正直者が馬鹿を見ないことがあってもいいんじゃないですか? ダックスフンドを添えて

コンビニ

文字の大きさ
12 / 20

12

しおりを挟む
 話が長くなってしまい、その日は村長の家にお世話になることになり、その間にも関係者各位には話が通達された。
 翌朝には家に帰る前にルーカスとエレナちゃんを迎えにいくことになった。

「リュナ様、本当にありがとうございます。ルーカス、言うことを聞いてしっかり励むんだよ」
「ああ、母さん。頑張るよ!」

 感動的なシーンだ。
 母親のエマさんは春から新設される村の薬草畑で未亡人達や年齢が高い人達と一括りで働くことになった。これについては今回の件とは関係なく、元々そういう畑を作る予定ではあったと言っているが、村長にねじ込んで話を進めていたことを考えれば、村の救済と彼らだけが特別な対応を受けたと石を投げられないようにとの対応ではないだろうかと考えている。

 そしてルーカスとエレナちゃんについては真面目に働いて技能さえ身につければ実質結婚ができると言うことになる。成人が一五歳の三年後となるのでその後ではあるけど。

「エレナも頑張るんだよ。ルーカスが不甲斐ないようならいつだって蹴飛ばして別の男を捕まえなさい。あんたの幸せが一番なんだからね」
「はい、お母さん。私も頑張るから」

 なんでもエレナちゃんのお母さんとは親友だったららしく、我が子のようにずっとお世話をしていたらしい、エマさんも苦労人なんだな。薬草畑になれば普通の作物より重労働ではなくなるようだし、上手く育つといいんだけど。この人には報われてほしい。

 それにしてもエレナちゃん一五歳、実にパワーがある主に胸周辺、もちろん顔面偏差値も高いが幼さが目立つ。これはいわゆるロリ巨乳ってやつなんだろうか。
 そしてルーカス。バカイケメンだ。十二歳でこれだぜ? 年を重ねたらどうなっちゃうんだよ。エレナちゃんはもしかして面食いなのかな。幼馴染な訳だし純愛だよね?
 若いカップルとババアとの共同生活とか不安しかないんだけど。

 二人のペースが思ったよりも遅くて家までにかかった時間が行きの三倍はあった。
 村の子ってこんなに体力がないのか? 筋肉もいまいちだし、村長さんとかマーロさんは例外中の例外って感じかな。

「アルデン、飯の用意をしな。ルーカス、エマも手伝いをしながら覚えるんだよ」
「はい」
「俺は男で、狩人ですよ? 料理をするんですか?」
「ダメよ、ルーカス。言う通りにして」
「わ、わかったよ」

 何故かババアが俺の頭に拳骨を落とす。
 なんで、ねえなんで?

「弟子の不始末は師匠の責任だからね」

 ルーカスがクソガキってことはわかったけど、このままだと俺の頭蓋骨が砕ける結果とかにならないよな?
 クソガキは文句は言うものの、基本的な調理はできるようで安心した。エレナちゃんについては料理スキルは問題ないどころか、俺が何も言わないでも先を予想して動いてくれる。
 この子も天才とかいう部類か? 君を副料理長に任命してやろう! ククク、これ絶対に俺が負けキャラの料理長役だよ。

「薬師様はこんなに美味いもの毎日食ってるのかよ!」

 騒がしいガキだ。喜んでくれてるのは嬉しいという反面はあるものの、兄弟もいなかったし、ましては弟子なんて初めての経験だ、どう扱っていいのものか。

「ルー、楽しく食べるのはいいけど騒がしいのはダメ」
「なんだよ、美味かったから、美味いって言っただけじゃないか」
「エレナちゃん、さっきはルーカスだったのに、普段はルー呼びなのかい?」
「申し訳ありません、崩れた呼び方を」
「気にすることはないよ。師匠もそこまで気にしないですよね?」
「節度をもって生活をするのであれば呼び方なんてどうでもいいことさね」

 じゃあ、俺もそろそろババア呼びでもいいって--睨まれた。気を緩めてババアとか呼ばないようにしよう。
 食事が終わって、三人で皿洗いをする。三人いれば洗う量が増えてもあっと言う間だ。

「リュナ様の家は凄いです。水が自動的に出る魔道具だったりお湯を簡単に沸かせたり」
「なー!」

 異世界から来たから当たり前に使ってたけど、珍しい魔道具が多いんだもんな。

「片付けが終わったらなこっちに並びな」

 ババアが当たり前のようにあんこを膝の上に乗せてるのはなんなんだよ。寒いせいか、夜寝る時もあんこを取られてしまう。俺のあんこなのに!

「ここで生活をする以上、私の言うことには従ってもらうよ。お前らの年貢について母親の分を含めて建て替えている。しっかり働かないなら叩き出すからね。働いて知識を、技術を得られれば未来の生活も楽になるはずさ。ルーカスはまだ成人していないからね、エレナ、お前がちゃんと手綱を握るんだよ」
「は、はい!」
「エマからお前らを預かってる手前、成人前に乳繰り合ったりしたら即叩き出すからね」

 エッチなことはするなよって話ですね! 同感です! エッチなのなんてダメですよ!

「アルデン、お前も若い娘がいるんだ。配慮するんだよ」
「了解です。婚約者のいる女の子相手に変なことはしませんよ。俺は紳士ですからね」
「はん、紳士ねぇ」

 何故か鼻で笑われてしまった。
 確かに胸は最初凝視していたけど、今は三回に一回くらいしか見てないし! 見るくらいないいよね!
 はっ、あからさまにエレナちゃんに胸を隠された、ババアが煽るからだ!

「エレナは一部屋余ってるからそこを使いな。ルーカスはアルデンと一緒の部屋だよ」

 予想はしていたけど、部屋数が足りないし、同室になるか。
 ベットの二つ入るようなスペースはないし、一人は床だな。

「兄弟子だからってずっと床で寝ろとは言わん。五日ごとに交代でベットは使うからな」
「わかった」
 
 ありがとうございますくらい言えよ! 一応、後輩になる訳だろ? 

「ルー、ちゃんとお礼を言って。アルデン様、申し訳ありません、気をつかっていただいたのに」
「いやいや、気にしないで。子供なんだからそんなもんだよ」
「ガキ扱いするな!」

 ガキが言うセリフナンバーワンの言葉じゃないか。
 
「はいはい、それとエレナちゃんも様じゃなくてさんでもお兄ちゃんでもいいからね」

 俺的にはお兄ちゃんがポイント高いよ!

「はい、アルデンさん」

 まぁ、最初の距離感なんてこんなもんだろう。
 明日からクソガキの面倒を見ないといけないと思うと気が滅入ってくる。
 マーロさんも生徒が素直だったせいか手を出してくることもなかったし、訓練とか教える時ってどんな感じがこの世界基準なんだろうか。
 最近のトレンドで言えば愛の鞭なんて論外で、暴力で縛る時代ではないからな、現代のトレンドに沿って叱らず諭しながら教えていくか。

「それじゃあ、私は寝室に行くから、午前中はいつも通りに、時間が余れば訓練を始めてもいいよ。アルデン、エレナにも簡単な基礎トレーニングだけはさせな。それが終わったら私のとこに寄越すように。ルーカスはあんたが見ておくんだよ」
「わかりました。明日は五時起きなので、各自寝坊しないように」

 さてさて、若いカップルが一組増えたけど今後の生活はどうなっていくのかな。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...