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夢忘れ編
魔女としての器
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【アレクス城 大広間】
明日の午前中に時期魔王メイビー様の誕生祭が行われることなど全く知らなかった、ブルージュ村の副村長を務めている【ミアナ・ラドシャ】が突然来訪した
「貴女が私の親友 徳川有栖の唯一の教え子なのね?彼女から貴女が素晴らしい素質を持った魔法使いだと聞いているわ」
予想外の来訪者に、その場のほとんどの者がキョトンとしている中、魔王専属魔女であるフュールが彼女に声を掛けた
「は、はい。私もフュール様の噂は私のお師匠様から伺っております。突然の来訪申し訳ありません…すみませんが師匠。少し宜しいですか?」
「どうしたのミアナ、そんなに慌てて…良くない事でもあったの?」
「すみません。師匠をお借りします」
そう言うとミアナは有栖の手を取り大広間から退出して行った
【数分後】
「ごめんなさい、待たせちゃったわね」
「何かあったのか消去の魔女?」
使用されていない部屋で、2人だけで話をした有栖とミアナが大広間に戻ってきた。この城の主であるアレクスが2人に問い掛けた
「…ミアナに副村長をしてもらっている村で厄介な事が起きたらしいの…その…彼女だけでは事態の収集が難しいらしいのよ…」
「ふぅん…それは大変ね。で、有栖は今からその村に向かうのかしら?」
フュールは有栖に問い掛けた。一応、明日の午前中にメイビー様の誕生祭が控えている今、小事でこの場から去るのはメイビー様にとって大変失礼な事になるので「理由が有るのなら自分の権限で許可してあげるわよ」という気遣いではあるのだが…
「…そ、そうなのよ。かなり大変な事になってるらしいから…メイビー様さえ宜しければ抜けさせていただきたいわ。もちろん、明日の誕生祭が始まる前には戻るつもりよ…」
フュールは有栖の言い様に不信感を募らせていた。常日頃から自分の判断と行動に自信を持っている有栖が、ここまで言い淀んで話すことなど滅多に見られないからだ
「ねぇ有栖。そんなに大変な事態なのなら…私の弟子のエーデも付いて行かせましょうか?」
「えっ!?エーデちゃんを?…あ、それは凄く有り難いんだけど…でも…私1人が行けば済む事だと思うから…」
いつもと様子が違う徳川 有栖の姿はフュールだけでなく、モルガーナ、ディー・アモン達にも違和感を感じさせるものだった
「どうしたの有栖?村の一大事なのでしょ?…私はメイビー様の采配でこれからマナティートに向かわなければならないから、貴女たちの力添えは出来ないけど…エーデはまだ未熟でも一応、私の教え子なのよ。全くの役たたずではないわよ?」
「フュールお姉さま…」
師匠であるフュールから良い評価を受けたエーデは普通に喜んでいるが…有栖からすれば非常に困った提案である。むしろ嫌がらせを受けているともとれる提案だ
「どうしたの?私に知られると何かマズイ事でもあるのかしら?…そもそも、その子が副村長をしている村って何処にあるのかしら?」
「あの…それは…他種族で構成されている村だから…あまり知らない人に入って欲しくないというか…」
「何を言ってるの?元々、私たちが属する魔族側は他種族で構成されているじゃないの?…それとも何?エーデでは話にならないとでも言うのかしら?」
「いや、それは…」
有栖は本気で困っていた。確かに、見知らぬ者をなるべく立ち入らせたくないのだが…その最大の理由が、元魔王ザッドが彼の妃であったキウ・ケディータの身体を借りて、今でも存命である事を世に知らしめる訳にイカないからだ
前魔王の生存。それは時期魔王メイビーの不要論に結び付きかねないし最悪、魔族側を2分化して争わせる火種にもなりかねないから、なのだが…その時!
「えぇ、その通りですフュール様。エーデさんには大変申し訳ありませんが…私でもどうにもならなかった事態に、貴女に来てもらっても何か役に立ってもらえるとは到底思えません!」
「何ですって!?」
「えっ!?」
「ほおぉ…」
「なのほどの…」
「ザワザワ…」
「ちょっとミアナ!?」
いくらエーデが魔女の中でも、まだまだ未熟者だというのが周知の事実であったとしても…その師匠は魔王専属の魔女、という魔女の中で最重要ポストにいるフュールなのだ
その弟子に来てもらっても役には立たない!など、例え事実であっても軽率に口には出来ないのだ。その事は、その発言に慌てている有栖を見れば良く理解できる。周りの者たちも、ミアナの大胆な発言に驚かされている。が…
「お待ちくださいミアナさん…」
「何でしょうか?」
「いくら貴女が最強の魔女と言われる有栖様の唯一の弟子であったとしても、このエーデの力量を図らないで「役たたず」と言われるのは心外です!」
初めて会った「とある村の副村長」という肩書きのミアナから、軽く格下扱いされて黙っていては自分の師であるフュールの名に泥を塗る行為を認めてしまうので、エーデは憤慨しミアナを睨み付けた!
「ごめんなさいね。でも、本当に緊急事態なの。私の師匠である有栖様にさえ来て頂ければそれで良いのです」
あくまでもミアナは、有栖だけで十分だという意見を崩さなかった
「認識阻害(ハードゥーン)を展開しました。2人の魔力を皆の前で示し、お互いのチカラの程を魅せ合うのはどうですか?メイビー様は、どう思われますか?」
「ふむ。先程の料理も素晴らしかったが…その提案も良いな。ワラワを楽しませる余興として、互いの魔力を魅せ合うが良いぞ♪」
【豊穣の魔女】モル・ガーナなりの配慮で、お互い名のある魔女の弟子である2人の険悪な空気を、実にシンプルに解決できる方法が提案された
「魅せてあげなさいエーデ。貴女は最早お飾りの魔女ではないというところをね」
「分かりましたお師匠さま…ハアァァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」
エーデはグッとお腹にチカラを溜めるかのような姿勢を取り、客人の前だからと最小限に抑えていた持てる魔力を解放した
「ほおぉ…」
「これはこれは…」
不死化する前は蝶よ花よ。と育てられていた公爵家のお嬢様だったエーデは「フュールの情け」で拾われた女の子と思われていた。ましてや、商業都市の13歳の女エルフに2度も敗北を喫している話が伝わっていたので、尚更過小評価されていたのだが…
「1人前の魔女として成長していたのね」
「ありがとうございます有栖様」
最強の魔女と言われる有栖から褒められたことを素直に喜ぶエーデだったが…
「それでは私も良いでしょうか?お師匠様…」
「あ、うん。城を吹き飛ばさないようにね…」
「はぁぁぁぁァァァァァァァァ!!」
ゴバァァァ!!
「何と!?」
「こ、これは!?」
有栖から許可が降りたミアナが静かな咆哮と共に魔力を解放し始めた途端…大広間の中心にイキナリ台風が現れたかのように、大した魔力を持たない城の使用人たちでさえも視認出来るほどのエネルギーが、大広間に突然姿を現した!
「グへぇ!」
「ちょっと大丈夫?」
凄まじい魔力量に充てられて、部屋の壁に打ち付けられた優輝に手を差し伸べるミクイ
「ちょっと…どうしてフォレスティア様まで吹き飛ばされているのですか…まったく…」
「いや~あはは。油断していたわ(汗)」
優輝と同じ様に吹き飛ばされたフォレスティアを、発生させた魔力壁をスポンジの様に生成して彼女が壁に激突するのを防いだモル・ガーナ
「ん~大丈夫でしたかお嬢さん?」
「あ、有難うございますディー様…」
城の使用人(女だけ)を素早く壁の衝突から救ったディー・アモン
「いやいやいやいや、それにしてもスンバラシイ魔力ですなぁ♪エーデちゃんの魔力も立派なモノでしたがぁ…ミアナさんのは予想のはるか上でしたねぇ♪」
「くっ…」
ディー・アモンは一切の忖度もなく感想を述べた。エーデには「ちゃん」呼びで、ミアナには「さん」呼びをした。この事からもエーデとミアナの力量に圧倒的な差がある事は、本人も認めざるを得ない事実。またしても歳の近い女に敗北を刻まれたエーデは、目に涙を浮かべ身体を震わせていた
「パチパチパチ」
「良い余興であったぞ2人とも」
優輝と同じくミアナの魔力に吹き飛ばされていたメイビーだが、彼女はフュールにソッと抱きとめられた姿で拍手をしていた
「そう悲観するでない不死の魔女よ。ワラワの目から見てもソナタは1人前と言えよう。しかし…相手が悪過ぎたな。ミアナとやらは、仮に消去の魔力から教えを受けていなくてもバケモノだったろうよ。ただソレだけの事だ」
「有難うございますメイビー様!」
明日の誕生祭で正式に魔王と認められる予定のメイビーから、素直に称賛されたことを喜ぶミアナ
「さて徳川有栖よ。本来なら誕生祭の前夜に別の予定で出掛けるなど許可し難いのだが、貴様は先程の料理と年齢促進魔法を掛けてもらった功績があるからな、特別に外出を許すぞ。ただし、ワラワの誕生祭までには戻るのだぞ?」
「寛大な処置を有難うございますメイビー様」
立派な言葉を送ったメイビーだが、いくら魔王の器とは言え2歳児の彼女が言える簡単な言葉ではなかった。これは、弟子対決でも負けてしまったフュールが、有栖とその弟子への称賛としてテレパシーでメイビーに言わせた言葉だった
「そこでだミアナよ。貴様には、最古の魔女シャオシュウと共にマナティート地方の我が軍の増援に向かうことを命令する」
「!!(๑º ロ º๑)えっ!?私がですかっ?」
「ソナタは正式に魔族の一員とは認められておらぬ様だが…消去の魔女の弟子ならば…時には我が軍の為に魔力(チカラ)を使うのは当然と言えるよな?」
「…は、はい。分かりました…」
周りの魔法に長けた者はモチロン理解していた。今の言葉もフュールがテレパシーで、メイビーに言わせた言葉だと。つまりは、マナティートの戦争に支援参加するこの機に同席させ、何らかの情報をミアナから知り得よう!というフュールの魂胆だ
「それじゃあ、くれぐれもよろしくお願いするわよミアナ!」
「は、はい。お師匠様の名を汚さぬように…全力を尽くします…」
はたから見たら「師匠の名に恥じない働きをしてきなさい」と弟子が言われているようにしか見えないのだが…本当の意味は「前魔王ザッドが存命であることを絶対に悟られないように注意しなさい!」ということだった
「それではっ!渇望の魔女フュール。不死軍団の長ディー・アモン。有栖の弟子ミアナ・ラドシャよ、劣勢に苦しむマナティートの味方をシャオシュウと共に勝利の導くのだぞっ!」
「ははぁ…」
「承知しました」
「仕方ありませんねぇ…」
「は、はい…」
4人4様の返事をし彼らは出発した。月の映える夜、惑星神エリスアに導かれた【ヘルメスの三姉妹】が居るマナティートで、どんなドラマが待ち受けているのだろうか?
続く
明日の午前中に時期魔王メイビー様の誕生祭が行われることなど全く知らなかった、ブルージュ村の副村長を務めている【ミアナ・ラドシャ】が突然来訪した
「貴女が私の親友 徳川有栖の唯一の教え子なのね?彼女から貴女が素晴らしい素質を持った魔法使いだと聞いているわ」
予想外の来訪者に、その場のほとんどの者がキョトンとしている中、魔王専属魔女であるフュールが彼女に声を掛けた
「は、はい。私もフュール様の噂は私のお師匠様から伺っております。突然の来訪申し訳ありません…すみませんが師匠。少し宜しいですか?」
「どうしたのミアナ、そんなに慌てて…良くない事でもあったの?」
「すみません。師匠をお借りします」
そう言うとミアナは有栖の手を取り大広間から退出して行った
【数分後】
「ごめんなさい、待たせちゃったわね」
「何かあったのか消去の魔女?」
使用されていない部屋で、2人だけで話をした有栖とミアナが大広間に戻ってきた。この城の主であるアレクスが2人に問い掛けた
「…ミアナに副村長をしてもらっている村で厄介な事が起きたらしいの…その…彼女だけでは事態の収集が難しいらしいのよ…」
「ふぅん…それは大変ね。で、有栖は今からその村に向かうのかしら?」
フュールは有栖に問い掛けた。一応、明日の午前中にメイビー様の誕生祭が控えている今、小事でこの場から去るのはメイビー様にとって大変失礼な事になるので「理由が有るのなら自分の権限で許可してあげるわよ」という気遣いではあるのだが…
「…そ、そうなのよ。かなり大変な事になってるらしいから…メイビー様さえ宜しければ抜けさせていただきたいわ。もちろん、明日の誕生祭が始まる前には戻るつもりよ…」
フュールは有栖の言い様に不信感を募らせていた。常日頃から自分の判断と行動に自信を持っている有栖が、ここまで言い淀んで話すことなど滅多に見られないからだ
「ねぇ有栖。そんなに大変な事態なのなら…私の弟子のエーデも付いて行かせましょうか?」
「えっ!?エーデちゃんを?…あ、それは凄く有り難いんだけど…でも…私1人が行けば済む事だと思うから…」
いつもと様子が違う徳川 有栖の姿はフュールだけでなく、モルガーナ、ディー・アモン達にも違和感を感じさせるものだった
「どうしたの有栖?村の一大事なのでしょ?…私はメイビー様の采配でこれからマナティートに向かわなければならないから、貴女たちの力添えは出来ないけど…エーデはまだ未熟でも一応、私の教え子なのよ。全くの役たたずではないわよ?」
「フュールお姉さま…」
師匠であるフュールから良い評価を受けたエーデは普通に喜んでいるが…有栖からすれば非常に困った提案である。むしろ嫌がらせを受けているともとれる提案だ
「どうしたの?私に知られると何かマズイ事でもあるのかしら?…そもそも、その子が副村長をしている村って何処にあるのかしら?」
「あの…それは…他種族で構成されている村だから…あまり知らない人に入って欲しくないというか…」
「何を言ってるの?元々、私たちが属する魔族側は他種族で構成されているじゃないの?…それとも何?エーデでは話にならないとでも言うのかしら?」
「いや、それは…」
有栖は本気で困っていた。確かに、見知らぬ者をなるべく立ち入らせたくないのだが…その最大の理由が、元魔王ザッドが彼の妃であったキウ・ケディータの身体を借りて、今でも存命である事を世に知らしめる訳にイカないからだ
前魔王の生存。それは時期魔王メイビーの不要論に結び付きかねないし最悪、魔族側を2分化して争わせる火種にもなりかねないから、なのだが…その時!
「えぇ、その通りですフュール様。エーデさんには大変申し訳ありませんが…私でもどうにもならなかった事態に、貴女に来てもらっても何か役に立ってもらえるとは到底思えません!」
「何ですって!?」
「えっ!?」
「ほおぉ…」
「なのほどの…」
「ザワザワ…」
「ちょっとミアナ!?」
いくらエーデが魔女の中でも、まだまだ未熟者だというのが周知の事実であったとしても…その師匠は魔王専属の魔女、という魔女の中で最重要ポストにいるフュールなのだ
その弟子に来てもらっても役には立たない!など、例え事実であっても軽率に口には出来ないのだ。その事は、その発言に慌てている有栖を見れば良く理解できる。周りの者たちも、ミアナの大胆な発言に驚かされている。が…
「お待ちくださいミアナさん…」
「何でしょうか?」
「いくら貴女が最強の魔女と言われる有栖様の唯一の弟子であったとしても、このエーデの力量を図らないで「役たたず」と言われるのは心外です!」
初めて会った「とある村の副村長」という肩書きのミアナから、軽く格下扱いされて黙っていては自分の師であるフュールの名に泥を塗る行為を認めてしまうので、エーデは憤慨しミアナを睨み付けた!
「ごめんなさいね。でも、本当に緊急事態なの。私の師匠である有栖様にさえ来て頂ければそれで良いのです」
あくまでもミアナは、有栖だけで十分だという意見を崩さなかった
「認識阻害(ハードゥーン)を展開しました。2人の魔力を皆の前で示し、お互いのチカラの程を魅せ合うのはどうですか?メイビー様は、どう思われますか?」
「ふむ。先程の料理も素晴らしかったが…その提案も良いな。ワラワを楽しませる余興として、互いの魔力を魅せ合うが良いぞ♪」
【豊穣の魔女】モル・ガーナなりの配慮で、お互い名のある魔女の弟子である2人の険悪な空気を、実にシンプルに解決できる方法が提案された
「魅せてあげなさいエーデ。貴女は最早お飾りの魔女ではないというところをね」
「分かりましたお師匠さま…ハアァァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」
エーデはグッとお腹にチカラを溜めるかのような姿勢を取り、客人の前だからと最小限に抑えていた持てる魔力を解放した
「ほおぉ…」
「これはこれは…」
不死化する前は蝶よ花よ。と育てられていた公爵家のお嬢様だったエーデは「フュールの情け」で拾われた女の子と思われていた。ましてや、商業都市の13歳の女エルフに2度も敗北を喫している話が伝わっていたので、尚更過小評価されていたのだが…
「1人前の魔女として成長していたのね」
「ありがとうございます有栖様」
最強の魔女と言われる有栖から褒められたことを素直に喜ぶエーデだったが…
「それでは私も良いでしょうか?お師匠様…」
「あ、うん。城を吹き飛ばさないようにね…」
「はぁぁぁぁァァァァァァァァ!!」
ゴバァァァ!!
「何と!?」
「こ、これは!?」
有栖から許可が降りたミアナが静かな咆哮と共に魔力を解放し始めた途端…大広間の中心にイキナリ台風が現れたかのように、大した魔力を持たない城の使用人たちでさえも視認出来るほどのエネルギーが、大広間に突然姿を現した!
「グへぇ!」
「ちょっと大丈夫?」
凄まじい魔力量に充てられて、部屋の壁に打ち付けられた優輝に手を差し伸べるミクイ
「ちょっと…どうしてフォレスティア様まで吹き飛ばされているのですか…まったく…」
「いや~あはは。油断していたわ(汗)」
優輝と同じ様に吹き飛ばされたフォレスティアを、発生させた魔力壁をスポンジの様に生成して彼女が壁に激突するのを防いだモル・ガーナ
「ん~大丈夫でしたかお嬢さん?」
「あ、有難うございますディー様…」
城の使用人(女だけ)を素早く壁の衝突から救ったディー・アモン
「いやいやいやいや、それにしてもスンバラシイ魔力ですなぁ♪エーデちゃんの魔力も立派なモノでしたがぁ…ミアナさんのは予想のはるか上でしたねぇ♪」
「くっ…」
ディー・アモンは一切の忖度もなく感想を述べた。エーデには「ちゃん」呼びで、ミアナには「さん」呼びをした。この事からもエーデとミアナの力量に圧倒的な差がある事は、本人も認めざるを得ない事実。またしても歳の近い女に敗北を刻まれたエーデは、目に涙を浮かべ身体を震わせていた
「パチパチパチ」
「良い余興であったぞ2人とも」
優輝と同じくミアナの魔力に吹き飛ばされていたメイビーだが、彼女はフュールにソッと抱きとめられた姿で拍手をしていた
「そう悲観するでない不死の魔女よ。ワラワの目から見てもソナタは1人前と言えよう。しかし…相手が悪過ぎたな。ミアナとやらは、仮に消去の魔力から教えを受けていなくてもバケモノだったろうよ。ただソレだけの事だ」
「有難うございますメイビー様!」
明日の誕生祭で正式に魔王と認められる予定のメイビーから、素直に称賛されたことを喜ぶミアナ
「さて徳川有栖よ。本来なら誕生祭の前夜に別の予定で出掛けるなど許可し難いのだが、貴様は先程の料理と年齢促進魔法を掛けてもらった功績があるからな、特別に外出を許すぞ。ただし、ワラワの誕生祭までには戻るのだぞ?」
「寛大な処置を有難うございますメイビー様」
立派な言葉を送ったメイビーだが、いくら魔王の器とは言え2歳児の彼女が言える簡単な言葉ではなかった。これは、弟子対決でも負けてしまったフュールが、有栖とその弟子への称賛としてテレパシーでメイビーに言わせた言葉だった
「そこでだミアナよ。貴様には、最古の魔女シャオシュウと共にマナティート地方の我が軍の増援に向かうことを命令する」
「!!(๑º ロ º๑)えっ!?私がですかっ?」
「ソナタは正式に魔族の一員とは認められておらぬ様だが…消去の魔女の弟子ならば…時には我が軍の為に魔力(チカラ)を使うのは当然と言えるよな?」
「…は、はい。分かりました…」
周りの魔法に長けた者はモチロン理解していた。今の言葉もフュールがテレパシーで、メイビーに言わせた言葉だと。つまりは、マナティートの戦争に支援参加するこの機に同席させ、何らかの情報をミアナから知り得よう!というフュールの魂胆だ
「それじゃあ、くれぐれもよろしくお願いするわよミアナ!」
「は、はい。お師匠様の名を汚さぬように…全力を尽くします…」
はたから見たら「師匠の名に恥じない働きをしてきなさい」と弟子が言われているようにしか見えないのだが…本当の意味は「前魔王ザッドが存命であることを絶対に悟られないように注意しなさい!」ということだった
「それではっ!渇望の魔女フュール。不死軍団の長ディー・アモン。有栖の弟子ミアナ・ラドシャよ、劣勢に苦しむマナティートの味方をシャオシュウと共に勝利の導くのだぞっ!」
「ははぁ…」
「承知しました」
「仕方ありませんねぇ…」
「は、はい…」
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