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第一章

5、曖昧な証言

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☆名木山竜星(なぎやまりゅうせい)サイド☆

初キスを受けた。
何がといえば四葉に初キスを受けたのだ。
本当に何も出来ず。
ただ茫然と四葉を見るしか無かった。
四葉はあっけらかんと笑みを浮かべていたが心臓がマヒしそうだ。

「...」
「...」

俺は砂糖水にしか感じなかったジュースを飲み終えてからそのまま四葉を見る。
四葉は顔を俺に合わせようとしない。
それだけ怒っているのか?
だとすれば無料だからって無理をし過ぎたな。

「四葉」
「...は、はい」
「無理をし過ぎだぞお前」
「...は、はい」
「...好きでもない相手にキスとかキツかろお前」
「...本当にそう思っています?」

その言葉に俺は「は?」となる。
それから四葉を見る。
四葉は「な、なーんて」と冗談な感じを見せた。
しかしその耳は真っ赤だ。

「...じょ、冗談です。全てが」
「...そ、そうか?」
「そうです。せ、先輩を好きだなんてありえないです。は、はい」
「...ならそれはそれでいかんだろ...」

好きという時に取っておかないと。
俺はそう考えながら四葉を見る。
それを察した様に四葉は早足で去って行く。
それからこっちを見てきた。
何というかあっという間に本屋に着いてしまった。

「...先輩は今日はどういう本を見るんですか?」
「...ああ。俺か...俺は久々にラノベでも見るかな」
「オススメのライトノベルってあるんですか?」
「俺がお勧めするのは...恋愛系かな」
「先輩それ系好きですね」

まあエッセイとかなろう系も読むけどな。
だけど俺が好きなのはラブコメかな。
何故なら平和だからだ。
誰も死んだりしないしな一応。

「先輩の家にもあるんですか?ラノベ」
「あるっちゃあるな。...少なくとも100冊ぐらいは」
「そうなんですね。...そうなんだ...」
「待て。何を考えている」
「...私、先輩の家に行こうかな」
「...は?」
「あ、そういう意味じゃないですからね!!!!?ただライトノベルを貸してほしいです!自らで買うには高いので!!!!!」

早口でまくし立てる四葉。
それから目を回す。
俺は「お、おう」と返事をしながら四葉を見る。

そして四葉は「じゃ、じゃあ面白いライトノベルを探しましょ」と去って行く。
その姿を見ながら歩いていると「あれ?」と声がした。
そんな声音に俺は目線が鋭くなった。

「お前」
「何をしているの?」
「凜花。お前と会うとは思わなかったよ」
「参考書を買いにこの場所に来たんだけどまさか貴方が居るとはね」
「...」

俺は溜息を吐きながら「じゃあな」と言う。
それから踵を返して去ろうとした時。
「待って待って。彼女にそれは無いでしょ」と声がした。
いやあのな。

「すまないがお前をこれから先も彼女とは認識は出来ない」
「え?...それはどういう意味」
「お前は他の男とキスしたんじゃないのか」
「...ああ。成程ね」
「...成程って何だ」
「...色々あるんだよ私にも」

色々って何だよ。
俺は「?」を浮かべる。
俺は数秒考えてから「俺はお前とは付き合えないからお前とは別れる」と言った。
すると「待って」と声がした。

「お前の様な浮ついている奴は将来がない」
「...そうだけど...」
「俺の後輩の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。お前には」
「...後輩?」
「俺の後輩な。...名前は」
「八乙女四葉です」

背後からそう声がした。
それから超絶不愉快そうな顔をした四葉が出て来る。
そして「お話は聞きました」と言葉を発する。

「ただの上辺の言い訳です。もう二度と私の先輩に近付かないで下さい」
「...」
「私達は2人で歩みますから」
「後輩さんもしかして貴方は竜星とキスをしたの?それって私達が先に付き合っている中でって事だよね?泥棒じゃない?」
「...あくまで頬にキスされただけだよ。チークキスというか」
「...」

凜花は「そう」と言いながら目を逸らす。
それから凜花は「どうすればまた付き合える?」と言う。
俺は盛大に溜息を吐いた。
四葉もまさかの言葉に呆れている。

「お前の様な身勝手なアホとはもう話したくない」
「私は貴方には反省してほしいです」
「...」

そして俺達は踵を返してそのままその場を後にする。
それから凜花の視線が無くなるまで歩いた。
そうしてから四葉を見る。
四葉は唇を噛んでいた。

それから何分か経った後にこの様なメッセージが来た。

(私は何もしてない)と。
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