アリステール

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少年期~

実践授業

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実践技術と名をうっているが、座学も含まれる
新入生がいることもあり初回は第三講堂で行われると要綱にあったため、指定された時間の少し前に講堂へ向かう

「あ、アリスくん。なんだか久しぶり」
「アリシア。確かに、初日以来だね」

講堂の入り口で級友と会う。授業でもなかなか周りに馴染めない中、学院の生徒のなかでは唯一の知り合いと言ってもいい。泣きそう

「噂になってるよ。もうギルドで仕事してる魔法実践技術の人がいるって」
「え?そうなの?」
「ええ。すごいのね?」
「んんーどうなんだろう。自分じゃわかんないかな。それより、今日は体調は大丈夫?」
「うん。あの時はごめんね、魔力切れでそっけなくて」
「しょうがないよ。そういうのも勉強だしね」
「ふふ、なんだかお父さんと話してるみたい」

精神年齢はそうかもなー
色々すっとぼけながらも他愛のない話を重ねていく
徐々に他の人も来始めたころ、セドリック先生も同じぐらいの時間にやってくる
時間にしっかりしているというか、時間ちょうどを狙ってるというか

「んじゃ実践授業始めるぞー。新入生もいるから今日は座学と実践な」

先生の合図から出席を取っていく。普段の授業だと始める前に学生証を集めていたが、これだけ少なければ必要もないか
自分の名前を呼ばれて返事をすると、少しざわつく。噂云々のことだろうか、少し肩身が狭く感じる

「はいはい静かに。気にするのは自分の成績にしとけ。まず簡単なおさらいからな」

周囲の人たちは僕らを入れて計8人、男女半々でちょうど分かれていた

セドリック先生の説明が始まる
選定で判定された能力のうち、出力・操作は魔法の発動に深く関わり、傾向の数値が大きいほど何かしらに偏りがあること
容量はそのまま魔力の保有量で魔力量とも言われ、詠唱式にせよオリジナルにせよその量を超えて魔力を使うことは出来ないこと
魔力が切れの症状や感じたときには魔法の使用を控えるよう注意すること、オリジナルや詠唱式の違い、
魔力量は実践を重ねて感覚でつかむ必要がある、などなど図書館で読んだことや先生との話で知りえたことも多かった

知っている内容だからこそ繰り返して知識を固めるべし。そう言い聞かせて集中していく。飽きたわけではない

「おさらいについてはこんなもんだ。新入生以外、しっかり守れてるか?」

他の人らが声をそろえて肯定する

「いい返事だ。それじゃあロイ、魔法を扱ううえで一番注意することは?」
「はい!正しいことに使うことです!」
「・・・まぁ間違っちゃいないけどな。ただしよく考えて、その正しいことがなんなのかを知ることも大事だぞ」
「はい!」

目をランランと輝かせながら元気の良い返事で、ロイと呼ばれた少年が答える
背は高いし声も若干低いが、妙に幼い印象を受ける

「そんじゃこれから10分休憩を挟んでから、訓練施設に行って実践する。トイレは済ましとけよ」

そう言って、先生は講堂を出ていった。なかなか厳しい(睡魔との)戦いだった

「なんだか、魔法って難しいね」
「うん。でも、ほかの人に出来ないことが出来るのって、ちょっと嬉しいかも」
「あ、たしかに。よし、実践も頑張る!」

アリシアがやる気を漲らせている。きっと今の性格が普通なんだろう。初対面で少し面食らっていたが、明るくて話していて楽しい
相変わらず猫背なのは気になるけど、指摘するのもなんとなく憚られる

一応トイレで用を足してから訓練施設へ向かう。4日目にしてすでに通いなれた感じだ

「よし、みんな揃ったな。一人ずつ、指定する魔法を使って見せてくれ。なにかあれば口を挟んでいくからなー」

年齢が上の順からか、背の高い人や落ち着きが見える人から一人ずつ名前を呼ばれては的に向かって魔法を放っていく
短縮した詠唱式を使う生徒はいなかった。放つ魔法にしても勢いが強いものもあれば弱いものもある。得意不得意というやつだろうか
先ほどロイと呼ばれた生徒は3番目に呼ばれた。元気の良さから想像できたかのように火の詠唱式魔法の勢いは強かったが、それ以外は半分ぐらいの勢いだった
ここまで極端なのは他の生徒でも見られなかった。選定の時に聞いた、個々の魔力の指向性ということなんだろう
アリシアは満遍なくこなせていた。不得意がないという感じだが、魔法の勢いは決して弱くなかった

「最後。アリス」
「はい」

前に出て的に向かったとき、先生から耳打ちされる

(今日は普通の詠唱式だけな)
「じゃあまずは火の詠唱式から」
「はい」

二重の意味で返事をする

普段より出力を抑えるイメージで、先生の言う通りに火水風土の詠唱式を発動させていく
出力を抑えるのは出来るかもと思ってやってみたが、うまくいった
ちらっと先生に視線を送ると、呆れた様な目をしていた

「・・・まぁいい。荒は少ないが、水が得意なようだな。ほかの魔法にも慣れていくように」

そんな評価を聞き、元の場所に戻る

「それぞれの課題は言った通りだ。授業はこれまでにするが、ここは引き続き使ってもいい。出るときには学生証を魔道具に通すのだけ忘れるなよ」

意外とあっさりと、初の実践授業は終わりを迎えた
15時前ぐらいか。中途半端だし、今日は早めに家に帰ろうかな
他の生徒もぞろぞろと訓練施設から出ていく。アリシアは少し居残って練習していくようだ

「せっかく水以外の詠唱式も教えてもらえたから、ちょっと試したいんだ」
「そうなんだ。魔力切れも心配だし、一緒にいようか?」
「ううん、家も街の中だし、すぐに終わらせるから大丈夫」
「わかった。じゃあ、またね」
「うん。またね~」

自分も初めて魔法が使えたときには興奮したものだ、きっといろいろ試してみたいんだろう


出口で先生に捕まった。問い詰められたので素直に白状するとまた呆れた目をされたが、アリシアの練習に付き合うらしくすぐに解放された
その場を先生に任せて帰宅した。出来ることも増えたことだし、有意義な一日と言えよう。満足しながら寝床についた
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