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第2話:牙を剥く鋼鉄の腕
しおりを挟む「俺も混ぜてくれよ」
ジェーンは顔を歪ませながら、茶髪の男を見下すように睨みつけた。
「…またなんか増えた。面倒臭いなぁ…」
男は無視するように軽く頭をかきながら、カインに視線を向けた。
「なぁ。あの女、どういう能力者?」
唐突な質問にカインは一瞬戸惑ったが、すぐに口を開いた。
「…えっ…あっ…あいつは、腕をナイフみたいに武器化できるんだ。それに、すごいパワーを持ってて――」
「あーそういう感じね、了解」
男は表情を変えずにうなずくと、ジェーンを指差しながらニヤリと笑った。
「で、アンタは自分の能力を過信して、調子に乗ってるわけね」
ジェーンの顔が一気に険しくなる。
――なに、こいつ?20歳…いやもっと若い…なんでこんなに冷静?
――ひょっとして…
「……なに、その背中のでーーっかい斧を振り回して戦うの?私に当たるかな?」
その問いに、男は肩をすくめて笑みを浮かべた。
「さぁ…やってみないと分からない」
男の挑発的な言葉を聞くと同時に、ジェーンは右手を突き出して、男を切り裂こうとした。
――速い!!!
その動きは疾風の如く速く、普通の人間では目で追うことさえできないだろう。
カインでもギリギリだった。
だが――
「――おっと!」
男は軽く腰を落として、ジェーンの攻撃をかわした。五本の指が空を鋭く切り裂く。
つぎに男は巨大な戦斧を背中から一気に引き抜いた。その動きは想像を超える速さと力で、そのままの勢いでジェーンの右手を弾き飛ばした。
「ッ……やっぱりアンタも超人……!!」
ジェーンは再び突進し、男に向かって手を交互に突き出す。だが、男は落ち着いてその攻撃を斧で受け流し、絶妙なタイミングで後ろへ下がる。明らかに戦い慣れしている者の動きだった。しかし、彼の動きは防御に徹しており、ジェーンの攻撃をかわすばかりだ。
「ほらほらほらほら!!さっきの自信はどこに行った!?」
ジェーンは苛立ちを募らせながら、攻撃を続けるが、一向に決定打を与えられない。男は終始、軽く防御するだけで攻撃に出ようとしない。
「防戦一方で楽しい!?フニャチン野郎ッ!!!」
ジェーンが煽り気味に嘲笑を浮かべたその瞬間、男の表情が一変した。彼の全身が一瞬でピンと張り詰め、今までの余裕を消し去るかのように鋭い眼光をジェーンに向ける。
「お楽しみはこれからだよ」
次の瞬間、男の体が膨れ上がり、全身に見えない力がみなぎる。足元の床板が軋み、周囲の空気が重く感じられるほどの威圧感が漂った。
「能力発動」
そう呟いた男は、一瞬でジェーンの懐に潜り込むと、強烈なボディブローを繰り出した。
ジェーンは咄嗟に両腕を前に出して盾のようにしたが、男は腕と腕の間に剛腕をねじ込む。
「ッ…んぐぁッ!!??」
バキバキバキィッ!!
ジェーンは吹き飛ばされ、バーカウンターを粉砕して奥の事務所に突っ込んだ。どうやら男の拳は、ジェーンのみぞおちを捉えたようだった。今度はジェーンが、床に這いつくばりながら今の状況を整理する番だった。
――なに今の!?私が吹き飛ばされた!?
――肉体の強化か!!
ジェーンは痛みを堪えながら立ち上がろうとするが、男が斧を横に構えて突っ込んでくる。
「終わりだッ!!!」
男は巨大な戦斧を振りかざし、ジェーンの腹部に向けて一気に振った。その一撃は風を切り裂くような音を立て、彼女の胴体を真っ二つにしようとしている。
だが――
ギイィィーーーン!!!
金属の甲高い音が響き渡る。
「……無駄……」
ジェーンの腹部は金属化されており、斧が硬化した体に弾かれたのだ。
「腕だけじゃなくて、全身か…」
男が初めて表情を変えた。少し驚いたようだった。
「その通り…あんたみたいな肉体強化しかできない馬鹿が、私を切り裂けると思った!?」
ジェーンが腕を振ると、男は飛んで後ろに下がった。ジェーンは勝ち誇った笑みを浮かべている。
「相手を一方的に切り裂くのは私よ!!」
「いつだってそう!!これからも!!」
「それなら――」
男は怯むことなく、斧を頭上に振り上げて跳んだ。今度はジェーンの頭に斬りかかろうとしている。
「バカ丸出しね…!!」
ジェーンは上半身全体を金属化させた。だが、男はまるで気にしていない様子だ。
「このまま――お前の首を吹き飛ばしてやる!!」
ジェーンは飛び掛かってくる男に対して、左手で頭と首を守りつつ、右手を構えている。ボクシングのフックの要領で、男の首にカウンターを叩きこむつもりだ。
「ダメだ……」
カインが呟く。跳んだ後は方向転換できない。カインの目には、男が完全に“詰み”にハマったように見えた。
しかし――
「フンッッ!!!」
振り下ろされる斧が急加速する。
男は再び“能力”を使ったようだった。
斧はジェーンの左手を押しのけ――
ゴォォンッッ――!
鈍い音とともに、ジェーンの体が一瞬震えた。
……ブフゥッッ!!!
次の瞬間、ジェーンは白目を剝いて、鼻から鮮血を噴き出した。
「……え……?」
カインには何が起きたか分からなかった。
ジェーンはその場に崩れ落ち、目を見開いたまま動かなくなった。男は斧を肩に担ぎ直し、静かに呟く。
「…まぁ、そうだよな」
「金属化できるのは体表だけ…脳まで金属な訳がない」
体を金属化できても、身体機能が損なわれないように臓器や関節まで変質させていないはずだ。男はそれを見抜き、強烈な脳震盪を起こさせるために、強化した腕力で斧を頭に叩きつけたのだ。
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