懐古主義オッサンと中二病JKは、上級職として召喚させられても、無双なんてしない

椎名 富比路

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第二章 銃と仲間をゲット! なのに相方が聖剣・魔剣に夢中で草

第10話 乱れ撃ち

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 ルイーゼが、盾を前方に構えて、剣を抜く。見た目は刀っぽいが、聖剣らしい。刀身に祝福の言葉が刻まれていて、柄の装飾も美しかった。

「クニミツ! 刀、刀!」

 おお、モモコが興奮しているぜ。
 
「この刀が、気になるか?」

 ルイーゼが、剣をよく見せてくれた。

「これは聖剣【ゼファー】といってな。文字通り【風神ゼファー】の力がこもっている。嵐を起こせるのだぞ」

 剣自体に、そこまでの強度はないらしい。しかし、魔法の威力は高いという。

「サイズからして、長ドスだな」

 デザインは刀身が湾曲していて、ドスと言うにはファンタジックである。

 そういうファイトスタイルも、あるとは。

「刀かー。うらやま」

 この事態に、モモコはルイーゼの剣に見とれている。

「気になるか?」

「聖剣とか、魔剣とか、刀とか、そそるっ」

「ドロップできたらいいよな。あるいは、自分で作ってみるか」

「ひとまずドロップアイテムで、この世界の美的センスを知る。学びつつ、自作する」

 それでこそ、中二病だ。


「いいモジャ。異界への扉が開いたモジャ」

 世界の裏側への、道ができる。

「わたしが先行する。二人は――」

 ルイーゼの言葉を待たず、オレたちは突撃した。
 
「突っ込むぞ、モモコ」

「クニミツの方こそ、遅れないで」

 敵発見。先日と同じく、オーガだ。

「くらえ!」

 さっそくオレは、リボルバーをぶっぱなす。ドシンという思い感触がオレの骨に響く。これでこそ重火器だ!

 眉間を撃ち抜かれ、オーガが足から崩れ落ちる。

 二撃目で、オレは心臓を撃ち抜く。トドメを刺すことも忘れない。

「すごいじゃん、クニミツ」

「たまたまだ」

 こちらが銃を持っていないと思って、油断したのだろう。おそらくもう、この戦法は通じない。ここからは、戦闘スキルを上げなければ。
 
 モモコは殺傷能力の低いオートマチックを連射した。相手をハチの巣にする。

 敵は、穴だらけになっていた。もう生きてはいまい。

「銃スキルが、ツリーに出現したね」

 拳銃を装備したことで、新しい武器スキルが更新されたようだ。

 ひとまず、なるべく多くポイントを振る。主に、命中精度を上げた。当たらなければ、どうにもならない。

「モンスターも射撃武器を、ドロップするようになったっぽい。弾もマガジンも共通」

 武器の手入れをしながら、モモコが教えてくれる。

 いらない武器の代わりに、弾倉がドロップするようになったらしい。

 だったら、その都度強い武器に変換すればいいか。 

 オレたちは、敵が落としたアイテムを回収する。
 
 手甲と一体化した盾は、使えそうだ。これは、オレがもらっておく。

「今のは、なんだ? 弓か? 小石サイズのファイアーボールか?」

 銃撃を見たことがないのだろう。ルイーゼが真っ青な顔になっている。

「あれは銃という武器だモジャ。オイラも初めて見たときは、鳥肌モジャ」

 ウニボーが、身を震わせた。

「弱い魔力石の指輪しか、出なかった」

 モモコが、ドロップ品に不満を漏らす。
 
「そうそう。オイラには【アイテム掘り】のスキルがあるモジャ。
 
 ウニボーが、敵の死体をモシャモシャと食べ始めた。血液などは出ない、レイティングに配慮した上品な食い方である。

「出たモジャ」

「おお、ちょっといい感じの魔剣が手に入ったぞ」

 龍の巻き付いた、両刃のナイフだ。修学旅行の土産屋などで見かけるキーホルダーの、実用品版といえるか。

「短剣じゃんっ。武器レベルも低っく。ああでもっ、このフォルムはそそるかも?」

 オレが手甲、モモコは迷った挙げ句、結局魔剣を手に取った。まあ、今後使う武具の素材にはなるだろう。

 新武装を手に、先へ急ぐ。

「あんたの装備は、それでいいか?」

「大丈夫だ」

 新しくなったプレートメイルを、ルイーゼは着込んでいた。オレたちが自分たちの装備品とにらめっこを続けていたのは、ルイーゼの着替えを待っていたからである。

 ルイは、身長がオレと同じくらい高い。一七九はあるのではないか。バスケ部の女子くらいはタッパがある。
 エルフのドリスさんほどスラリと尖っておらず、体型がムチッとしていてラインが丸っこい。全体的に、グラマラスである。
 こんな人が魔物に捕まったら、『くっころ』必至だ。

 とにかく、先へ進む。

「ゾンビが山盛りで出てきた!」

 百匹はいるだろうゾンビが、襲いかかってきた。顔が人間ではないから、グールかもしれない。

「撃ち尽くせ! 【乱れ撃ち】!」

 正面の敵集団に、集中砲火を続けた。

 面白いくらいに、ゾンビたちが溶けていく。

「リロード!」
 
 尖った岩に隠れて、モモコがマガジンを交換した。

「こっちもだ!」

 リボルバーなので、オレのほうが弾切れが早い。ザコ相手なら、モモコの方が早いか。

「【オーラ・スマッシュ】!」

 ルイーゼが、前方のゾンビに向かって、剣を横方向へ凪ぐ。

 オレンジ色に光る衝撃波が、ゾンビの胴体を焼き払った。
 
「うわ、すご」

 あっという間にゾンビが全滅し、道が拓ける。

「この聖剣【ナイトメア・スレイヤー】に、セットされている技だ。遠隔攻撃は、キミたちだけの技ではない」

 悪夢を断つ剣か。

「くう、私も銃に二つ名が欲しい。クロス・ストリングス、デュアルヘッド・シャーク、う~ん」

 対抗しているが、モモコも武器に名前をつけ始める。ろくな名前が出ないようだ。モモコよ、勝負するとことはそこじゃない。

「そういえば、オレもレベルが上ったんだった」

 取りたかったスキルに、ポイントを割り振った。

 まだまだ、ゾンビは溢れてくる。

 これこれ。この大軍団密集こそ、洋ゲーよ。

「くらえ! 【パニッシュ・サンダー】!」

 オレは、大剣を振り下ろす。

 攻撃エフェクトの上空から、雷が飛来した。

 雷に打たれて、オレを囲んでいたゾンビが一瞬で灰になる。

「すっご。なにその技?」

「パラディンの、魔法付加攻撃だな。武器の命中率に関係なく、自分の周辺に雷を落とすスキルだ」

 ゾンビを全滅させたので、先を急いだ。

 両側に崖を挟んだ、細い道を通る。崖の下は霧が立ち込めていて、底が見えない。水の音がするから川のような気がするが。

 カーブを抜けて襲ってくるオーガどもを、銃で撃った。
 
 念じるだけで武器の切り替えが一瞬でできるのは、かなり便利だな。いちいち、装備を持ち直さなくていい。

 撃たれた反動で、オーガの一体が崖の下へ落ちていく。

「しまった。アイテムが」
 
「大丈夫モジャ。倒した地点にドロップするモジャ」

 とはいえ、落としたのは金だけ。アイテムはゲットできなかった。死体がなくなったため、ウニボーに追加で探してもらうこともできない。

「ここは地上とは違う世界モジャ。崖の下に落ちたら、どこへ行くかわからないモジャ」

 なら、落ちないほうがいいな。

「敵が、あまりいいアイテムを落とさなくなった」

 ある程度装備品が完成し、ほかは換金するものしか出なくなっていた。

「じゃあ、【アイテム制御】をするモジャ」

 レア以下のアイテムを、表示しなくできるらしい。落ちたアイテムはスキルの効果により、勝手に金か素材、ポーション系に変わるという。

 オレたちが倒すと、弾薬になった。

 崖を抜けると、広い陸地に着く。

 五二体のオーガ、一〇匹のデカいクモ、二〇〇体のゾンビ、七〇体のグールが集まってきた。

 モンスターは大群な上に、個々のレベルも高い。

「こちらのレベルは、まだ八か。ギリギリだな」

 敵も強くなっている。戦いながら、レベルを上げていくか。

「魔術師タイプが出たよ! あいつだけ、レベル【一六】だって!」

「マジで!? こっちの倍じゃねえか!」

 魔物の大群の後ろに、ツインテールのような角を持った魔女がいる。洋ゲーの敵みたいな造形で、女性キャラなのに萌えない。

 このバタ臭さも、オレはキライじゃないぜ。

 まあ、倒すけどな!
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