へぇ…貴女もロミーって名前なんだ。奇遇ね…うぅん!もしかしたら運命だったのかな?…私もロミーなのよ」
「( ˶°ㅁ°˶)えっ!?」
夢の中で誰かに起こされているロミータ。だが、彼女を起こそうとしている少女も【ロミー】と名乗った。自分の名前が珍しい名前だという記憶が残っていたロミーは「そんな事ってあるの?」
そんな気持ちで目を開き起き上がる。そして彼女が見たものは…
「何よコレ?……人が人と…うぅん。人とよく似た別の生物と戦っている!?…戦争なの?…アチコチから火の手が…何これ…映画を見てるの?」
ロミーは地球で小さな男の子を助けた時に暴走してきた車と接触し脳に深い傷を負った為、惑星エリスアに転生した今も記憶喪失に悩まされている
しかし、身体に染み付いた癖や記憶までが完璧に失われることは稀な話で、人と話している間は困惑や戸惑いで思い出せていなかったが…睡眠中の無防備な状態がロミータから雑念を取り払い、薄っすらと地球での記憶を呼び覚ましたようだ
「映画って何?初めて聞いたわ…貴女は私と同じ名前の様だけど、私とは違う!…この星とは違う世界からやって来たみたいね」
ロミータは地球の日本で近代的な生活を送っていたので、彼女の身体にはその生活と世界観が刻まれていた。ソレが今までのロミーの常識だったのだが…今目の前で繰り広げられている凄惨な戦争風景は映画の中の出来事のように見えた。が…
「うぅん違うっ!映画はこんな生々しいものじゃなかった。コレが本当の戦争?コレが本当の殺し合い?…混戦状態の中、1斬りされた途端に周りから容赦ない一斉の斬撃に襲われ、瞬く間に動かぬ肉人形へと変化していく…コレが戦争なの?」
「ふーん…貴女は戦争も見たことが無いような平和な世界からやって来たのね…羨ましい事だわ。叶うなら私がそんな世界に生まれ変わりたいわね…」
本当の戦争を初めて目の当たりにしたロミータは、あまりの凄惨な光景に力無く立ち尽くしている。その様子を眺めるもう1人のロミー
「…あ、貴女は誰なのっ!?」
「私?…ほら、あそこで戦っているのが私よ!」
もう1人のロミーが指差した方向を見つめるロミータ。その先には叫びながら剣を振るう少女が戦っていた
「なにがなんでも踏みとどまるのよ!これ以上進行されたら、私たちの城に攻め込まれてしまうわ!」
「あれは…ロミー…貴女ね…」
「そうよ。アレが私。お父様やクリス、クーニャが知っている私なのよ」
2人が眺める少女【ロミー・マナティート】が女だてらにソードを振りかざし、人間とよく似た別の生物である【魔族】と戦っている
場面は変わり…城の入り口近くで奮闘するロミーが叫んでいた
「貴様らー!よくも父上と母上をー!許さない…絶対に許さないー!!」
「ロミー!私から離れないで!!」
単騎で戦うロミーを心配し、魔族と戦いながらも近寄ろうとするクリストファーの姿
「アレが…砦のみんなが知るロミーなの?じゃあ…今生きているロミーはドコのロミーなの?」
「貴女が知らないのなら私が知るはずないじゃない…でもね、今確実に言えるのは…この砦に居るみんなが望んでいるロミーは、あのロミーなのよ」
ロミータは自分が砦のみんなから、お姫様扱いをされていた事は理解していた。目の前のロミーはそんな姫様の立場でありながら、戦場で剣を振りかざし勇猛果敢に戦っていた
「む、無理よ!ロミーにあんな強い女の子になれるハズがないわっ!」
「そう…なら、貴女がロミーになれるように私の記憶を分け与えてあげるわ!」
そう言うと鎧姿のロミーは、ベッドに眠るロミータの額(ひたい)と自分の額を接触させた
「何コレ!?…これは…貴女の記憶なの?」
……………………………………………
「…ミー様!…起きてロミー!!」
「うあっ!?」
力強い声で呼ばれ目を覚ましたロミー
「あれ?…あっ!クーニャ…さん?ロミーはどうしたの?」
「凄くうなされて苦しそうにしてました…」
(まだ私の事を【さん】付けで呼ばれている)
クーニャの知っているロミーは、彼女とかなり仲が良かったので他人行儀に【さん】付けで呼んだりはしない。その事がクーニャを悲しくさせた
「…………ねぇクーニャ」
「何でしょうか?」
「外の空気が吸いたいの…一緒に来てくれる?」
「あっ!?…はい!もちろんです」
まだ足がおぼつかないロミーの手を引き、一緒に外に出た2人。そこではクリストファーと若い男の子の兵が剣の稽古をしていた
「あっ!?ロミー!もう大丈夫なの?」
自分の知っているロミーの変貌に戸惑いを魅せたクリストファーだが、彼女への忠誠に揺らぎはなく、起きてきた彼女をスグに心配して駆け寄ってきた
「心配かけてごめんなさい…外の景色が見たくて……良かったら稽古を眺めていても良い?」
「えっ!?…もちろん良いわ…ですよ…ライル。稽古を続けますよ!」
「はいっ!!」
13-14歳くらいの若い男の子の兵士(クリスがライルと呼んだ)と稽古に戻ったクリス。その稽古を見守るロミー
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「はぁはぁ…はぁはぁ…」
「良し、ここまでだ!日陰で水分を取り休憩していなさい!」
「はい…有難うございました!」
クリスとの稽古で息も絶え絶えな少年兵ライルは、他の兵士から水の入ったコップを受け取り、木の根元にもたれるように座り込んだ。そしてクリスはロミーに近寄ると、息を整えてから話し掛けた
「どうロミー?何か思い出せた?」
「ねぇクリス…ロミーと稽古してくれない?」
「ええっ!?」周囲の一同(クリスも含む)
魔族から命からがら救出され昏睡状態だったロミー。助からないかも知れない…と言われた彼女が今朝、奇跡的に意識を取り戻したものの、記憶喪失になっていたが…
なんと!その日の午後にクリストファーに剣の稽古をして欲しい。と言い出したので周囲の一同はみな驚いていた
続く
アルバートファミリーが【ヘパイトスの街】を出発した前日の昼過ぎのこと。強烈な眠気に襲われたロミーはメイドのクーニャが戻ってくるまで待てずに、夢の中に落ちていた
「起きて…ねぇ起きてよ!」
「誰?ママ?うぅん…梨香なの?…まだ眠いよ…」
ヒルドルブ砦の1番高級な部屋で寝ているロミーは、夢の中で自分と近い年齢の少女の声に呼ばれていた
「何を言っているの?私になっている貴女は誰?」
「貴女こそ何を言ってるの?…ロミーはロミーよ…貴女こそ誰なのよ?」
「へぇ…貴女もロミーって名前なんだ。奇遇ね…うぅん!もしかしたら運命だったのかな?…私もロミーなのよ」
「( ˶°ㅁ°˶)えっ!?」
夢の中で誰かに起こされているロミータ。だが、彼女を起こそうとしている少女も【ロミー】と名乗った。自分の名前が珍しい名前だという記憶が残っていたロミーは「そんな事ってあるの?」
そんな気持ちで目を開き起き上がる。そして彼女が見たものは…
「何よコレ?……人が人と…うぅん。人とよく似た別の生物と戦っている!?…戦争なの?…アチコチから火の手が…何これ…映画を見てるの?」
ロミーは地球で小さな男の子を助けた時に暴走してきた車と接触し脳に深い傷を負った為、惑星エリスアに転生した今も記憶喪失に悩まされている
しかし、身体に染み付いた癖や記憶までが完璧に失われることは稀な話で、人と話している間は困惑や戸惑いで思い出せていなかったが…睡眠中の無防備な状態がロミータから雑念を取り払い、薄っすらと地球での記憶を呼び覚ましたようだ
「映画って何?初めて聞いたわ…貴女は私と同じ名前の様だけど、私とは違う!…この星とは違う世界からやって来たみたいね」
ロミータは地球の日本で近代的な生活を送っていたので、彼女の身体にはその生活と世界観が刻まれていた。ソレが今までのロミーの常識だったのだが…今目の前で繰り広げられている凄惨な戦争風景は映画の中の出来事のように見えた。が…
「うぅん違うっ!映画はこんな生々しいものじゃなかった。コレが本当の戦争?コレが本当の殺し合い?…混戦状態の中、1斬りされた途端に周りから容赦ない一斉の斬撃に襲われ、瞬く間に動かぬ肉人形へと変化していく…コレが戦争なの?」
「ふーん…貴女は戦争も見たことが無いような平和な世界からやって来たのね…羨ましい事だわ。叶うなら私がそんな世界に生まれ変わりたいわね…」
本当の戦争を初めて目の当たりにしたロミータは、あまりの凄惨な光景に力無く立ち尽くしている。その様子を眺めるもう1人のロミー
「…あ、貴女は誰なのっ!?」
「私?…ほら、あそこで戦っているのが私よ!」
もう1人のロミーが指差した方向を見つめるロミータ。その先には叫びながら剣を振るう少女が戦っていた
「なにがなんでも踏みとどまるのよ!これ以上進行されたら、私たちの城に攻め込まれてしまうわ!」
「あれは…ロミー…貴女ね…」
「そうよ。アレが私。お父様やクリス、クーニャが知っている私なのよ」
2人が眺める少女【ロミー・マナティート】が女だてらにソードを振りかざし、人間とよく似た別の生物である【魔族】と戦っている
場面は変わり…城の入り口近くで奮闘するロミーが叫んでいた
「貴様らー!よくも父上と母上をー!許さない…絶対に許さないー!!」
「ロミー!私から離れないで!!」
単騎で戦うロミーを心配し、魔族と戦いながらも近寄ろうとするクリストファーの姿
「アレが…砦のみんなが知るロミーなの?じゃあ…今生きているロミーはドコのロミーなの?」
「貴女が知らないのなら私が知るはずないじゃない…でもね、今確実に言えるのは…この砦に居るみんなが望んでいるロミーは、あのロミーなのよ」
ロミータは自分が砦のみんなから、お姫様扱いをされていた事は理解していた。目の前のロミーはそんな姫様の立場でありながら、戦場で剣を振りかざし勇猛果敢に戦っていた
「む、無理よ!ロミーにあんな強い女の子になれるハズがないわっ!」
「そう…なら、貴女がロミーになれるように私の記憶を分け与えてあげるわ!」
そう言うと鎧姿のロミーは、ベッドに眠るロミータの額(ひたい)と自分の額を接触させた
「何コレ!?…これは…貴女の記憶なの?」
……………………………………………
「…ミー様!…起きてロミー!!」
「うあっ!?」
力強い声で呼ばれ目を覚ましたロミー
「あれ?…あっ!クーニャ…さん?ロミーはどうしたの?」
「凄くうなされて苦しそうにしてました…」
(まだ私の事を【さん】付けで呼ばれている)
クーニャの知っているロミーは、彼女とかなり仲が良かったので他人行儀に【さん】付けで呼んだりはしない。その事がクーニャを悲しくさせた
「…………ねぇクーニャ」
「何でしょうか?」
「外の空気が吸いたいの…一緒に来てくれる?」
「あっ!?…はい!もちろんです」
まだ足がおぼつかないロミーの手を引き、一緒に外に出た2人。そこではクリストファーと若い男の子の兵が剣の稽古をしていた
「あっ!?ロミー!もう大丈夫なの?」
自分の知っているロミーの変貌に戸惑いを魅せたクリストファーだが、彼女への忠誠に揺らぎはなく、起きてきた彼女をスグに心配して駆け寄ってきた
「心配かけてごめんなさい…外の景色が見たくて……良かったら稽古を眺めていても良い?」
「えっ!?…もちろん良いわ…ですよ…ライル。稽古を続けますよ!」
「はいっ!!」
13-14歳くらいの若い男の子の兵士(クリスがライルと呼んだ)と稽古に戻ったクリス。その稽古を見守るロミー
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「はぁはぁ…はぁはぁ…」
「良し、ここまでだ!日陰で水分を取り休憩していなさい!」
「はい…有難うございました!」
クリスとの稽古で息も絶え絶えな少年兵ライルは、他の兵士から水の入ったコップを受け取り、木の根元にもたれるように座り込んだ。そしてクリスはロミーに近寄ると、息を整えてから話し掛けた
「どうロミー?何か思い出せた?」
「ねぇクリス…ロミーと稽古してくれない?」
「ええっ!?」周囲の一同(クリスも含む)
魔族から命からがら救出され昏睡状態だったロミー。助からないかも知れない…と言われた彼女が今朝、奇跡的に意識を取り戻したものの、記憶喪失になっていたが…
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