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夢忘れ編
憎悪の炎
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【ファスク城周辺】
寿命が近づきながらも老いた身体に鞭(ムチ)を打ち戦い続ける師匠の為に、天使族のサーシャを封じ込めている、持っているだけで高い回復効果を得られる魔法石を握りしめたマーマルが【飛行推進(レベチューン)】の魔法で、高速移動して味方のファスク城の上空付近に短時間でやって来た
「んっ!?アレは報告のあった第2軍の兵士たちだね。かなり数は減らされたようだけど、何とか帰還できたようだね…それで、お師匠様は?」
ボロボロになりながらも帰還した第2軍を眼下に発見したマーマル。だが、先ほど隠れ家を出発したシャオシュウの姿が見付からない。魔法探知を広域に展開し師匠を探すマーマル
「あっ!アッチに人間が50人ほど密集している?その中央の者から微弱な魔力を感じる…まさか!お師匠様が囲まれているのか!?」
人間たちに囲まれた魔法使いを探知したマーマルは【飛行推進(レベチューン)】でまたしても最大速度を振り絞り、その場所に急行した
【取り囲まれた魔女】
開かれた平地で1人の魔女をグルりと取り囲む人間の兵士たちが居る
「流石に憎悪の魔女だな。しぶといな…」
「だが!もう強い魔法を使うだけの魔力は無いようだな。観念しろ!」
「貴様を殺して両親の仇を討つ!」
「かひゅー、はひゅー…ワシもここまでなのか…」
最初のうちこそ、炎魔法などで攻撃も防御もしていたシャオシュウだったが…スグに魔力の底が近づき、もはやガードするのもままならなくなり、全身に切り傷を負い始めた
「お師匠様ー!!!」
全速で飛行してくるマーマルだが…数秒程度の差で、師匠を救うのは間に合わない位置関係だ
【ヒルドルブ砦】
僅かの差で【憎悪の魔女】の救援が間に合いそうにない10分ほど前のヒルドルブ砦では先ほどまで、事故とはいえ裸を見たヒイロに結婚を迫っていたホルンだったが…
自分の妹の娘の名前【モスコー】と呼んだ時、その娘としか思えない容姿のカルーアは「誰の事?」とキョトンとした顔を浮かべた。もちろんアルバートファミリー全員が、なんの事だか理解出来ず戸惑っている
「どうしてっ?カシスの娘に私が【モスコー】と名付けたのに、どうして貴様は【カルーア】なんだ!?」
「どうしてと言われても…わたしは母さんから【カルーア】と名付けられたんだよ…」
ものすごい剣幕で話してくるホルン。その気迫から彼女の言い分に疑う余地も無さそうだが…
「ねぇ、カルーア。その【モスコー】って名前に聞き覚えは無いのぉ?」
「うーん…いつか、何処かで聞いたことがあるような気もするんだけど…思い出せないんだ」
戸惑っているカルーアに優しく問い掛けたアリスだが、やはりカルーアはハッキリ思い出せないようだ。その時、ホルンは何かを思い出した
「あっ!まさか…貴様は、モスコーが山林の奥で見付けペットにしていたスライムなのか?…スライムには極々稀に相手を捕食し、相手の姿を真似て生きる個体もいると聞くが…」
「Σ(゜□゜)ああーっ!!」
そのホルンの話を聞いてアルバートファミリー全員が大きな声を上げた!進化型超人類は誰かの遺伝子を取り込み、その者のデータを元に更に経験値を上書きして成長していく種族だ
この地に降り立った古代人が、地球よりも遥かに厳しいこの星の環境を克服し、この星での覇権を握る為に遺伝子操作して生み出された種族である
「少し良いですか?ホルンさん…今はイシス王国に身を寄せている【リキュール】という子が居ます。彼女はカルーアの遺伝子を取り込んだ姿に、5年ほど年齢を足した姿で生活していると聞きました」
「はぁはぁ…その女がどうしたと言うのだ?」
「カルーアもその子と同じ進化型超人類なんです。ならばカルーアも今の姿になる為に、遺伝子を組み込ませてもらったオリジナルの存在が居たハズなんです。俺の予想ですが…【モスコー】という子はカルーアがコピーする対象に選んだ子なのではないでしょうか?」
進化型超人類は、優れた個体を見付けるとその者の姿と能力をコピーして固体化する。1生に1度しかできない故に慎重に相手を選ぶらしいが…
「では、そこのカルーアが固体化する為に選んだ優れた個体というのがモスコーだと言うのか?」
「わたしは生まれたての頃の記憶をハッキリとは覚えていませんけど…自分と似た子と居た記憶は薄らあります…」
カルーアは元々エルドラド王国に居たのだが…
ミオランダの反逆で王国が滅亡する大事件が起きた時に瀕死の重症を負って逃げ延び、そこから約35年後にホルンたちの育った【エルフの隠れ里】に偶然辿り着いたのだ
その時の大怪我のせいで、カルーアは【エルフの隠れ里】に居た頃の記憶を鮮明に思い出せないようだ
超人類という存在の説明を受けたホルンが、1つの最悪のシナリオに辿り着いた
「…ま、まさかとは思うが…貴様がモスコーを殺したのか?あまつさえ、カシスまでも手に掛けたのではないだろうなぁ!?」
彼女たちが育ったエルフの隠れ里が襲撃される前にマナティート王国に着任したホルンは、誰が自分の妹とその娘を殺したのか?分からないで生きてきた
ホルンが最後に見たモスコーという少女と生き写しのような姿をしているカルーアが、その2人を手に掛けたのでは?と疑うホルン
普段は冷静沈着な【天才軍師】と言われる彼女も、長年謎だった自分の妹とその娘の死因がすぐソバまで迫ったので、彼女らしくもなく感情が荒ぶっていた
「待ってください!わたしは惑星神エリスア様に誓って2人を殺したりなんかしてません!」
殺害を疑われていると理解したカルーアは、必死に自分の無実を証明しようとする。その時…
「お願いホルンさん、聞いてくださーい!カルーアはイシス王国の防衛戦でぇ、古代兵器のエネルギーに使われていたお母さんを助けたのぉ!アタシも一緒に戦ってぇ、カルーアのお母さんを助けたのぉ!」
アリスは、妹のカルーアが2人を殺した犯人なのか?と言われているのに我慢が出来ずに割って入ってきた
「何!?カシスを助けたのか?生きているのか?カシスは…」
「いえ、イシスの勇者アドルさんとしばらく共に生活していたそうですが…数日後には彼の横で息を引き取ったと聞いています」
カルーアたちがイシス王国でカシスを助けたのは事実だが、ぬか喜びをさせない為に今はもう生きていない事を迅速に説明したヒイロ
「……そうか。どの道カシスは死んでいるのか………カルーアと言ったか?カシスはモスコーの遺伝子を取り込んだ貴様を、娘のように育ててくれたのか?どうなんだっ!?」
ホルンの頭の中は、カルーアが妹家族に害を成した存在なのか?それとも彼女たちから愛された存在なのか?ソコに焦点が当てられていた
この地で出会ったホルンとカルーア。この出会いは2人にとって何をもたらすのか?
続く
寿命が近づきながらも老いた身体に鞭(ムチ)を打ち戦い続ける師匠の為に、天使族のサーシャを封じ込めている、持っているだけで高い回復効果を得られる魔法石を握りしめたマーマルが【飛行推進(レベチューン)】の魔法で、高速移動して味方のファスク城の上空付近に短時間でやって来た
「んっ!?アレは報告のあった第2軍の兵士たちだね。かなり数は減らされたようだけど、何とか帰還できたようだね…それで、お師匠様は?」
ボロボロになりながらも帰還した第2軍を眼下に発見したマーマル。だが、先ほど隠れ家を出発したシャオシュウの姿が見付からない。魔法探知を広域に展開し師匠を探すマーマル
「あっ!アッチに人間が50人ほど密集している?その中央の者から微弱な魔力を感じる…まさか!お師匠様が囲まれているのか!?」
人間たちに囲まれた魔法使いを探知したマーマルは【飛行推進(レベチューン)】でまたしても最大速度を振り絞り、その場所に急行した
【取り囲まれた魔女】
開かれた平地で1人の魔女をグルりと取り囲む人間の兵士たちが居る
「流石に憎悪の魔女だな。しぶといな…」
「だが!もう強い魔法を使うだけの魔力は無いようだな。観念しろ!」
「貴様を殺して両親の仇を討つ!」
「かひゅー、はひゅー…ワシもここまでなのか…」
最初のうちこそ、炎魔法などで攻撃も防御もしていたシャオシュウだったが…スグに魔力の底が近づき、もはやガードするのもままならなくなり、全身に切り傷を負い始めた
「お師匠様ー!!!」
全速で飛行してくるマーマルだが…数秒程度の差で、師匠を救うのは間に合わない位置関係だ
【ヒルドルブ砦】
僅かの差で【憎悪の魔女】の救援が間に合いそうにない10分ほど前のヒルドルブ砦では先ほどまで、事故とはいえ裸を見たヒイロに結婚を迫っていたホルンだったが…
自分の妹の娘の名前【モスコー】と呼んだ時、その娘としか思えない容姿のカルーアは「誰の事?」とキョトンとした顔を浮かべた。もちろんアルバートファミリー全員が、なんの事だか理解出来ず戸惑っている
「どうしてっ?カシスの娘に私が【モスコー】と名付けたのに、どうして貴様は【カルーア】なんだ!?」
「どうしてと言われても…わたしは母さんから【カルーア】と名付けられたんだよ…」
ものすごい剣幕で話してくるホルン。その気迫から彼女の言い分に疑う余地も無さそうだが…
「ねぇ、カルーア。その【モスコー】って名前に聞き覚えは無いのぉ?」
「うーん…いつか、何処かで聞いたことがあるような気もするんだけど…思い出せないんだ」
戸惑っているカルーアに優しく問い掛けたアリスだが、やはりカルーアはハッキリ思い出せないようだ。その時、ホルンは何かを思い出した
「あっ!まさか…貴様は、モスコーが山林の奥で見付けペットにしていたスライムなのか?…スライムには極々稀に相手を捕食し、相手の姿を真似て生きる個体もいると聞くが…」
「Σ(゜□゜)ああーっ!!」
そのホルンの話を聞いてアルバートファミリー全員が大きな声を上げた!進化型超人類は誰かの遺伝子を取り込み、その者のデータを元に更に経験値を上書きして成長していく種族だ
この地に降り立った古代人が、地球よりも遥かに厳しいこの星の環境を克服し、この星での覇権を握る為に遺伝子操作して生み出された種族である
「少し良いですか?ホルンさん…今はイシス王国に身を寄せている【リキュール】という子が居ます。彼女はカルーアの遺伝子を取り込んだ姿に、5年ほど年齢を足した姿で生活していると聞きました」
「はぁはぁ…その女がどうしたと言うのだ?」
「カルーアもその子と同じ進化型超人類なんです。ならばカルーアも今の姿になる為に、遺伝子を組み込ませてもらったオリジナルの存在が居たハズなんです。俺の予想ですが…【モスコー】という子はカルーアがコピーする対象に選んだ子なのではないでしょうか?」
進化型超人類は、優れた個体を見付けるとその者の姿と能力をコピーして固体化する。1生に1度しかできない故に慎重に相手を選ぶらしいが…
「では、そこのカルーアが固体化する為に選んだ優れた個体というのがモスコーだと言うのか?」
「わたしは生まれたての頃の記憶をハッキリとは覚えていませんけど…自分と似た子と居た記憶は薄らあります…」
カルーアは元々エルドラド王国に居たのだが…
ミオランダの反逆で王国が滅亡する大事件が起きた時に瀕死の重症を負って逃げ延び、そこから約35年後にホルンたちの育った【エルフの隠れ里】に偶然辿り着いたのだ
その時の大怪我のせいで、カルーアは【エルフの隠れ里】に居た頃の記憶を鮮明に思い出せないようだ
超人類という存在の説明を受けたホルンが、1つの最悪のシナリオに辿り着いた
「…ま、まさかとは思うが…貴様がモスコーを殺したのか?あまつさえ、カシスまでも手に掛けたのではないだろうなぁ!?」
彼女たちが育ったエルフの隠れ里が襲撃される前にマナティート王国に着任したホルンは、誰が自分の妹とその娘を殺したのか?分からないで生きてきた
ホルンが最後に見たモスコーという少女と生き写しのような姿をしているカルーアが、その2人を手に掛けたのでは?と疑うホルン
普段は冷静沈着な【天才軍師】と言われる彼女も、長年謎だった自分の妹とその娘の死因がすぐソバまで迫ったので、彼女らしくもなく感情が荒ぶっていた
「待ってください!わたしは惑星神エリスア様に誓って2人を殺したりなんかしてません!」
殺害を疑われていると理解したカルーアは、必死に自分の無実を証明しようとする。その時…
「お願いホルンさん、聞いてくださーい!カルーアはイシス王国の防衛戦でぇ、古代兵器のエネルギーに使われていたお母さんを助けたのぉ!アタシも一緒に戦ってぇ、カルーアのお母さんを助けたのぉ!」
アリスは、妹のカルーアが2人を殺した犯人なのか?と言われているのに我慢が出来ずに割って入ってきた
「何!?カシスを助けたのか?生きているのか?カシスは…」
「いえ、イシスの勇者アドルさんとしばらく共に生活していたそうですが…数日後には彼の横で息を引き取ったと聞いています」
カルーアたちがイシス王国でカシスを助けたのは事実だが、ぬか喜びをさせない為に今はもう生きていない事を迅速に説明したヒイロ
「……そうか。どの道カシスは死んでいるのか………カルーアと言ったか?カシスはモスコーの遺伝子を取り込んだ貴様を、娘のように育ててくれたのか?どうなんだっ!?」
ホルンの頭の中は、カルーアが妹家族に害を成した存在なのか?それとも彼女たちから愛された存在なのか?ソコに焦点が当てられていた
この地で出会ったホルンとカルーア。この出会いは2人にとって何をもたらすのか?
続く
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