22 / 30
第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う
第22話 スケルトン夫婦が、仲間に
しおりを挟む
モモコらしき人物が、着地の体勢のままヴリトラとにらみ合う。
紫の忍装束に身を包んだ姿は、たしかにモモコとうり二つと言えた。しかし、雰囲気は似ていない。実物より、もっとシリアスめな印象である。
深手を負ったヴリトラは、進撃をやめた。
「こうも被害が出るとは。仕切り直しと行くか。だが、次はこうはいかん!」
騎士ヴリトラが、退散する。
モモコによく似たクノイチが、こちらへ振り返った。かと思えば、ヴリトラのいる方角へと跳躍しながら追跡に向かう。
「待ってくれ!」
「待つのは、クニミツのほうよ! 止まって!」
オレは追いかけようとしたが、ピエラに止められる。
「あなたはパラディンでしょ? こちらを優先したほうがいいわ」
負傷者が、多数いた。あの怪物たちを止めようと、冒険者や騎士たちが派遣されたのだろう。
「みんな、こっちに集まって」
傷の浅い冒険者たちを、モモコが一箇所に集めた。
「なにをする気だ、モモコ?」
「水鉄砲ポーション! えいえい」
モモコが、二丁の【水鉄砲】からポーションを散布した。
「お前のやりたいことは、わかったぜ。水鉄砲にポーションを混ぜたらいいんだな?」
「エリクサーでも可」
「いいな、それ! 余るくらいなら、ぶち撒けてやる!」
傷が深い者から順に、ケガ人を治療をしていく。ポーションだろうがエリクサーだろうが、使ってくれ!
「まさか、【水鉄砲】が役に立つとは」
戯れの一環として、港町の司教の教会へ寄付したのだ。
水鉄砲は【火炎放射器】の応用で、偶然できあがったものである。射出時の調節用に、開発してみた。
ルイーゼの知り合いであるロリ司教様が、水鉄砲に興味を示したのである。幼稚舎の子どもたちに、遊ばせてやりたいと。
モモコが効率化をはかって、水鉄砲にポーションを混ぜたのだ。水鉄砲でシャワーのように、ポーションを振りかける。
「クニミツ。ちょっと見てほしいものがあるの」
女性魔術師の死体を、ピエラは指さした。
オレたちは、武道家の死体も確認している。
王都の騎士たちからも、犠牲者が出ていた。
「この人たち、蘇生できないかしら?」
そうか。【世界の裏側】の関係者に殺されたのなら、生き返らせることができるかも。
王都へ行く前に、彼らを蘇生してもらおうとワントープへ戻った。
長旅は不要で、ウニボーのポータルで一発である。
ヴリトラによって、騎士一八名、冒険者二名が命を落とした。
被害は最小限に食い止められたようだが、彼らにとって最大戦力を失ったそうである。
信頼の置ける冒険者だったのだろう。
「クニミツ、例の私そっくりなクノイチだけど」
「ああ。ナニモンなんだろうな?」
オレたちの前に現れたクノイチは、見た目こそモモコではある。が、モモコではないとわかる。紫のミニスカ忍装束なんて、モモコの趣味じゃない。だが強さは、今いるメンバーでも最強だろう。しかし、何者なのか。
「私の趣味じゃない」
「同感だな」
あの格好は、オレたちどちらの琴線には微妙に触れない。
「オレはクノイチっつったら、全身ぴっちりスーツがいいんだ。近未来型の武器とか持っていて、剣も蛇腹剣とかがいいな」
全身ラバースーツのモモコを連想して、思わすドキドキしそうになった。
「昔のエロゲーのやりすぎだね」
たしかに、否定はできんが。
「そういうモモコはどうなんだよ?」
「私は、もうちょっと普段着でも通用しそうな衣装がいい。武器はあのままでいいけど、身分を隠しつつ今を生きている。有事の際に、ニンジャに変わる感じ」
「変身ヒロイン的なやつか?」
プライベートとバトルパートで、衣装を切り替える感じか。
「そうそう。キツネ耳とか生えるの」
「獣人かっ! その手があったか」
寺院に到着した。さっそく、蘇生を依頼する。
結論から言うと、騎士隊は誰も生き返らなかった。
やはり、世界の裏側で死んだことにならないと、ダメのようだ。
「どういう法則なの、モジャモジャ?」
「この大地の下で死んでいなかったら、神様に死んだとカウントされないモジャ」
なるほど。そういう抜け道を縫って、蘇生させているのか。
しかし、騎士たちは地上で死んでいた。よって、蘇生は不可能だったと。
「申し訳ありません。お力になりたかったのですが」
「あんたのせいじゃない」
悪いのは、ヴリトラだ。
「ただ、この二人ならあるいは。何かしら未練があるようですので」
次に司教様は、格闘家と魔法使いの蘇生を試みる。
しかし……。
「おお、なんという」
司教様も、驚く結果に。
起き上がったのは、全身骨のモンスターだ。
なんと、死体がスケルトンになってしまったのである。
「あっしは、スケロクと呼んでくだせえ」
「妻の、スケチヨどす」
東男に京女のスケルトン夫妻が、爆誕した。
寺院で冒険者を組成させようとしたら、まさかスケルトン化するとは。
「お前ら、なんともないのか?」
「ええ。むしろ肉体から解放されて、スカッとしてまさあ。ありがてえ」
スケロクと名乗ったスケルトンは、感謝の言葉を口にした。
「モジャモジャ、これってどういうこと? 彼らは敵?」
「モンスターの反応はないモジャ。彼らは召喚獣扱いモジャ」
ウニボーが、モモコの問いかけに答えた。
「なんで、元の名前じゃないんだ?」
冒険者のプレートがあったが、スケルトン夫妻はオレたちに返してくる。
「蘇生に失敗したってわかって、仲間に悲しい思いをさせたくないんでさあ」
「ウチらはこの姿で、第二の人生を歩みますえ」
なら、仕方ないか。これは、彼らの仲間たちに返そう。
「まさか、ネクロマンシーなんて」
だが、納得していない方がお一人。
「これは奇跡? それとも、魂の冒涜?」
頭をクラクラさせながら、司教様は目を回す。
「おそらく、世界の裏側では死んでないから、魂だけは回収できたモジャ。でも肉体の再生はできなかったモジャ」
だから、気に病むことはないと、ウニボーは司教様を慰める。
「ああ、おそらくあっしらが二人共、闇属性の冒険者だからでしょう。あっしがアサシンで、家内はネクロマンサーでしたから」
神を冒涜していたのは自分たちだと、スケルトン二人は司教様を説得する。
「な、なるほど」
司教様は、ようやく正気を取り戻したようだ。
「でも、そのまま歩いていたら、モンスター扱いになるよな?」
「こうするモジャ」
ウニボーが、スケルトンの額に光る宝石を埋め込んだ。使役魔法だという。
「これで、街の人にはモブに見えるモジャ。冒険者には、召還獣のスケルトンと認識されるモジャ。敵側に操られることもないモジャー」
「ありがてえ。なにからなにまで世話してもらって」
額についた宝石を指でなでながら、スケロクは感謝をした。
「ちょっとまてよ。闇属性がスケルトンになるんだったら……」
オレは、考えを巡らせてゾッとした。
「ほら、やっぱりオレが正しかったんじゃねえか!」
スキュラ戦のことを、オレはモモコに話す。
モモコが犠牲になって蘇生してもらっても、スケルトンになっていた可能性が高い。
その事実に、さすがのモモコも冷や汗をかく。
冒険者ギルドへ。
一旦、スケロクたちには領地へ行ってもらう。
スケロクたちの仲間に、ドッグタグを渡した。
「あ、ありがとう。ありがとう。でも……」
タグを抱いて、剣士がうずくまる。
「遺体の回収はできなかった」
オレは、嘘をつく。
とはいえ剣士は、理解してくれたようだ。
手頃な家を購入して、領地への拠点とした。領地へと戻る。
「ホントに、別れのあいさつとかはいいのか?」
「日陰モンのあっしらを、これまで面倒見ていてくれたんでさあ。そろそろ、肩の荷をおろしてやらねえと。無事で逃げ切ってくれただけでも、あっしらは仕事を全うしたってもんでさあ」
彼ら冒険者たちも、苦労していたのか。
「で、誰の召還獣になるんだ?」
「おそらく、ピエラ?」
モモコの意見が、妥当だろう。彼女が第一発見者だ。
「ボクの? いいの?」
「いいもなにも、一番敵に狙われやすいのはお前だ。魔術の要だからな」
「ありがとう。じゃあスケロク、スケチヨ、よろしくね」
ピエラが言うと、「こちらこそ」と二人共返す。
「武器などの装備品も、スケルトンに持たせて使えるモジャ」
「じゃ、装備品の新調だな」
オレたちは【作業台】で、スケロクたちの装備を改造を始めた。【かまど】にも、火をつける。
「強化素材がめちゃくちゃ手に入ったから、これで行こう」
かまどに、強化素材を放り込む。
「で、どうするのクニミツ? スケルトンを王都まで連れ回す?」
「それなんだよなぁ。やっぱ、難しいな」
かまどで装備を強化しながら、オレはあぐらをかく。
スケルトンを連れ歩いたら、王宮の術者に看破される可能性も高い。王都の魔術師がどれだけの実力かは、謎だ。とはいえ、用心するに越したことはないだろう。
「ネクロマンサーは、王都ではよく思われていない?」
モモコがスケキヨから、ネクロマンサーについて聞く。
「王都というより、教会や寺院では、あまりいい顔はされまへんえ」
スケルトン召喚は、暗黒系の魔法に分類されるらしい。寺院などの神聖系魔法の使い手からは、禁忌呼ばわりされている。死者を冒涜していると。
それでも、「手数が増えるのはいいことだ」と、ネクロマンサーに手を出す人は後を絶たない。
「考えたんだけど、【世界の裏側】の攻略時だけ呼び出すことにするわ。それまでは、こちらでお留守番をしてもらいましょ」
「それが一番いいかもな」
一応ウニボーにも許可をもらう。
「歓迎するモジャ」
精霊たちも、彼らに敵意を抱いていないらしい。ならば、OKか。
「手裏剣か。いいな」
武器の中に、見知った道具を見つけた。こんなのを使いこなすのだ。生前のスケロクは、たいした実力者だったのだろう。
「ですが、あのニンジャ相当な腕前ですぜ。なんですかいありゃあ?」
「こっちが聞きたいよ」
それにしても、あのクノイチはいったい。
「王都で、情報を集めよう」
「だな」
装備が完成したので、スケルトン夫妻に渡した。
「ありがてえ。見違えましたぜ」
全身プロテクターを身につけて、スケロクがポーズを決める。
「おお、生前の装備より決まってはるわ。手に持った瞬間、力がみなぎりますえ。おおきに」
サイバーなパーカー型ローブ姿のスケチヨも、ごきげんだった。
改めて、王都の冒険者ギルドへ足を運んだ。
「クニミツさま、モモコさま、ちょうどいいところに!」
早々に、受付嬢に呼び出された。
「王都直属の騎士が、みなさんを呼んでいます」
紫の忍装束に身を包んだ姿は、たしかにモモコとうり二つと言えた。しかし、雰囲気は似ていない。実物より、もっとシリアスめな印象である。
深手を負ったヴリトラは、進撃をやめた。
「こうも被害が出るとは。仕切り直しと行くか。だが、次はこうはいかん!」
騎士ヴリトラが、退散する。
モモコによく似たクノイチが、こちらへ振り返った。かと思えば、ヴリトラのいる方角へと跳躍しながら追跡に向かう。
「待ってくれ!」
「待つのは、クニミツのほうよ! 止まって!」
オレは追いかけようとしたが、ピエラに止められる。
「あなたはパラディンでしょ? こちらを優先したほうがいいわ」
負傷者が、多数いた。あの怪物たちを止めようと、冒険者や騎士たちが派遣されたのだろう。
「みんな、こっちに集まって」
傷の浅い冒険者たちを、モモコが一箇所に集めた。
「なにをする気だ、モモコ?」
「水鉄砲ポーション! えいえい」
モモコが、二丁の【水鉄砲】からポーションを散布した。
「お前のやりたいことは、わかったぜ。水鉄砲にポーションを混ぜたらいいんだな?」
「エリクサーでも可」
「いいな、それ! 余るくらいなら、ぶち撒けてやる!」
傷が深い者から順に、ケガ人を治療をしていく。ポーションだろうがエリクサーだろうが、使ってくれ!
「まさか、【水鉄砲】が役に立つとは」
戯れの一環として、港町の司教の教会へ寄付したのだ。
水鉄砲は【火炎放射器】の応用で、偶然できあがったものである。射出時の調節用に、開発してみた。
ルイーゼの知り合いであるロリ司教様が、水鉄砲に興味を示したのである。幼稚舎の子どもたちに、遊ばせてやりたいと。
モモコが効率化をはかって、水鉄砲にポーションを混ぜたのだ。水鉄砲でシャワーのように、ポーションを振りかける。
「クニミツ。ちょっと見てほしいものがあるの」
女性魔術師の死体を、ピエラは指さした。
オレたちは、武道家の死体も確認している。
王都の騎士たちからも、犠牲者が出ていた。
「この人たち、蘇生できないかしら?」
そうか。【世界の裏側】の関係者に殺されたのなら、生き返らせることができるかも。
王都へ行く前に、彼らを蘇生してもらおうとワントープへ戻った。
長旅は不要で、ウニボーのポータルで一発である。
ヴリトラによって、騎士一八名、冒険者二名が命を落とした。
被害は最小限に食い止められたようだが、彼らにとって最大戦力を失ったそうである。
信頼の置ける冒険者だったのだろう。
「クニミツ、例の私そっくりなクノイチだけど」
「ああ。ナニモンなんだろうな?」
オレたちの前に現れたクノイチは、見た目こそモモコではある。が、モモコではないとわかる。紫のミニスカ忍装束なんて、モモコの趣味じゃない。だが強さは、今いるメンバーでも最強だろう。しかし、何者なのか。
「私の趣味じゃない」
「同感だな」
あの格好は、オレたちどちらの琴線には微妙に触れない。
「オレはクノイチっつったら、全身ぴっちりスーツがいいんだ。近未来型の武器とか持っていて、剣も蛇腹剣とかがいいな」
全身ラバースーツのモモコを連想して、思わすドキドキしそうになった。
「昔のエロゲーのやりすぎだね」
たしかに、否定はできんが。
「そういうモモコはどうなんだよ?」
「私は、もうちょっと普段着でも通用しそうな衣装がいい。武器はあのままでいいけど、身分を隠しつつ今を生きている。有事の際に、ニンジャに変わる感じ」
「変身ヒロイン的なやつか?」
プライベートとバトルパートで、衣装を切り替える感じか。
「そうそう。キツネ耳とか生えるの」
「獣人かっ! その手があったか」
寺院に到着した。さっそく、蘇生を依頼する。
結論から言うと、騎士隊は誰も生き返らなかった。
やはり、世界の裏側で死んだことにならないと、ダメのようだ。
「どういう法則なの、モジャモジャ?」
「この大地の下で死んでいなかったら、神様に死んだとカウントされないモジャ」
なるほど。そういう抜け道を縫って、蘇生させているのか。
しかし、騎士たちは地上で死んでいた。よって、蘇生は不可能だったと。
「申し訳ありません。お力になりたかったのですが」
「あんたのせいじゃない」
悪いのは、ヴリトラだ。
「ただ、この二人ならあるいは。何かしら未練があるようですので」
次に司教様は、格闘家と魔法使いの蘇生を試みる。
しかし……。
「おお、なんという」
司教様も、驚く結果に。
起き上がったのは、全身骨のモンスターだ。
なんと、死体がスケルトンになってしまったのである。
「あっしは、スケロクと呼んでくだせえ」
「妻の、スケチヨどす」
東男に京女のスケルトン夫妻が、爆誕した。
寺院で冒険者を組成させようとしたら、まさかスケルトン化するとは。
「お前ら、なんともないのか?」
「ええ。むしろ肉体から解放されて、スカッとしてまさあ。ありがてえ」
スケロクと名乗ったスケルトンは、感謝の言葉を口にした。
「モジャモジャ、これってどういうこと? 彼らは敵?」
「モンスターの反応はないモジャ。彼らは召喚獣扱いモジャ」
ウニボーが、モモコの問いかけに答えた。
「なんで、元の名前じゃないんだ?」
冒険者のプレートがあったが、スケルトン夫妻はオレたちに返してくる。
「蘇生に失敗したってわかって、仲間に悲しい思いをさせたくないんでさあ」
「ウチらはこの姿で、第二の人生を歩みますえ」
なら、仕方ないか。これは、彼らの仲間たちに返そう。
「まさか、ネクロマンシーなんて」
だが、納得していない方がお一人。
「これは奇跡? それとも、魂の冒涜?」
頭をクラクラさせながら、司教様は目を回す。
「おそらく、世界の裏側では死んでないから、魂だけは回収できたモジャ。でも肉体の再生はできなかったモジャ」
だから、気に病むことはないと、ウニボーは司教様を慰める。
「ああ、おそらくあっしらが二人共、闇属性の冒険者だからでしょう。あっしがアサシンで、家内はネクロマンサーでしたから」
神を冒涜していたのは自分たちだと、スケルトン二人は司教様を説得する。
「な、なるほど」
司教様は、ようやく正気を取り戻したようだ。
「でも、そのまま歩いていたら、モンスター扱いになるよな?」
「こうするモジャ」
ウニボーが、スケルトンの額に光る宝石を埋め込んだ。使役魔法だという。
「これで、街の人にはモブに見えるモジャ。冒険者には、召還獣のスケルトンと認識されるモジャ。敵側に操られることもないモジャー」
「ありがてえ。なにからなにまで世話してもらって」
額についた宝石を指でなでながら、スケロクは感謝をした。
「ちょっとまてよ。闇属性がスケルトンになるんだったら……」
オレは、考えを巡らせてゾッとした。
「ほら、やっぱりオレが正しかったんじゃねえか!」
スキュラ戦のことを、オレはモモコに話す。
モモコが犠牲になって蘇生してもらっても、スケルトンになっていた可能性が高い。
その事実に、さすがのモモコも冷や汗をかく。
冒険者ギルドへ。
一旦、スケロクたちには領地へ行ってもらう。
スケロクたちの仲間に、ドッグタグを渡した。
「あ、ありがとう。ありがとう。でも……」
タグを抱いて、剣士がうずくまる。
「遺体の回収はできなかった」
オレは、嘘をつく。
とはいえ剣士は、理解してくれたようだ。
手頃な家を購入して、領地への拠点とした。領地へと戻る。
「ホントに、別れのあいさつとかはいいのか?」
「日陰モンのあっしらを、これまで面倒見ていてくれたんでさあ。そろそろ、肩の荷をおろしてやらねえと。無事で逃げ切ってくれただけでも、あっしらは仕事を全うしたってもんでさあ」
彼ら冒険者たちも、苦労していたのか。
「で、誰の召還獣になるんだ?」
「おそらく、ピエラ?」
モモコの意見が、妥当だろう。彼女が第一発見者だ。
「ボクの? いいの?」
「いいもなにも、一番敵に狙われやすいのはお前だ。魔術の要だからな」
「ありがとう。じゃあスケロク、スケチヨ、よろしくね」
ピエラが言うと、「こちらこそ」と二人共返す。
「武器などの装備品も、スケルトンに持たせて使えるモジャ」
「じゃ、装備品の新調だな」
オレたちは【作業台】で、スケロクたちの装備を改造を始めた。【かまど】にも、火をつける。
「強化素材がめちゃくちゃ手に入ったから、これで行こう」
かまどに、強化素材を放り込む。
「で、どうするのクニミツ? スケルトンを王都まで連れ回す?」
「それなんだよなぁ。やっぱ、難しいな」
かまどで装備を強化しながら、オレはあぐらをかく。
スケルトンを連れ歩いたら、王宮の術者に看破される可能性も高い。王都の魔術師がどれだけの実力かは、謎だ。とはいえ、用心するに越したことはないだろう。
「ネクロマンサーは、王都ではよく思われていない?」
モモコがスケキヨから、ネクロマンサーについて聞く。
「王都というより、教会や寺院では、あまりいい顔はされまへんえ」
スケルトン召喚は、暗黒系の魔法に分類されるらしい。寺院などの神聖系魔法の使い手からは、禁忌呼ばわりされている。死者を冒涜していると。
それでも、「手数が増えるのはいいことだ」と、ネクロマンサーに手を出す人は後を絶たない。
「考えたんだけど、【世界の裏側】の攻略時だけ呼び出すことにするわ。それまでは、こちらでお留守番をしてもらいましょ」
「それが一番いいかもな」
一応ウニボーにも許可をもらう。
「歓迎するモジャ」
精霊たちも、彼らに敵意を抱いていないらしい。ならば、OKか。
「手裏剣か。いいな」
武器の中に、見知った道具を見つけた。こんなのを使いこなすのだ。生前のスケロクは、たいした実力者だったのだろう。
「ですが、あのニンジャ相当な腕前ですぜ。なんですかいありゃあ?」
「こっちが聞きたいよ」
それにしても、あのクノイチはいったい。
「王都で、情報を集めよう」
「だな」
装備が完成したので、スケルトン夫妻に渡した。
「ありがてえ。見違えましたぜ」
全身プロテクターを身につけて、スケロクがポーズを決める。
「おお、生前の装備より決まってはるわ。手に持った瞬間、力がみなぎりますえ。おおきに」
サイバーなパーカー型ローブ姿のスケチヨも、ごきげんだった。
改めて、王都の冒険者ギルドへ足を運んだ。
「クニミツさま、モモコさま、ちょうどいいところに!」
早々に、受付嬢に呼び出された。
「王都直属の騎士が、みなさんを呼んでいます」
10
あなたにおすすめの小説
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる