ようこそ幼い嫁候補たち④

龍之介21時

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夢忘れ編

圧倒的な強者

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【陽が沈む森林帯】
「すみませんマーマル様ー。エルフではなく回復師を捕獲してしまいましたー。どうしますかー?」

宝石魔獣(カーバンクル)のテウ・メッソスがエルデスに、怪しい宝石を向けて笑みを浮かべた事に何かを感じたサーシャが、咄嗟にエルデスを庇ったので彼女は無事だったが、代わりにサーシャが宝石に吸い込まれてしまった

「予定通りに上手くイカないのは良くある事さ…それよりも…」

カルーアとヨシュアを1人で相手しながらも、マーマルは周囲を見渡した

既に疲弊しきっているカルーアとヨシュアは、マーマル1人が相手でも押されている

エリエスは武器(ソード)の相性が悪過ぎて逃げてばかりになってしまい、身体中の何ヶ所かに切り傷を刻まれている

コハラコはまだ気絶しているし、アリスは意識はあるが立ち上がる事も出来ない。エルデスの魔法は補助と回復系しかない。ましてや【ホロミナティ】の戦闘力(チカラ)では、牽制する事もできずにいる

「さっきも言ったけど、今日現れる人間側の増援は戦局をひっくり返すほどの相手になる!…と占星術では出てたんだけどね…この状況を踏まえたら、エルフ2体は生け捕りにして…後は全滅させちゃおうか(笑)」

マーマルは害虫駆除を業務的にこなすかの様な顔つきで、残酷な言葉を平然と吐き出した

「…だ、そうだ。赤髪の戦士よ…貴様ほどの者を殺すのは勿体ない気持ちだけどさ…マーマルがそう言うんだ。諦めてくれよなっ!」

リュウキは薄ら笑みを浮かべ、切り傷だらけになったエリエスにトドメを刺すべく、刃太剣(ラージソード)を振り上げた。が…

「ドバキィッ!!」

「ぎゃあああぁぁぁ!!」

思いっきり吹き飛ばされたのはリュウキだった。地に伏していたエリエスは予想外かつ、親愛すべき者が目の前に居ることに熱い感情が込み上げたのか?目に涙を浮かべて喜んだ

「おいおいお主…ワシの可愛い孫をこんなにも傷だらけにするとはのぅ…生命が要らんのかえ?…苦戦しておる様じゃなエリエス。じゃが!ワシが来たからには安心せぇ…コヤツらはワシ1人で全滅させてやるでの♪」

「アテナさん!!」

リュウキを吹き飛ばしエリエスの眼前に居るのは、鮮烈なハイキックをリュウキにブチ当てた姿勢で決めポーズをしている【武闘女神アテナ】だった

惑星神エリスアから受けた予言を気にしていたカルーアは、このままでは取り返しの付かない事態に追い込まれると、心底不安になっていたので…最強の称号SS(ダブルエス)ランクを持つアテナの救援に心の底から安堵した


「何ですかコイツはー?この状況に1人増えたくらいでー……」

「テウ!!脱出だ!!最短で最速にだっ!!」

「(; ꒪ㅿ꒪)は、はい!!」

圧倒的に押していた状況でリュウキが突然現れた女に蹴り飛ばされたが、まだそれだけの事で優位は変わらない。と思っていたテウにマーマルは急いで緊急脱出しろ!と伝えた

最初に脱出用にとマーマルとリュウキに渡していたのと同じ宝石に、慌てて魔法力を流すテウ

「くかかか!このワシから逃げられるとでも思うておるのかぇ……んぉ!?」

アテナが言い切る瞬間、1時間ほど前。3キロ以上先の場所でテウが事前に、脱出用の段取りをしていた大きな宝石を埋め込んだ大木から高速で、3人の宝石目掛けて光のロープが繋がれ…バンジージャンプで言う伸び切ったゴムに一瞬で繋がれたかのように【マーマル遊撃隊】はあっという間に大木の位置まで吹き飛んで行った

……………………………………………

「戻っておいでー!」

光のロープに繋がれた【マーマル遊撃隊】は大木を通り越し、更に向こうへ飛んで行っている。その最中にテウは大木に埋め込んでいた宝石を自分の袖の中に回収した

あっという間に【マーマル遊撃隊】の3人は5km以上先に逃げることに成功した。そして推進力が尽きそうな頃に、再び羽を生やしたリュウキが仲間の2人を優しくキャッチした


「なんじゃいそりゃ!面白いことをするヤツらじゃのぅ…おっ!?そうじゃすまん。ヤツらを逃がしてしもうたわい」

予想外過ぎる脱出方法を取られ一瞬で遥か先まで逃げられてしまい、流石のアテナも彼女ら3人を逃がしてしまった


「ほら、お前たちもコレを飲め。王宮騎士ご用達の最高級の回復薬じゃ。ふむ、かなり危なかったようじゃのぅ…」

「有難うございますアテナ様!正直、凄く助かりました。来てくれなかったから、どうなっていたか分かりません…でも、どうしてコチラに?」

アテナから手渡された超高級回復薬を飲む三姉妹たち。しかし、国宝級の強さと言われるアテナは迂闊にヘルメスの街を出ないし、出発前にも見送りに来てくれた彼女がココに居ることが不思議だ

「ふむ、その事が…まぁ気になるわの。実はな…3時間ほど前にの、ヒイロ君と美しい女性が現れてな…」

そこまで話してアテナは周囲を見渡した。【ホロミナティ】を僅かに見詰めた

「アルバート家に最近居ついたと言うその女性がじゃな…どうしても、お前さん達の事が気になって仕方ないから、ワシに救援に向かってくれ。と頼み込んできてのう…そうじゃ弟子も連れて来ておったわ。これこれ、コッチに来て挨拶をせい」

すると【ホロミナティ】の4人に市販の回復薬を渡していた20歳前くらいの男が三姉妹たちの方にやってきた

「自分はヘパイトス工房で見習いをしながら…はぁはぁ…アテナ様から格闘技を教わっている【ヘンダーソン】と申します。お見知り置きを…エリエスお嬢様…はぁはぁ…大丈夫でしたか?」

「ヘンダーソンまで来ていたのね…ところで、かなり疲労しているみたいですけど…お祖母様に精力を吸われましたのね…」

「あ、はい…気絶させられてしまいました」

どうやらヘパイトスの弟子であるヘンダーソンは、アテナが一時的に若返る為の吸引をされて疲労しているようだ

「今回の旅は思ってた以上に強敵揃いですから、貴方には危険かも知れないわよ?」

ヘパイトス工房に居候している彼の事は、もちろんエリエスは知っている。かねてからアテナが素質を見抜いていた彼を、ヘパイトス道場が閉鎖されてからもマンツーマンで修行していたようだ

「( ̄▽ ̄;)あはははは。流石にBランクの自分では荷物持ちくらいしか役に立てないと思いますが、何でも良いからエリエスお嬢様を助けたいのです」

「積もる話は後でするとしてじゃ、ミコとやら以外のホロミナティの者よ。ヘンダーソンと一緒にテントを設営せよ。ワシは全員分のメシを作ってやるからの」

戦っていた荒野地帯から、少し離れた森林帯にまで移動した彼ら。今夜はこの場所で野宿することを決めたアテナ。サーシャを奪われてしまい色々話したいことがある彼らだが【腹が減っては戦ができぬ】と言うように、取り敢えずアテナが用意してくれる食事を摂ることに従った



続く
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