ようこそ幼い嫁候補たち④

龍之介21時

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夢忘れ編

「私と結婚しなさい!!」

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【休憩室】
部屋の中心に居るのはヒイロで、真正面に立っているカルーアが激怒していた

「ちょっとヒイロ!どういう事なのさ!?わたしという者が有りながら、別の女性の裸を覗くなんてさっ!!」

「いや、だから違うんだって…」

16畳ほどの広さの騎士たち用の休憩室で、ヒイロはカルーアから質問責めにあっていた。天才軍師ホルンの入浴を覗いた件である。クリストファーがホルンに付いていき、騎士団長クラス用の寝所で慰めているようだ

そこへ、ロミーのお世話役であるクーニャが近付いてきた

「あの…すみません!私が…ロミー様が大浴場を使っている事を皆に知らせておけば、こんな事にはならなかったのです。ヒイロさん、すみませんでした。カルーアさんも怒りを治めてください~」

今回の覗きの件はクーニャ以外の衛生兵たちが大浴場の方を、ロミータが1人で使っている事を知らなかったが故に発生した事だった


「なぁんだぁ、そういう事だったのねぇ。お兄ちゃんが覗きをするなんてオカシイなぁ。って思ったんだぁ…勘違いだったんだからぁ許してあげようねぇカルーア?」

アリスはホルンがカルーアの母親の姉だと聞いたので、2人の前で姉らしい姿を魅せようとして、穏やかにカルーアをなだめたようだ

「そ、そうだね…わたしも少し言い過ぎたよ。ヒイロはワザと、そんなゲスい事はしないね…うん…」

クーニャの説明で勘違いだったと、アリスとカルーアを始め全員が納得したので何とかこの件は収束するかに思えたのだが…


「ガチャ」
「あっ!ホルン様…落ち着かれましたか?」

クリストファーに寄り添われる形で、軍師ホルンが休憩室に入ってきた。彼女はゆっくりと歩を進めると…ヒイロの前で立ち止まり彼の顔を見上げた

「事故とは言え申し訳ありませんでした!」

間髪入れずホルンに謝罪したヒイロ。だが…

「……そんなに謝らなくとも良いです…ですが…ヒイロと言いましたね。貴方にどうしてもお願いしなければならない事ができてしまいました」

「な、何でしょうか?可能な限りの事は…」

「可能な限りでは駄目なのです!貴方には絶対、絶対に責任を取って貰わなければならないのです!!!!!」

天才軍師ホルンは、いつも少し不機嫌そうな表情で起伏の浅いトーンで話していたのだが…そんな様子とは打って変わって少し顔を赤く染め放ったあまりにも強いその口調に、彼女をよく知るものたちは【開いた口が塞がらない】状況で立ち尽くしている

「(ごくり)あの…俺はどんな責任を取らねばならないのでしょうか?」

恐る恐るヒイロはホルンに尋ねた

「私の生まれ育ったエルフの里には絶対の掟があります…その…成人している未婚の女が…い、異性に裸を見られたからには、必ずその相手と結婚しなければならないのですっ!!だから!私と結婚しなさいヒイロっ!!」

「Σ(  Д )ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙ええ!?」
「なんだってぇ!!」
「んまぁ!?」

ホルンやカルーア、そして彼女の母親が育ったエルフの里には【裸体を見られた成人している女はその相手の元に嫁ぐべし】と言う固い決まりがあるようだ


「まぁまぁまぁ!ホルン様に縁談が発生したという事ですか?クリス!ワクワクしてしまいますねっ!!」

「( ̄▽ ̄;)姫様……こういう場面で乙女の様に目を輝かせるのは少しどうかと思いますが…」

クリストファーに諌(いさ)められるロミータだが…彼女は実際に、ほんの数日前までは地球(日本)で女子高生として暮らしていたのだから女子トーク的なノリで、こういう話にかぶりついてしまうのは仕方ないとも言えた


「いや、あの…ホルンさん。結婚をこういう事故で起きた事から決定するのはどうか?と俺は思いますが…」

「何を言うのですかヒイロ!私はこの掟に習い成人してから今日まで、ただの1度も裸を見られないように注意を払って500年以上も生きてきたのですよ!!」

「で、ですが…」

ヒイロからすれば、初めて出会った異国の女性とイキナリ結婚しろと言われても困るのだ…なにしろ、つい数日前にカルーアとヘルメスの街の役所に行き、婚約申請したばかりなのもあり流石に断るしかないのだが…

「その私の500年の月日を事故だから【ノーカウント】で。なんて意見が通ると思っているのですか!?」

恋愛感情すらも芽生えてさえいない事故的な流れから結婚に至るのは、流石にどうかと思うヒイロは必死にホルンを説得するのだが…その掟を大切にして、裸を見られないように注意を払って生きてきた彼女の500年は、そう軽いモノでも無い事も事実だった


「ちょ、ちょっと待ってください!ホルン叔母様!わたしはヒイロを愛しています。わたしはまだ14歳なので結婚していませんが、ヘルメスの街で婚約もしているのです。どうか裸を見られたから結婚すると言う話は、引き下げてもらえませんか?」

「……貴女の気持ちも分かりますが、私の500年も容易(たやす)く取り下げる訳にはイカないのです!貴女こそ身を引いてくださいモスコー!!」

「……………………………………………」
「……………………………………………」
「……………………………えっ!?」
「モスコーって誰ですか?」

突然ホルンの口から出た名前【モスコー】
しかもホルンはカルーアの肩を両手で掴み、真っ直ぐにカルーアの顔を見詰めて言っている

「……何を言っているのですか?モスコーは貴女の名前ですよ。私の妹【カシス】に子供が出来ちゃったから名前を付けて欲しいと頼まれたので私が数日間、悩みに悩んでプレゼントした名前なのです。忘れるハズがありません!」

「おい。どういう事なんだカルーア。ホルンさんはお前を【モスコー】と言っているぞ…」

「そんな事を言われても…わたしにも何が何だかサッパリ分からないよ」

断固としてカルーアの事を【モスコー】と呼ぶホルン。どう見ても彼女の顔は本当の事を言っている様にしか見えない。ヒイロもカルーアも動揺が隠せないでいた

カルーアの母親である【カシス】は既に亡くなっているが、彼女の姉であるホルンが自ら考えて、妹の娘に付けた名前が【モスコー】であると言っている

もちろんホルンの目は至って真面目で、嘘や冗談を言ってる目には見えなかった。ホルンの性格を考えれば余計に、彼女がこんな場で冗談を言うなど有り得ないのだが…
これはどういう事なのだろうか?



続く
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