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夢忘れ編
最強の援軍
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【マナティート地方東側上空】
地球の月よりも遥かに小さい惑星エリスアの衛星が、日中この星を照らす恒星の明かりを反射させていて、地球で言うところの月夜の明かりだけしか光源の無い真っ暗闇の中を飛ぶ【ゾンビ・ワイバーン】
その背中に死竜(ゾンビ・ワイバーン)の手綱を取るディー・アモン。その彼の背中に両手を回して抱きつき、まるで彼女の様に背後に座っているシャオシュウ
その上方に有栖の愛弟子【ミアナ・ラドシャ】
その下方に渇望の魔女【フュール・アシェスタ】が、自分の魔法で飛行している布陣でマナティートを目指していた
「んぅ~たった3人の援軍とは言えですねぇ…これほど豪華なメンツが結集して移動していてはですよぉ…」
「分かっているディー。私が既に【認識阻害(ハードゥーン)】を展開している。つまり、私に肩を並べられるほどの魔力を有している者にしか我々を探知出来ない状態よ。安心しなさい」
「流石は魔王専属の魔女様でぇすねぇ~♪不死軍団の長と呼ばれている吾輩も、それなりに魔法の心得はあるのでぇすが…御三方と比べてしまうと見劣りしてしまうのは~致し方あ~りませんねぇ(笑)」
魔王専属の魔女であるフュールは単に魔力量が多いだけでなく、高度な技術をも持ち合わせているので、魔導士以上の魔力を持つディーでさえも察知出来ないほどの【認識阻害(ハードゥーン)】を既に展開していた
「……それよりもだ。ミアナと言ったな?」
「は、はい!(ドキッ)」
「先程アレクス城で魅せてもらった貴女の魔力、見事だったわ。流石にあの有栖が手放しで褒めるだけのことはあるわね…」
フュールはミアナを褒めてはいるが…自分の愛弟子であるエーデを見下すような発言をした彼女のことを、快くは思っていないようだ。その事はミアナを見つめる彼女の視線の厳しさから伝わってきている
「あはは…すみませんでした。その…どうしても師匠の助けが必要で…もっと言葉を選ぶべきだったと反省しております…」
「……良いのよ。貴女は私の親友である有栖が大切にしている唯一のお弟子さんですもの…けど、貴女が単に魔族の一員でしかなかったのなら…あの場で貴女を焼き尽くしていたかもしれないから…今後は気を付けてちょうだいね…」
「は、はい!肝に銘じておきますっ!!」
流石にフュールは魔王を守護する魔女だけあり、怒った彼女の眼光はミアナでさえも強い恐怖を感じるモノだった
「フュールよ。それくらいにしておいてやらんか…【消去の魔女】徳川有栖にも、例え親友の貴様にでも言えぬ秘密の1つや2つはあろうよ。このミアナは、彼女を庇う為に敢えてああ言ったまでじゃろうよ」
「シャオシュウ様……申し訳ありません。このフュール、少々頭に血が上りすぎていたようです…ミアナ、キツく言ってすみませんてましたね」
「あ、はい。大丈夫です…私も失礼なことを言ってしまったのですから…」
フュールがかつて全身全霊をもって仕えていた前魔王の直属の配下であり、自分と並び彼の片翼と言われていたディー・アモンとの突然の再会から機嫌を損ねていたので、彼女にしては珍しく気分を害していたようだ
「……もう良いじゃろう渇望の魔女よ。ソナタは消去の魔女とは仲が良いのじゃろ?」
「は、はい…ですが、それ故に大切そうな何かを秘密にされているのは…納得し難いのです…」
「だからじゃよ。本当に仲が良いからこそ言えぬ事の1つや2つは必ずあるものじゃ。逆にじゃな…仲が良いからこそ信じてやることじゃ。いつか話してくれることもあろうよ」
「…そ、そうですね。分かりました。有栖を信じることに致します」
魔王専属魔女のフュールに意見を出来る者など、ほんのひと握りしかいない。最年長の魔女であるシャオシュウは言葉を選び、彼女をなだめる事でミアナに助け舟を出してくれた
「ところでじゃ。たった3人とは言え、これ程の豪華なメンツに援軍してもらえるのじゃ。今の内にファスク城の者に、この事を伝えておきたいのじゃが…フュールよ長距離通信は可能かの?」
「長距離通信ですか?…う~ん、可能ではありますが…流石にこの距離では敵の魔法探知に察知される危険性がありますね」
「そうか…渇望の魔女とて流石に無理か…」
これだけの顔ぶれが援軍に来ている事を前もって伝えておきたい。と考えたシャオシュウだが…いかに渇望の魔女とは言え難易度が高いようだが…
「【6G通信(ハイパーコミニュケーション)】!」
「むっ?何だソレは?」
自力で飛行していたミアナが動きを止めて手の平に魔力を集中すると…白金に光る球が浮き出てきた
「これは、お師匠様が地球のスマートフォン。というのを模して造られた1対1専用の遠距離通信魔法です」
「ほほぅ。消去の魔女オリジナルの通信魔法かね…興味を覚えるのぅ。して、どんな性能じゃの?」
魔女の中でも最年長のシャオシュウでさえ、ミアナが出した通信魔法に興味を覚えていた
……………………………………………
「抜群の秘匿性を持った個人通信専用魔法ですか…流石、有栖ね。こんな便利な魔法をいくつも創り出すなんて…」
「ですが、私の魔力放出が格段に上がって探知されやすくなっていますので…フュール様が張って頂いてる魔法に上書きをさせていただきますね?…【超認識阻害(ラ・ハードゥーン)】」
高い魔力で生成して【6G通信魔法】のエネルギーを探知されない為に、ミアナはフュールの認識阻害に上書きをした
「な!?…何者なの貴女は?…私の認識阻害を遥かに上回る魔法を…通信魔法を維持したまま重ね張りするなんて…」
「フハハハハ!まぁさに化け物というレベルですねぇ♪人の面倒を見るのが苦手な消去の魔女が、1年間ミッチリ教え込んだのも頷ける性能をしていますねぇ♪」
この4人の中では、魔法に関しては段違いに劣っているディー・アモンでさえも、ミアナの基本能力の高さに呆れ笑いが出ていた
【更に東の空】
闇夜の中を控え気味に魔法飛行している徳川有栖
「良し。ミアナが強めの認識阻害を展開したわね。これで全力で飛行しても、結界内に居るフュールに私の飛行方向を探知されないわね」
前魔王ザッドが嫁の身体に憑依して治めている【ブルージュ村】の位置を悟られたくない有栖は、探知される心配が無くなったのを悟った瞬間に魔力を全力放出して加速した
【ファスク城 オボロの私室】
「…新しい魔王様は、シャオシュウ様の援軍要請に応えてくれたかしら?」
オボロは自分の部屋にツバキを連れて戻り、ベッドに腰掛けた姿勢でシャオシュウの成否を気に掛けていた
「大丈夫ですよオボロ様。シャオシュウ様は魔女の中でも最年長のお方。無下に断られる事はシャシュガニニャ……おほん。流石にないでしょう」
不安になっているオボロを安心させようと言葉を掛けたツバキだったが、またしても長文に舌がついていけずに噛んでいた
「だと良いのですが…」
「私たちはシャオシュウ様が戻られるまでシッカリ態勢を整えて……んっ?シャオシュウ様!?」
(聞こえているかツバキ?ワシは今、アレクス城から3人の援軍をお借りして、後1時間くらいで城に戻れるくらいじゃ)
「どうしたのですかツバキ?いきなり1人事を言い始めて…」
「あ、今シャオシュウ様から通信魔法を受信して話しています。えっ!?渇望の魔女フュール様を始めとした3人の援軍ですか?」
シャオシュウは6G通信の受け手にツバキを選択したようだ。彼女がツバキに魔力指導をしていたこともあり、彼女がかなり高い実力を有しているのを知っていたからだ
(この通信魔法は受け手にかなりの負担が掛かるらしいから、この辺で切るがの…反攻作戦は明日の昼前が良いだろうという話じゃ。ファスク王にその用意と、3人を出迎える準備をしてもらうように頼んでおくのじゃぞ)
「はい、分かりました。シャオシュウ様達もお気を付けて!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ツバキはオボロに、シャオシュウから聞かされた内容を伝えた
「それは本当ですか!?次期魔王メイビー様の計らいで【渇望の魔女】【不死軍団の長】【消去の魔女の愛弟子】の3人が、援軍として間もなく到着されるのですか?」
「は、はい。シャオシュウ様はその様に言われていました」
「なんて素晴らしい実力者ばかりなのでしょう!今度こそ長きに渡る人族との戦争に終止符を打って、メイビー様に良い知らせを届けなくてはなりませんね!…私はお父様にこの事を伝えに向かいますわ」
「わ、私もお供します!」
【謁見の間】
「親愛なるファスク城の兵士諸君!シャオシュウ殿より良き知らせが届いた。最近では古代13獣神の1体マルバァスに消去の魔女と共に戦いトドメを差した魔王様専属の魔女【フュール】殿と、かつてマリニウム城からの大軍を1軍だけで撃退した不死軍団の長【ディー・アモン】殿。更には消去の魔女殿の唯一の弟子である【ミアナ】殿が、我が軍の援軍として間もなく到着なされるそうだ。いずれも1人で1個軍団に匹敵する猛者が3人もだ!
間もなく訪れる最強の援軍のチカラをもって、このマナティートの長きに渡る戦争に、いよいよ終止符が打たれる時が来たのだ!!作戦開始は明日の10時を予定している。明日の決戦に備え、各自シッカリと英気を養っておくのだ!」
「おおー!!!」
「凄いメンバーだっ!」
「ようやくこの戦争にも終わりが…」
「妻の仇を打つ時が来たか…」
夜分に謁見の間に集められたファスク城の兵士達は彼からの説明に、いよいよこの地の戦争に終わりがもたらされる事を確信した
「さぁ!大切なお客様の出迎えだ。給仕班は最高の仕事に取り掛かるわよ」
「フュール様の好みって何かしら?」
「吸血鬼の始祖ってやっぱり新鮮な血を望まれるのかしら?」
「消去の魔女様のお弟子さんって若くて可愛いらしいわよ♬」
「若い子向けの料理で良いのかしら?」
兵士たちの衣食住を支える給仕班のメンバー30人ほども、戦争に終止符をもたらしてくれるであろう客人たちに、最高の料理を提供しようと活気に満ちていた
【ファスク城 東側上空】
「ふぅ…何と大量の魔力量を消費する通信魔法じゃ…こんなモノを平気で使うとは…消去の魔女も貴様も只者ではないのぅ…」
「えっと、私もこの魔法を安定して使えるようになるには、かなり努力を必要としました…」
便利であるが故に、使用者にも大きい負担を強いる通信魔法だったようだ
「う~ん。最高級の食事とアルコールでお迎えして頂けるとは~、たまには労働に汗を流すのもわ~るくないですねぇ♪」
ファスクの給仕班が総出で出迎えてくれると聞かされたディー・アモンは、久しぶりの豪華な食事が堪能できることに今から上機嫌のようだ
「しかしフュールよ。何故、夜の内に侵攻せぬのだ?ディーは【夜の王】とも呼ばれている吸血鬼の始祖だし、魔族の方が人族に比べて夜行性の者が多いじゃろうに…」
「ヒルドルブ砦が古代人の手によって造られたモノだからです「彼らの生み出した【機械】というものは昼夜関係なくその威力を発揮する」と有栖から聞いています。視界がよく効く昼間に攻める方が、安全性は高いでしょう」
明るい午前中での大攻勢を提案したのはフュールだった。彼女は、古代人と同じ故郷である有栖の説明から【古代兵器】と夜に戦うのは危険過ぎる!と聞かされていたからだ
「なるほどの…2人はもちろんじゃが、消去の魔女の弟子ミアナよ。ソナタの活躍も期待しとるぞよ」
「はい!お師匠様の名を汚さぬ働きをお見せ出来るように、励まさせていただきます!」
実は、大規模で本格的な戦争に参加するのは初めてのミアナ。とんでもない魔法のチカラを持ってはいるが、初めての戦争に緊張していた
続く
地球の月よりも遥かに小さい惑星エリスアの衛星が、日中この星を照らす恒星の明かりを反射させていて、地球で言うところの月夜の明かりだけしか光源の無い真っ暗闇の中を飛ぶ【ゾンビ・ワイバーン】
その背中に死竜(ゾンビ・ワイバーン)の手綱を取るディー・アモン。その彼の背中に両手を回して抱きつき、まるで彼女の様に背後に座っているシャオシュウ
その上方に有栖の愛弟子【ミアナ・ラドシャ】
その下方に渇望の魔女【フュール・アシェスタ】が、自分の魔法で飛行している布陣でマナティートを目指していた
「んぅ~たった3人の援軍とは言えですねぇ…これほど豪華なメンツが結集して移動していてはですよぉ…」
「分かっているディー。私が既に【認識阻害(ハードゥーン)】を展開している。つまり、私に肩を並べられるほどの魔力を有している者にしか我々を探知出来ない状態よ。安心しなさい」
「流石は魔王専属の魔女様でぇすねぇ~♪不死軍団の長と呼ばれている吾輩も、それなりに魔法の心得はあるのでぇすが…御三方と比べてしまうと見劣りしてしまうのは~致し方あ~りませんねぇ(笑)」
魔王専属の魔女であるフュールは単に魔力量が多いだけでなく、高度な技術をも持ち合わせているので、魔導士以上の魔力を持つディーでさえも察知出来ないほどの【認識阻害(ハードゥーン)】を既に展開していた
「……それよりもだ。ミアナと言ったな?」
「は、はい!(ドキッ)」
「先程アレクス城で魅せてもらった貴女の魔力、見事だったわ。流石にあの有栖が手放しで褒めるだけのことはあるわね…」
フュールはミアナを褒めてはいるが…自分の愛弟子であるエーデを見下すような発言をした彼女のことを、快くは思っていないようだ。その事はミアナを見つめる彼女の視線の厳しさから伝わってきている
「あはは…すみませんでした。その…どうしても師匠の助けが必要で…もっと言葉を選ぶべきだったと反省しております…」
「……良いのよ。貴女は私の親友である有栖が大切にしている唯一のお弟子さんですもの…けど、貴女が単に魔族の一員でしかなかったのなら…あの場で貴女を焼き尽くしていたかもしれないから…今後は気を付けてちょうだいね…」
「は、はい!肝に銘じておきますっ!!」
流石にフュールは魔王を守護する魔女だけあり、怒った彼女の眼光はミアナでさえも強い恐怖を感じるモノだった
「フュールよ。それくらいにしておいてやらんか…【消去の魔女】徳川有栖にも、例え親友の貴様にでも言えぬ秘密の1つや2つはあろうよ。このミアナは、彼女を庇う為に敢えてああ言ったまでじゃろうよ」
「シャオシュウ様……申し訳ありません。このフュール、少々頭に血が上りすぎていたようです…ミアナ、キツく言ってすみませんてましたね」
「あ、はい。大丈夫です…私も失礼なことを言ってしまったのですから…」
フュールがかつて全身全霊をもって仕えていた前魔王の直属の配下であり、自分と並び彼の片翼と言われていたディー・アモンとの突然の再会から機嫌を損ねていたので、彼女にしては珍しく気分を害していたようだ
「……もう良いじゃろう渇望の魔女よ。ソナタは消去の魔女とは仲が良いのじゃろ?」
「は、はい…ですが、それ故に大切そうな何かを秘密にされているのは…納得し難いのです…」
「だからじゃよ。本当に仲が良いからこそ言えぬ事の1つや2つは必ずあるものじゃ。逆にじゃな…仲が良いからこそ信じてやることじゃ。いつか話してくれることもあろうよ」
「…そ、そうですね。分かりました。有栖を信じることに致します」
魔王専属魔女のフュールに意見を出来る者など、ほんのひと握りしかいない。最年長の魔女であるシャオシュウは言葉を選び、彼女をなだめる事でミアナに助け舟を出してくれた
「ところでじゃ。たった3人とは言え、これ程の豪華なメンツに援軍してもらえるのじゃ。今の内にファスク城の者に、この事を伝えておきたいのじゃが…フュールよ長距離通信は可能かの?」
「長距離通信ですか?…う~ん、可能ではありますが…流石にこの距離では敵の魔法探知に察知される危険性がありますね」
「そうか…渇望の魔女とて流石に無理か…」
これだけの顔ぶれが援軍に来ている事を前もって伝えておきたい。と考えたシャオシュウだが…いかに渇望の魔女とは言え難易度が高いようだが…
「【6G通信(ハイパーコミニュケーション)】!」
「むっ?何だソレは?」
自力で飛行していたミアナが動きを止めて手の平に魔力を集中すると…白金に光る球が浮き出てきた
「これは、お師匠様が地球のスマートフォン。というのを模して造られた1対1専用の遠距離通信魔法です」
「ほほぅ。消去の魔女オリジナルの通信魔法かね…興味を覚えるのぅ。して、どんな性能じゃの?」
魔女の中でも最年長のシャオシュウでさえ、ミアナが出した通信魔法に興味を覚えていた
……………………………………………
「抜群の秘匿性を持った個人通信専用魔法ですか…流石、有栖ね。こんな便利な魔法をいくつも創り出すなんて…」
「ですが、私の魔力放出が格段に上がって探知されやすくなっていますので…フュール様が張って頂いてる魔法に上書きをさせていただきますね?…【超認識阻害(ラ・ハードゥーン)】」
高い魔力で生成して【6G通信魔法】のエネルギーを探知されない為に、ミアナはフュールの認識阻害に上書きをした
「な!?…何者なの貴女は?…私の認識阻害を遥かに上回る魔法を…通信魔法を維持したまま重ね張りするなんて…」
「フハハハハ!まぁさに化け物というレベルですねぇ♪人の面倒を見るのが苦手な消去の魔女が、1年間ミッチリ教え込んだのも頷ける性能をしていますねぇ♪」
この4人の中では、魔法に関しては段違いに劣っているディー・アモンでさえも、ミアナの基本能力の高さに呆れ笑いが出ていた
【更に東の空】
闇夜の中を控え気味に魔法飛行している徳川有栖
「良し。ミアナが強めの認識阻害を展開したわね。これで全力で飛行しても、結界内に居るフュールに私の飛行方向を探知されないわね」
前魔王ザッドが嫁の身体に憑依して治めている【ブルージュ村】の位置を悟られたくない有栖は、探知される心配が無くなったのを悟った瞬間に魔力を全力放出して加速した
【ファスク城 オボロの私室】
「…新しい魔王様は、シャオシュウ様の援軍要請に応えてくれたかしら?」
オボロは自分の部屋にツバキを連れて戻り、ベッドに腰掛けた姿勢でシャオシュウの成否を気に掛けていた
「大丈夫ですよオボロ様。シャオシュウ様は魔女の中でも最年長のお方。無下に断られる事はシャシュガニニャ……おほん。流石にないでしょう」
不安になっているオボロを安心させようと言葉を掛けたツバキだったが、またしても長文に舌がついていけずに噛んでいた
「だと良いのですが…」
「私たちはシャオシュウ様が戻られるまでシッカリ態勢を整えて……んっ?シャオシュウ様!?」
(聞こえているかツバキ?ワシは今、アレクス城から3人の援軍をお借りして、後1時間くらいで城に戻れるくらいじゃ)
「どうしたのですかツバキ?いきなり1人事を言い始めて…」
「あ、今シャオシュウ様から通信魔法を受信して話しています。えっ!?渇望の魔女フュール様を始めとした3人の援軍ですか?」
シャオシュウは6G通信の受け手にツバキを選択したようだ。彼女がツバキに魔力指導をしていたこともあり、彼女がかなり高い実力を有しているのを知っていたからだ
(この通信魔法は受け手にかなりの負担が掛かるらしいから、この辺で切るがの…反攻作戦は明日の昼前が良いだろうという話じゃ。ファスク王にその用意と、3人を出迎える準備をしてもらうように頼んでおくのじゃぞ)
「はい、分かりました。シャオシュウ様達もお気を付けて!」
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ツバキはオボロに、シャオシュウから聞かされた内容を伝えた
「それは本当ですか!?次期魔王メイビー様の計らいで【渇望の魔女】【不死軍団の長】【消去の魔女の愛弟子】の3人が、援軍として間もなく到着されるのですか?」
「は、はい。シャオシュウ様はその様に言われていました」
「なんて素晴らしい実力者ばかりなのでしょう!今度こそ長きに渡る人族との戦争に終止符を打って、メイビー様に良い知らせを届けなくてはなりませんね!…私はお父様にこの事を伝えに向かいますわ」
「わ、私もお供します!」
【謁見の間】
「親愛なるファスク城の兵士諸君!シャオシュウ殿より良き知らせが届いた。最近では古代13獣神の1体マルバァスに消去の魔女と共に戦いトドメを差した魔王様専属の魔女【フュール】殿と、かつてマリニウム城からの大軍を1軍だけで撃退した不死軍団の長【ディー・アモン】殿。更には消去の魔女殿の唯一の弟子である【ミアナ】殿が、我が軍の援軍として間もなく到着なされるそうだ。いずれも1人で1個軍団に匹敵する猛者が3人もだ!
間もなく訪れる最強の援軍のチカラをもって、このマナティートの長きに渡る戦争に、いよいよ終止符が打たれる時が来たのだ!!作戦開始は明日の10時を予定している。明日の決戦に備え、各自シッカリと英気を養っておくのだ!」
「おおー!!!」
「凄いメンバーだっ!」
「ようやくこの戦争にも終わりが…」
「妻の仇を打つ時が来たか…」
夜分に謁見の間に集められたファスク城の兵士達は彼からの説明に、いよいよこの地の戦争に終わりがもたらされる事を確信した
「さぁ!大切なお客様の出迎えだ。給仕班は最高の仕事に取り掛かるわよ」
「フュール様の好みって何かしら?」
「吸血鬼の始祖ってやっぱり新鮮な血を望まれるのかしら?」
「消去の魔女様のお弟子さんって若くて可愛いらしいわよ♬」
「若い子向けの料理で良いのかしら?」
兵士たちの衣食住を支える給仕班のメンバー30人ほども、戦争に終止符をもたらしてくれるであろう客人たちに、最高の料理を提供しようと活気に満ちていた
【ファスク城 東側上空】
「ふぅ…何と大量の魔力量を消費する通信魔法じゃ…こんなモノを平気で使うとは…消去の魔女も貴様も只者ではないのぅ…」
「えっと、私もこの魔法を安定して使えるようになるには、かなり努力を必要としました…」
便利であるが故に、使用者にも大きい負担を強いる通信魔法だったようだ
「う~ん。最高級の食事とアルコールでお迎えして頂けるとは~、たまには労働に汗を流すのもわ~るくないですねぇ♪」
ファスクの給仕班が総出で出迎えてくれると聞かされたディー・アモンは、久しぶりの豪華な食事が堪能できることに今から上機嫌のようだ
「しかしフュールよ。何故、夜の内に侵攻せぬのだ?ディーは【夜の王】とも呼ばれている吸血鬼の始祖だし、魔族の方が人族に比べて夜行性の者が多いじゃろうに…」
「ヒルドルブ砦が古代人の手によって造られたモノだからです「彼らの生み出した【機械】というものは昼夜関係なくその威力を発揮する」と有栖から聞いています。視界がよく効く昼間に攻める方が、安全性は高いでしょう」
明るい午前中での大攻勢を提案したのはフュールだった。彼女は、古代人と同じ故郷である有栖の説明から【古代兵器】と夜に戦うのは危険過ぎる!と聞かされていたからだ
「なるほどの…2人はもちろんじゃが、消去の魔女の弟子ミアナよ。ソナタの活躍も期待しとるぞよ」
「はい!お師匠様の名を汚さぬ働きをお見せ出来るように、励まさせていただきます!」
実は、大規模で本格的な戦争に参加するのは初めてのミアナ。とんでもない魔法のチカラを持ってはいるが、初めての戦争に緊張していた
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