ようこそ幼い嫁候補たち④

龍之介21時

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夢忘れ編

覚悟を決めた男

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【遅い晩飯】
戦闘が終了し、荒野地帯から森林地帯の入り口へと三姉妹たちは移動した。ソコにある小さな監視用の建物で、ひと息つく事にしたようだ

「ヘンダーソンよ。コレを持って行って【ホロミナティ】とか言うヤツらと、しばらく談笑しておれ。ワシから訪ねるまで1人もコチラに来さすでないぞ!」

「は、はい。了解です。お任せください!」

ヘンダーソンは、やたら気合いの入った返事をした。かなり元気な青年のようだ。彼はアテナから渡された瓶入りのドリンクを5本持って、20メートルほど離れた場所に自分達のテントを設営しているホロミナティの4人の所に向かった



【炭酸飲料】
「アテナ様からホロミナティの皆さんに、今回はよく頑張ってくれた。と、ご褒美の炭酸飲料をお持ちしました。皆で飲みましょうよ♪」

「えぇ!?…炭酸飲料って…マジっすか!こんなの王宮の偉いさんか、1部の貴族しか飲めない貴重な飲み物っすよー♪」

この世界はまだまだ治安が悪いので、炭酸飲料の製造方法は一般的に流通していない。それ故に、炭酸飲料はごく一部の裕福な者だけが楽しめる飲み物でしかないようだ

ソレを突然提供されたサケマタは、テンションが爆上がりしていた。ノエールも噂は聞いていたが炭酸飲料を初めて見るらしく、サケマタと同様に興奮していた

「ミコ姉さん…」

「そうだにぇ…どういう事なのかにぇ?」

大はしゃぎしている2人と対照的に、突然のご褒美に何か裏があると勘づいたコヨリィとミコは、差出人であるアテナに注目した


「ほっほっほ♪まだまだBランクのヒヨッコ揃いかと思うたら…中々賢いヤツもおるではないか!」

そう言うとアテナは人差し指で「シーッ!」のポーズを取り、無言でコヨリィ&ミコと意思疎通した


「なるほど…そういう事かにぇ♪」
「さぁー、みんなでハシャギましょー♬」

アテナと意思疎通した2人は、向こう側の会話の邪魔にならない様に、ヘンダーソンを加えて楽しく盛り上がる事にした



【感謝するヨシュア】
「エルデス。簡易式で構わないから【認識阻害】を掛けてくれ」

「はい。直ちに~」

エルデスはヨシュアに言われた通りに【認識阻害】を張った。あくまで、少し離れたホロミナティに話を聞かれなければオーケーなので、簡単な術式で手短に展開した


「アテナ様。今回の救援、凄く助かりました。深く感謝の言葉を言わせてください。有難うございます!」

「ほっほっほ♪流石は先代魔王の息子よな。まだまだ若い見た目じゃが、シッカリ礼儀は教え込まれとるようじゃのう」

「……………………………………………」
(ヨシュアは、わたし達には荒い口調で話すことが多いけど…歳上で尊敬に値するヒイロやエリスア様にはキッチリ敬語で話してるよね…でも、それを踏まえても今の言い方は何か気になるな…)

年長者には、ちゃんとした態度で接しているヨシュアとは言え今のアテナへの言い方は、まるで式典の時のようなシッカリした振る舞いに見えたので、少し不思議に感じたカルーア

しかし、そのカルーアの横で沈んだ表情をしてあるアリスとコハラコが居る

「アテナ様が来てくれたから助かったけどぉ…サーシャが誘拐されちゃったよぉ…どうしよぉ…」
 

「サーシャママ…心配なノ…」

「そうじゃの。お前たちの妹のサーシャを助けねばならんの…じゃが、先ほどの3人は【ヴァル・ファスク軍】の中でも精鋭じゃろうな。手こずるやもしれんが…ワシが居るんじゃ。そんな暗い顔をするでないわ!」

三姉妹たちを手玉に取った【マーマル遊撃隊】の強さを考えれば、普通なら気持ちを切り替えるのは難しいところだが、ソレを言っているのが【武闘女神アテナ】となれば話は違う

「アテナ様ぁ。お願いします!アタシも一生懸命に頑張るからァ!」
「お願いしますノ!お願いしますノ!」

「かーかっか!任せておけい!」

最強のSS(ダブルエス)ランクを誇るアテナから励まされ、少し気持ちが軽くなったアリスとコハラコ

「ほら、甘い菓子も持ってきてやったぞ。食え食え…じゃあ、難しい話はここまでにするかの。ワシはヘンダーソンと話があるでのぅ…」

もう秘密の話は終わった事を伝えに弟子の元に向かうアテナ。ヨシュアが元魔王(ザッド)の息子だという事は、アルバートファミリーと聖騎士勇者隊しか知らない極秘事項だからだ



【その日の夜】
カルーアの疲労具合を心配したエルデスが、ホロミナティの方と、アルバートファミリーの方の両方のテントに【認識阻害】を張ってくれた

流石にマーマル遊撃隊の再度の襲撃は有り得ない。と思われるが…凶暴な魔物に襲われない為に張ったのだが…実はエルデスがヨシュアから密かに頼まれていた事も含まれていた


テントの外で話すエルデスとヨシュア

「すまないなエルデス。お前も疲れているだろうによ」

「なんて事はありませんよ~私はヨシュア様のお役に立てる事が~嬉しいのですから~…ところで~サーシャさんを助けに~コッソリ出発なさるのですよね~?もちろんエルデスもついて行きますからね~♪」

実はエルデスが張った【認識阻害】には催眠効果も混ぜられており、テントの中の者は深い眠りについていた。魔法感知に強いハイエルフのカルーアも居たが、強敵たちとの連戦でソレに気が付けないほど疲労困憊だった

エルデスはつい最近までヨシュアの事を、主(あるじ)である元魔王(ザッド)から頼まれ護衛対象として見ていたのだが…

最近は腹を割って話すことも多かったし、この前同じ布団で2人きりで身体を密着させて寝むってから、保護者以外の感情が芽生えていた

「本当にお前は俺の為に頑張ってくれるんだな…凄く嬉しいぜ。だから、お前には幸せになって欲しいんだ」

「(; ꒪ㅿ꒪)えっ!?…何故ザッド様と同じ言葉を?」

エルデスが昔ザッドの館に迎え入れられた時、彼からも優しい目で見つめられながら、同じセリフを言われたことを咄嗟に思い出した

「救出は危険を伴う。だから、お前は…」
「ドスッ!」
「うぁ!?…ヨシュア様…」

ヨシュアはエルデスの後頭部に素早い手刀を入れ、一瞬で彼女を気絶させるとテントの中で寝かせた。そして1人、サーシャ救出の為に旅立とうとテントを出た


「ふむ。1人で行く気かの?漢前じゃのう、お主は。爺さんの若い頃とよう似とるわい」

「やはりアテナ様は気づいておられましたか…」

「ふはは。伊達に【武闘女神】などと言われてはおらんわい」

「止めますか?」

ヨシュアがサーシャを救出しに向かうのは魔族側が支配しているエリアになる。そんな所に元魔王(ザッド)の息子である自分が、人間側の者と足並みを揃えて行く訳にはイカない。だからヨシュアは、コッソリ1人で出発しようとした

「いや…漢が腹を括(くく)って動こうとしてる男の行動を反対するのは、女の価値が下がると言うものじゃろうて…じゃがな…死ぬでないぞ。必ずな!」

「分かりました。約束します!待ってくれている可愛い女も居ますから、俺は死にませんよ」

「ふむ。エルデスじゃったか…皆に気付かれぬよう、建物に運んでおいてやるわい」

「ありがとうございます。では…」

アテナに頭を下げ精一杯の返事をしたヨシュアは、覚悟を決めた表情で1人出発して行った



続く
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