家庭菜園物語

コンビニ

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55 羊

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「モコモコです!」

 寒空の下で、モモが新しく仲間になった二頭の羊でモフモフサンドになっていて暖かそう。
 俺も触らせてもらったが、かなり上質な毛だった。これで作った服や装飾品なら、高く売れるに違いない。

「にゃーん」
「サイゼ様の件、大丈夫ですかね。恋は盲目とは、よく言ったものですよね。モモには、異性のお友達ができたら紹介してほしいなーって伝えておきました」
「にゃーん」

 俺の方が騙されそうだって? そんなこと、あるはずないじゃないですかね、姉さん! ガハハ!

「お父さん、毛を刈っても寒くないんですかね?」
「他の動物小屋より保温力が高いみたいだし、冬の間は毛を刈った後に外へ出さなければ問題ないみたいだよ」
「わかりました!」

 専用の道具でチャキチャキと器用に毛を刈っていく。
 やっぱり俺よりモモの方がずっと器用で、動物の扱いも上手いから、仕上がりも見事に綺麗だった。

 さらに花壇シリーズに綿花の種も追加されており、収穫時期こそ違うが、いずれ育ててみようと思う。


 神様が建ててくれた「毛や皮などを加工できる小屋」には、見たこともない機械がずらりと並んでいた。
 椅子には一人の小人のおじいさんが腰掛けている。

 本来なら魚を三十匹渡す必要があるらしいが、今回は三ヶ月分の魚を神様が先払いしてくれていた。

 おじいさんに声をかけても会話はできないようで、ただ手をひょいと上げて応えてくれる。
 素材を渡すと目の前にウィンドウが現れ、作れる製品の一覧が表示された。

 今回依頼されたのはセーター、手袋、マフラー、アウターの四点。
 ついでに貯まっていた魔物の皮も全部預けてみると、財布や鞄など羊毛とは関係のない製品まで表示され、思った以上に加工の幅が広いことがわかった。


 俺は依頼された物に加え、防寒具ではなく作業用の手袋をモモと自分の分で発注する。

 手袋代としてそれぞれに千円の料金が発生したが、それは技術料ではなく、足りない素材を補う料金らしい。
 軍手ばかり使っていたから、オーダーメイドの手袋なんて少し憧れていたんだよな。

 完成は三日後になるようで、選択が終わると退室を促され、小屋には入れなくなってしまった。

「お父さん、楽しみですね」
「そうだね。モモの服もどんどん増やしていこうか」
「お父さんの服もですね!」

 可愛いやつめ、と頭をゴシゴシ撫でる。
 格好いい父でいられるように、俺も服装を少しは努力しよう。

「にゃーん」

 姉さん用のベッドも欲しいですか。
 動物用品もラインナップにあったから、次回は作ろう。大福が拗ねないように、セットで作らないとな。
 あとは羊毛が再び取れるのが何日後になるか、だな。


 畑の世話を終えて今日の作業は終了。
 モモと炬燵でオセロを楽しんでいると、泥だらけのソーズさんと大福が縁側から顔を出した。

「ただいま戻りました」
「わん!」

 今回の獲物は、鳥っぽい魔物と豚っぽい魔物の二匹。
 ソーズさんの収納魔法のおかげで獲物自体はさほど汚れておらず、解体も楽そうだ。とはいえ、二人が泥まみれになって帰ってきたのは事実。

 簡単な昼食を用意し、二人には風呂に入ってもらい、その間に俺が解体を進めることにした。

「お父さん、私にも手伝わせてください」
「勉強や鍛錬はしなくていいのかい?」
「今日の分はもう終わってます! それに、解体も勉強の一つだと思います」

 以前は身長も足りなかったし、刃物を持たせること自体に抵抗があった。
 けれど今のモモなら、教えてやった方がいいだろう。

「わかった。俺の教えは厳しいぞ!」
「はい!」

 獲物を小屋に持ち込み、解体を始める。
 どうやらこれまでの俺の手順を覗き見していたらしく、飲み込みが驚くほど早い。
 少し教えるだけで、一つの動作から複数の意味を理解してしまう。モモはやはり優秀だ。

 こういう子を天才というのだろうか。
 それとも、俺がただの親バカなのか。
 どちらにせよ、モモは教えたことをどんどん吸収し、すぐに実行に移せる。

 もしかすると、思っている以上に早く巣立ってしまうのかもしれない――。

「お父さん、次はどうすればいいですか?」
「そこだな。足のあたりから切れ目を入れて、皮を剥ごうか」
「はい!」

 花嫁衣装だけじゃなく、モモが外に出るときの備えとして、服も蓄えておかなくちゃな。
 解体だって外で役立つだろうし、料理もそうだ。

 さくらさんやソーズさんだけでなく、俺も自分ができる範囲のことを教えていこう。

 この世界で必要になるかはわからないけど、もしモモが王坂に行き、偉い人に会う日が来たなら。
 テーブルマナーやダンス、淑女としての所作も——いずれはかな。

 ……いや、今は先のことを考えすぎても仕方ないか。
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