家庭菜園物語

コンビニ

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54 しもしも?

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 一月の半ばになって本格的に雪が降ってきた。

 一面が銀世界となったが、畑や石畳を敷いた箇所など施設関連には雪が積もることはない親切設計で安心した。
 ソーズさんはこの寒い中、「たまには本格的な鍛錬をしないと鈍ってしまう」と、大福と一泊二日の狩りツアーに出掛けてしまった。

 たまには一人で晩酌するのも悪くない。
 しんしんと降る雪を暖かい部屋で炬燵に入りながら眺め、冷たいビールを飲むのは最高だ。
 そろそろストーブなどを購入しないと寒さ的に厳しくなってくるだろうか? エアコンだけでいけるかな。

 ボーっと外を眺めていると、いつの間にか目の前にスマホが現れた。

「なんだこれ?」

 ブルブルと着信を知らせるために震えてる。
 出たくないなぁー。気がつかないフリで押し通せないかな?

 震えるスマホを眺めていると、震えが止まった。

「はよ出ろ!」

 勝手にスピーカーモードになったのか、聞き慣れた奇声が聞こえてくる。

「出ようと思ってたんですけどね、寒くて手が伸びなくて」
「そうか、そんなに寒いなら年がら年中この森だけ真夏にしてやろうかのう?」
「勘弁してくださいよ。お久しぶりですね、サイゼ様。今日はどうされたんですか?」
「うぬ、お前の国では新年には神に挨拶をするものであろう? なんでお供えとか挨拶とかないのだ!」

 だって神社とかないしな。
 それに新年って言ってももう半ばだぞ。寝正月だったのかな。

「申し訳ありません、神社とかもなかったし、忙しくて」
「そうか。千万円で作成できるように手配しておこう!」

 千万円とか何を言い出しているんだろうか。
 作成費用まで俺に出させようとしているのか?
 そのうちの何割がこの人の懐に入ることか。

「そうですか。ありがとうございます」
「うむうむ、来年の年末までには作るように!」
「ただ残念ですが、俺にはそこまで貯蓄も余裕もないんです。暫くは無理そうだなぁ。神様には恩義を感じているので立派な神社を建てたいのになぁー」
「ぬ? そうか、わかった! では百万円ではどうだ!」

 一気に十分の一になった。それでも高いけど。

「聡明なサイゼ様であれば、下々の者からお金を取るとは思えないのですが、やはりそのくらいの費用はかかってしまうのでしょうか?」
「聡明——そう、聡明な私のジョークである! お前達が日々祈れるように妖精を雇う金までは私が負担してやろう! 木材だけ指定の本数を献上するように」

 チョロいぜ。

 それで木材は八十! 多すぎ! ドナルさんやソーズさんが木を多めに切ってくれたから余裕がないわけではないけど。
 簡単に建てるなんて言わなきゃよかったなぁ。でも神社とかの建造物は嫌いではないし、なんか神域っぽくて庭の景観もいい感じになるかな。プラスに物事は考えておこう。

「わかりましたー。それではまた何かあれば連絡をくださいね」
「おい、何を勝手に話を終わらせようとしている! 本題はこれからだぞ!」

 面倒な話が終わったと思ったのに、更に面倒な話があるのか?

「どんな話ですか?」
「うぬ。天界にも四季はあってな、この世界と同じく冷える時期なのだ。我々、神であれば寒い暑いなど気にする問題ではないのだが、四季に合わせたファッションも必要だと思うだろう? そうなれば献上するべき物があると思うのだが……」

 買えないから献上しろってパターンか。これは牛の時と同じ臭いがする。

「ちょっと姉さんを呼んできてもいいですか?」
「——今、お前のいる空間を隔離した」
「ちょっと! 姉さんと引き離すなんて、絶対ろくでもないことでしょ!」
「そ、そんなことないもん! お前にとっても有益な話だ。可愛い娘に質がよい防寒着をプレゼントしたくないか? 私経由で買った服だと外に出る際に浮いてしまう可能性もあるし、一から作られた衣服は丈夫だぞー」
「むむむ、モモに可愛い服ですか。いいでしょう、少しくらいなら話を聞きましょう」
「ちょろいな」

 あんたにだけは言われたくねぇ!

「実はな、最近いい雰囲気の男子がいてな」

 まさかの恋バナかなにかか?
 鶏といい盛りやがって、俺は嫁もいないというのに。

「いずれはビッグになると、準備期間の男子でな。まだ付き合ったりとかの話にはなっていない者なのだが、カッコいい男子なのじゃ」
「そ、そうなんですね。その彼のことは家族に相談したり、紹介したりしてるんですか?」
「恥ずかしいのじゃ! まだ付き合ってもないのに言えるはずがないであろう。その男子も恥ずかしいから、自分と会ってるのも秘密にしておいて欲しいって言っておるしな」

 典型的なチャラ男詐欺師、確信犯ですよそれ!

「それなりの男子はそれなりの格好をする必要があると私も思っておってな。素敵な洋服をプレゼントしたいのじゃ」

 うーん、言葉巧みに絶対誘導されたでしょ。

「そ、そうですか。具体的には俺に何をして欲しいのですか?」
「うぬ。羊の用意と飼育小屋の用意、加工所の用意も私の方で進める。尚且つ加工場の妖精の雇用費用も三ヶ月、私が負担するのだ。ただ建設するための木材の用意や羊の世話などを頼みたいのじゃ。できればこれまで解体した動物達の皮も活用して最高の一品を作って欲しいのじゃ!」

 あまりにも俺に対して悪い条件であれば断ろうと思ったが、悪くない条件だ。
 断る理由はないが、なんか俺まで騙してるみたいで嫌な気持ちになってしまう。

「そこまでの条件であれば俺としては構わないですけど、サイゼ様のお財布とか大丈夫なんですか?」
「問題ない! 悠のおかげで稼げているしな!」
「そうですか。その気を悪くしたら申し訳ないのですが、その男性の件は一度リープさんか家族に相談した方がいいと思いますよ」
「お前も心配性だな。リープには既に会う事を止められておるわ! でも私は彼を信じる!」

 リープさんはその後に黙認しているのか?
 あの人の監視下にあるなら、いざとなれば強引に止めてくれるか。

「わかりました。とりあえずは俺が出来ることをしましょう」
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