家庭菜園物語

コンビニ

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13 肉が!

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 ん……モモか? 揺さぶられて目を覚ます。
 まだ外は薄暗く、太陽は出きっていない。いつも通りの時間だ。
 モモは寝起きが非常によく、毎朝こうして起こしてくれる。

 たまには寝坊したモモも見てみたいものだ、それはそれで可愛い困り顔をみせるかもしれない。

 新居の洗面所でモモと一緒に歯を磨き、顔を洗う。
 今日は畑への水やりに加え、余っているスペースに人参、レタス、唐辛子、トマト、ナス、ブロッコリー、きゅうり、ピーマンと、種類を多めに浅く種を植える予定だ。食卓に彩りを、ってね。

 木材も使い切ったし、次の家のアップグレードに石材も必要になるので、少し集めておきたい。
 余裕があるうちに、買取箱も各所に置いておいた方がいいかもな。

「モモ、俺は朝食を用意してくるから、ガンジュさんたちの様子を見てきて。起きてたら呼んできてくれるか」
「はい!」

 人数が増えると、朝食の準備は一気に大変になる。
 じゃがいもの皮むきだけでも手間がかかるため、芽だけ取って皮付きのまま一気に大量のじゃがいもを塩茹でする。
 その間に、トマト、レタス、きゅうりで簡単なサラダを作っていく。

 背後でかちゃかちゃと食器の音がする。
 振り向くと、モモが皿の準備をしてくれていた。ガンジュさんたちも、すでに縁側に姿を見せている。

「モモ、ありがとう。サラダから盛り付けて出しちゃってくれるか」
「はい!」

 てけてけと歩きながら、ボウルに入れたサラダと皿、ドレッシングをちゃぶ台へと運び、先に食べてもらうよう配膳してくれる。
 まだ食器棚はアップグレードされていないので、細かな家具も少しずつ増やしていかないとな。

「先に食べてよいのだろうか?」
「片付かないので、先にお食べください」

 モモとガンジュさんとの小さな押し問答の末、ようやく食べ始めてくれたようだ。「このタレ、美味ぇっす」などと聞こえてきたので、ドレッシングが好評のようでよかった。

 全員に朝ごはんを出し終えたあと、俺も手早く口に詰め込む。この後は洗い物が待ってるしね。

「悠、我々でできることがあれば、何か手伝わせてくれ。昨日と今日と、貴重な食事をご馳走になったのだ。何かさせてくれ」
「にゃーん」
「畑仕事に、木の伐採、石材集めですか? 任せてくれ」
「姉さん、でもさー」
「にゃーん」

 確かに、もらってばかりだと相手も気を遣うしな……。

「杏殿の言う通りだ。元はドナルが木こりで、エリザベスとアダメは野良仕事の経験がある。石材などの力仕事なら、俺に任せてくれ」

 確かにこの人数が手伝ってくれるのは心強い。ここは素直に頼るか。
 納屋に案内し、鍬や斧、じょうろなど必要な道具を渡す。それぞれの作業エリアに買取箱を設置して、「成果物はここに入れておいてください」と説明した。

 これで午前中はかなり余裕ができた。

「ご主人様、私は……」

 ああ、モモの仕事がなくなってしまったのか。

「俺は洗い物してるから、たまにはゆっくりしてていいよ」
「ゆっくり、ですか……」
「にゃーん」
「はい!」

 姉さんが「ブラッシングしてくれ」とモモを連れていってしまった。
 せっかく自由時間を与えようと思ったのになー。
 まぁ遊ぶ場所もないし、モモも困るか。

 姉さんの配慮には感謝しないと。

 手早く洗い物を済ませて、クラフト画面とにらめっこを始める。
 木、石、肉の小屋、それに加工するための小屋のシリーズ……。
 現在は自分で伐採して、お金を払って加工してもらっているが、これを作れば無料になる? 建築物っぽいが、詳しい説明がないのは、例の神様クオリティということか。

「まずは試しに作ってみたいよな……」

 木材が六十個あれば、一万円で建築可能らしい。
 六十といえば巨木三本分。今の俺の実力だと、集めるまでに二日はかかる。
 金額的には安いけど、労力を考えると安くはないな。

 肉は大福が確保可能と言っていたけど、どのみち木材がベースになるから、まずは木関連を優先すべきか……悩ましい。

 でもこうやって、ゆっくりクラフト画面を眺めたり、ショッピングサイトを見て検討できるって貴重だよな。
 最近はバタバタしてて、落ち着いて考える時間も取れなかったし。
 人が増えて、食材の減りも早くなって不安だったけど、短期間ならむしろ安い労働力かもしれない。

 今の畑のき規模だと、一家族で六人くらいが上限か……自動化や肉の供給ラインが整えば、もう少しいけるかな。

 あ、そろそろ昼飯の準備もしないと。

「兄貴」

 ドナルさんがこっちを見ているが、ガンジュさんならいないぞ?

「兄貴」
「……俺のことですか?」
「兄貴」

 ドナルさんは、アダメさんと比べると寡黙な人という印象がある。
 実際に喋ったのは少しだけだけど、そういう空気がある。

「えっと……どうしました?」
「兄貴」

 俺を手招きして、伐採しているエリアへと誘導する。
 そこには、すでに何本かの木が切り倒されていた。そして、買取箱を指差す。

 中を確認すると、午前中だけで五本の木が伐採されていた。
 体格や種族の違いもあるが、それにしても凄い。

「今から、もう一本伐採すること可能ですか?」

 ドナルさんは頷き、伐採の準備を始める。
 その動きを食い入るように見つめる俺。スイングスピード、腰の入り方、フォーム……すべてが理に適っていて、美しい。

 俺も木こりとして、いつかこの高みに至れるだろうか。

「ドナルさん、素晴らしい動きでした!」
「兄貴」

 斧を撫でて頷く。おかげってことかな? 
 さくらさんも褒めてたし、業物なのだろう。
 俺なんて、あれ使っても一日二本が限界だけどね。

 切ってもらった木を木材に加工すると、八十個の木材が手に入った。
 これで何か一つ、小屋が建てられるな。

 何を作ろうかな――と考えながら帰宅すると、ガンジュさんたちも作業を終えて集まっていた。
 そして足元では大福がわんわん騒いでいる。

 その足元には、大福の二倍ほどのサイズはある、鹿のような動物が横たわっていた。

「大福、獲物を取ってきても、俺にはどうしようもできないぞ」
「ああ、すまない。大福様に『解体できるか』と今朝聞かれて、『できる』と答えたもので、持ってきてくださったそうなのだ」
「ガンジュさん、解体いけるんですか!」
「ああ。我々は全員できるぞ?」

 これで大量の肉が確保できる……!
 ガンジュさんたちがどれくらい滞在するかは分からないが、解体の仕方を教わるのも悪くない。

 ちょうど木材も揃ったし、肉の加工小屋を作ってみよう。どんな機能があるのか検証も兼ねて。
 自動化できなくても、道具があるかもしれないし、解体できる人材もいるから無駄にはならないだろう。

「そうなんですか! 俺に解体の方法、教えてもらってもいいですか?」
「そのくらいなら構わない」

 よっし!

 えっと、肉の加工小屋を作成。家の側の空き地でいいだろう。
 完了は二時間後。昼ご飯を食べて一息ついた頃にちょうど良さそうだ。

 設置場所を選ぶと、土の中から妖精さんたちがわらわらと湧き出てきて、足場を組んでトンカンと建築を始めてくれる。

「加工する小屋を作ってもらってるので、二時間ほど時間をもらってもいいでしょうか?」
「わかった。とりあえず獲物は血抜きして、川で冷やしてこよう」
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