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第24話 もう、離さない
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二人の感情が爆発したような激しく濃密な時間が終わり、部屋には静寂が戻っていた。
行為後の少しばかりの気怠さと満たされた幸福感に包まれながら、優斗はぼんやりと天井を眺めていた。
(はぁ……最高だった……)
そう心の中で呟きながら、隣に寝転ぶカエサルの髪をそっと撫でれば、彼は少しくすぐったそうに身動ぎする。
その反応がまた可愛くて、優斗は思わず口元を緩めた。
(もう……俺のものなんだ)
喉から手が出そうな程欲していた、この魅力的な美しい男の全てをようやく自分のものに出来たのだ。
そう思うだけで、優斗の心はこの上なく晴れやかな気持ちになっていく。
(なんか俺……今本当に幸せだわ)
溢れ出そうな程の幸福感で胸をいっぱいにしながら、暫くカエサルの長い髪を梳くように弄んでいた優斗だったが、ふとある事を思い出して手を止める。
「そういえば……さっきシてたとき思ったんすけど――」
「ん?何をだい?」
「俺たち久しぶりのSEXだったじゃないっすか……」
「――?ああ、そうだね、それがなにか?」
優斗の言葉の意味が掴めず不思議そうに首を傾げるカエサルに、優斗は遠慮がちに続けた。
「いや……あの――にしては、カエサルさんのアソコ、けっこう柔らかかったような気が……」
そうなのだ、実はあの時、久しぶりであった筈だったのだが、思った以上にすんなりと飲み込まれた事に、一瞬(あれ?)と内心首を傾げた優斗だったのだが、それよりも自分の欲望と興奮が勝っていたため、そのまま流して行為に集中してしまっていたのだ。
優斗が疑問を口にすると、カエサルはギクリとしたよう表情をみせた。
「え……そうかい?……気のせいじゃないかな……?」
そう答えるカエサルの歯切れの悪さに、優斗はやはり何かあるのだろうと察する。
「……カエサルさん……もしかして、ここ使ってたとか?」
探るように質問をすると、カエサルは頬をピクリと小さく痙攣させ、そのままバツが悪そうにフイと顔を逸らせてしまったのだが、その頬が赤く染まっているのを優斗は見逃さなかった。
そのカエサルの反応に自分の考えが間違っていない事を確信した優斗は、思わずニヤニヤと口元を緩めてしまう。
「へぇ……そうなんだ?カエサルさん、自分で後ろ弄ってたんだな?」
「――っ!そ、それは……」
どうやら図星だったようだ――カエサルは言葉を詰まらせ、なにか反論しようと目を泳がせながら言葉を探していた様子であったが、やがて観念したのか小さく溜息を吐くと顔を赤くしたままコクリと頷いた。
「……その……君と距離を取ってた間、やはりどうしても疼いてしまって……だから、君とシている時を思い出しながら、ね……」
そこまで言うとカエサルは耳まで真っ赤に染めてそのまま黙り込んでしまった。
だが、その沈黙こそが彼の答えだった。
つまり、カエサルは『君とはセフレ以上にはならない』とか『距離を置こう』などと言いながらも、本音では優斗を求めていたのだ。
カエサルの心情を察した優斗は、思わずクスリと笑みを零した。
「やっぱりそうだったんだ……て事は、ホントはずっと俺のこと意識してくれていたって事っすよね?」
「それは……まあ、その……」
歯切れの悪い言葉しか返せないカエサルだったが、その表情はどこかバツが悪そうで、それでいて少し照れているようにも見えた。
そんなカエサルの様子に喜びが溢れて来ると同時に、彼が自分で後ろを慰めている姿を妄想してしまい、再び腰の辺りに熱い疼きを感じてしまう優斗だった。
だが、そんな欲望をグッと抑えつつ、そうなるとまた一つ湧いて来た疑問を口にした。
「でも、じゃあ、なんで『距離を置こう』なんて言って俺の事避けたんすか?」
優斗が問うと、カエサルは困ったように眉を顰めながら「それは……」と口籠った。
だが、やがて覚悟を決めたように大きく息を吐くと、口を開いた。
「怖くなってしまったんだよ――」
そう切り出したカエサルは、ぽつりぽつりと話し出した。
あの激し過ぎる優斗の嫉妬に晒された時、確かにその理不尽さに怒りを抱いたカエサルだったが、同時に己の中に優越感にも似た喜びを感じたのだという――そして、そのまま自分の心に素直になって優斗を受け入れてしまいたい、とさえ思ったそうなのだ。
だが、その時カエサルの中で理性が働き始めたのだとの事だった――このまま優斗を自分と同じような『同性愛者』として世間から差別や偏見に晒される道に引きずり込んでいいのだろうか?――と。
それ程までにこの世界の同性愛者に対する目は厳しいものなのだからだ。
「――だからあの時『今ならまだ間に合うかも』と、『距離を置いて冷静になれば優斗も引き返す事が出来るかもしれない』と思ったんだ……そして私自身もまた、君にのめり込んでしまう前ならば、君が離れていってしまっても傷も浅く済むんじゃないかと、ね――」
そこまでを一気に話し終えると、カエサルは困ったように笑みを浮かべた。
「君には本当に酷い事をしてしまった……結局、私は臆病者なんだよ」
そう言って自嘲気味に笑うカエサルに、優斗は思わず「そんな事ない!」と叫んでいた。
「俺、嬉しいっすよ……だってそれって、俺のために『距離を置く』なんて言ったって事だろ?」
「それは……」
口籠るカエサルの肩を抱き寄せると、優斗はそっとその身体を抱きしめた。
「カエサルさん優しいから、きっと俺のキャリアとか世間体とか、そういうのを心配してくれたんすよね?でも俺、そんなんであんたを諦める気なんて無いっすよ。だから……もう観念して俺に愛されてください」
「ユウト……っ」
優斗のストレートな告白に、カエサルは感極まった様子で瞳を潤ませた。
そんなカエサルの様子に優斗も愛おしさが込み上げてくる。
そのままゆっくりと顔を近づけていけば、カエサルもまたそれに応えるようにそっと目を閉じ、優斗のキスを受け入れる。
「――もう、俺たち『恋人同士』なんすから……これからは遠慮は無しっすよ……」
一旦唇を離して優斗が優しく言い聞かせるように囁くと、カエサルはとても嬉しそうな笑みを見せて「ああ……そうだね」と小さく頷いた。
そして、今度は少し悪戯っぽい笑みを浮かべると、こう続けた。
「ユウト――これからは眼鏡を取った私の前では嘘は吐けないからな――浮気なんてしようものなら一発でわかってしまうからね、覚悟しておくんだよ?」
そう言って目を細めるカエサルの表情は、言葉とは裏腹に優しいものだった。
「へへっ……大丈夫、そんな気はさらさら無いんでね――」
優斗はニッと笑ってカエサルの額にコツンと自分の額をくっつける。
「絶対にあんたを手放したりしないから」
その言葉にカエサルは花が綻ぶように笑った。
(ああ……やっとこの笑顔を見れた)
いつも涼しげな笑みを浮かべている事が多かったカエサルが、こんなにも嬉しそうに笑う事が優斗には何よりも嬉しかった。
そしてまたどちらからともなく唇を重ねていく……。
もうそこには罪悪感や背徳感など無く、ただ純粋な愛だけがそこに存在していた。
そして、二人はお互いの存在を確かめるように強く抱き合いながら、再び深い快楽に溺れていった――。
行為後の少しばかりの気怠さと満たされた幸福感に包まれながら、優斗はぼんやりと天井を眺めていた。
(はぁ……最高だった……)
そう心の中で呟きながら、隣に寝転ぶカエサルの髪をそっと撫でれば、彼は少しくすぐったそうに身動ぎする。
その反応がまた可愛くて、優斗は思わず口元を緩めた。
(もう……俺のものなんだ)
喉から手が出そうな程欲していた、この魅力的な美しい男の全てをようやく自分のものに出来たのだ。
そう思うだけで、優斗の心はこの上なく晴れやかな気持ちになっていく。
(なんか俺……今本当に幸せだわ)
溢れ出そうな程の幸福感で胸をいっぱいにしながら、暫くカエサルの長い髪を梳くように弄んでいた優斗だったが、ふとある事を思い出して手を止める。
「そういえば……さっきシてたとき思ったんすけど――」
「ん?何をだい?」
「俺たち久しぶりのSEXだったじゃないっすか……」
「――?ああ、そうだね、それがなにか?」
優斗の言葉の意味が掴めず不思議そうに首を傾げるカエサルに、優斗は遠慮がちに続けた。
「いや……あの――にしては、カエサルさんのアソコ、けっこう柔らかかったような気が……」
そうなのだ、実はあの時、久しぶりであった筈だったのだが、思った以上にすんなりと飲み込まれた事に、一瞬(あれ?)と内心首を傾げた優斗だったのだが、それよりも自分の欲望と興奮が勝っていたため、そのまま流して行為に集中してしまっていたのだ。
優斗が疑問を口にすると、カエサルはギクリとしたよう表情をみせた。
「え……そうかい?……気のせいじゃないかな……?」
そう答えるカエサルの歯切れの悪さに、優斗はやはり何かあるのだろうと察する。
「……カエサルさん……もしかして、ここ使ってたとか?」
探るように質問をすると、カエサルは頬をピクリと小さく痙攣させ、そのままバツが悪そうにフイと顔を逸らせてしまったのだが、その頬が赤く染まっているのを優斗は見逃さなかった。
そのカエサルの反応に自分の考えが間違っていない事を確信した優斗は、思わずニヤニヤと口元を緩めてしまう。
「へぇ……そうなんだ?カエサルさん、自分で後ろ弄ってたんだな?」
「――っ!そ、それは……」
どうやら図星だったようだ――カエサルは言葉を詰まらせ、なにか反論しようと目を泳がせながら言葉を探していた様子であったが、やがて観念したのか小さく溜息を吐くと顔を赤くしたままコクリと頷いた。
「……その……君と距離を取ってた間、やはりどうしても疼いてしまって……だから、君とシている時を思い出しながら、ね……」
そこまで言うとカエサルは耳まで真っ赤に染めてそのまま黙り込んでしまった。
だが、その沈黙こそが彼の答えだった。
つまり、カエサルは『君とはセフレ以上にはならない』とか『距離を置こう』などと言いながらも、本音では優斗を求めていたのだ。
カエサルの心情を察した優斗は、思わずクスリと笑みを零した。
「やっぱりそうだったんだ……て事は、ホントはずっと俺のこと意識してくれていたって事っすよね?」
「それは……まあ、その……」
歯切れの悪い言葉しか返せないカエサルだったが、その表情はどこかバツが悪そうで、それでいて少し照れているようにも見えた。
そんなカエサルの様子に喜びが溢れて来ると同時に、彼が自分で後ろを慰めている姿を妄想してしまい、再び腰の辺りに熱い疼きを感じてしまう優斗だった。
だが、そんな欲望をグッと抑えつつ、そうなるとまた一つ湧いて来た疑問を口にした。
「でも、じゃあ、なんで『距離を置こう』なんて言って俺の事避けたんすか?」
優斗が問うと、カエサルは困ったように眉を顰めながら「それは……」と口籠った。
だが、やがて覚悟を決めたように大きく息を吐くと、口を開いた。
「怖くなってしまったんだよ――」
そう切り出したカエサルは、ぽつりぽつりと話し出した。
あの激し過ぎる優斗の嫉妬に晒された時、確かにその理不尽さに怒りを抱いたカエサルだったが、同時に己の中に優越感にも似た喜びを感じたのだという――そして、そのまま自分の心に素直になって優斗を受け入れてしまいたい、とさえ思ったそうなのだ。
だが、その時カエサルの中で理性が働き始めたのだとの事だった――このまま優斗を自分と同じような『同性愛者』として世間から差別や偏見に晒される道に引きずり込んでいいのだろうか?――と。
それ程までにこの世界の同性愛者に対する目は厳しいものなのだからだ。
「――だからあの時『今ならまだ間に合うかも』と、『距離を置いて冷静になれば優斗も引き返す事が出来るかもしれない』と思ったんだ……そして私自身もまた、君にのめり込んでしまう前ならば、君が離れていってしまっても傷も浅く済むんじゃないかと、ね――」
そこまでを一気に話し終えると、カエサルは困ったように笑みを浮かべた。
「君には本当に酷い事をしてしまった……結局、私は臆病者なんだよ」
そう言って自嘲気味に笑うカエサルに、優斗は思わず「そんな事ない!」と叫んでいた。
「俺、嬉しいっすよ……だってそれって、俺のために『距離を置く』なんて言ったって事だろ?」
「それは……」
口籠るカエサルの肩を抱き寄せると、優斗はそっとその身体を抱きしめた。
「カエサルさん優しいから、きっと俺のキャリアとか世間体とか、そういうのを心配してくれたんすよね?でも俺、そんなんであんたを諦める気なんて無いっすよ。だから……もう観念して俺に愛されてください」
「ユウト……っ」
優斗のストレートな告白に、カエサルは感極まった様子で瞳を潤ませた。
そんなカエサルの様子に優斗も愛おしさが込み上げてくる。
そのままゆっくりと顔を近づけていけば、カエサルもまたそれに応えるようにそっと目を閉じ、優斗のキスを受け入れる。
「――もう、俺たち『恋人同士』なんすから……これからは遠慮は無しっすよ……」
一旦唇を離して優斗が優しく言い聞かせるように囁くと、カエサルはとても嬉しそうな笑みを見せて「ああ……そうだね」と小さく頷いた。
そして、今度は少し悪戯っぽい笑みを浮かべると、こう続けた。
「ユウト――これからは眼鏡を取った私の前では嘘は吐けないからな――浮気なんてしようものなら一発でわかってしまうからね、覚悟しておくんだよ?」
そう言って目を細めるカエサルの表情は、言葉とは裏腹に優しいものだった。
「へへっ……大丈夫、そんな気はさらさら無いんでね――」
優斗はニッと笑ってカエサルの額にコツンと自分の額をくっつける。
「絶対にあんたを手放したりしないから」
その言葉にカエサルは花が綻ぶように笑った。
(ああ……やっとこの笑顔を見れた)
いつも涼しげな笑みを浮かべている事が多かったカエサルが、こんなにも嬉しそうに笑う事が優斗には何よりも嬉しかった。
そしてまたどちらからともなく唇を重ねていく……。
もうそこには罪悪感や背徳感など無く、ただ純粋な愛だけがそこに存在していた。
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