懐古主義オッサンと中二病JKは、上級職として召喚させられても、無双なんてしない

椎名 富比路

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第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う

第22話 スケルトン夫婦が、仲間に

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 モモコらしき人物が、着地の体勢のままヴリトラとにらみ合う。
 
 紫の忍装束に身を包んだ姿は、たしかにモモコとうり二つと言えた。しかし、雰囲気は似ていない。実物より、もっとシリアスめな印象である。

 深手を負ったヴリトラは、進撃をやめた。

「こうも被害が出るとは。仕切り直しと行くか。だが、次はこうはいかん!」

 騎士ヴリトラが、退散する。

 モモコによく似たクノイチが、こちらへ振り返った。かと思えば、ヴリトラのいる方角へと跳躍しながら追跡に向かう。

「待ってくれ!」

「待つのは、クニミツのほうよ! 止まって!」

 オレは追いかけようとしたが、ピエラに止められる。

「あなたはパラディンでしょ? こちらを優先したほうがいいわ」

 負傷者が、多数いた。あの怪物たちを止めようと、冒険者や騎士たちが派遣されたのだろう。

「みんな、こっちに集まって」
 
 傷の浅い冒険者たちを、モモコが一箇所に集めた。

「なにをする気だ、モモコ?」

「水鉄砲ポーション! えいえい」

 モモコが、二丁の【水鉄砲】からポーションを散布した。

「お前のやりたいことは、わかったぜ。水鉄砲にポーションを混ぜたらいいんだな?」

「エリクサーでも可」

「いいな、それ! 余るくらいなら、ぶち撒けてやる!」

 傷が深い者から順に、ケガ人を治療をしていく。ポーションだろうがエリクサーだろうが、使ってくれ!

「まさか、【水鉄砲】が役に立つとは」

 戯れの一環として、港町の司教の教会へ寄付したのだ。
 水鉄砲は【火炎放射器】の応用で、偶然できあがったものである。射出時の調節用に、開発してみた。
 ルイーゼの知り合いであるロリ司教様が、水鉄砲に興味を示したのである。幼稚舎の子どもたちに、遊ばせてやりたいと。

 モモコが効率化をはかって、水鉄砲にポーションを混ぜたのだ。水鉄砲でシャワーのように、ポーションを振りかける。

「クニミツ。ちょっと見てほしいものがあるの」

 女性魔術師の死体を、ピエラは指さした。
 
 オレたちは、武道家の死体も確認している。

 王都の騎士たちからも、犠牲者が出ていた。

「この人たち、蘇生できないかしら?」

 そうか。【世界の裏側】の関係者に殺されたのなら、生き返らせることができるかも。


 王都へ行く前に、彼らを蘇生してもらおうとワントープへ戻った。

 長旅は不要で、ウニボーのポータルで一発である。

 ヴリトラによって、騎士一八名、冒険者二名が命を落とした。
 被害は最小限に食い止められたようだが、彼らにとって最大戦力を失ったそうである。
 信頼の置ける冒険者だったのだろう。

「クニミツ、例の私そっくりなクノイチだけど」

「ああ。ナニモンなんだろうな?」

 オレたちの前に現れたクノイチは、見た目こそモモコではある。が、モモコではないとわかる。紫のミニスカ忍装束なんて、モモコの趣味じゃない。だが強さは、今いるメンバーでも最強だろう。しかし、何者なのか。

「私の趣味じゃない」

「同感だな」
 
 あの格好は、オレたちどちらの琴線には微妙に触れない。

「オレはクノイチっつったら、全身ぴっちりスーツがいいんだ。近未来型の武器とか持っていて、剣も蛇腹剣とかがいいな」

 全身ラバースーツのモモコを連想して、思わすドキドキしそうになった。

「昔のエロゲーのやりすぎだね」

 たしかに、否定はできんが。

「そういうモモコはどうなんだよ?」

「私は、もうちょっと普段着でも通用しそうな衣装がいい。武器はあのままでいいけど、身分を隠しつつ今を生きている。有事の際に、ニンジャに変わる感じ」

「変身ヒロイン的なやつか?」

 プライベートとバトルパートで、衣装を切り替える感じか。

「そうそう。キツネ耳とか生えるの」

「獣人かっ! その手があったか」

 寺院に到着した。さっそく、蘇生を依頼する。

 結論から言うと、騎士隊は誰も生き返らなかった。

 やはり、世界の裏側で死んだことにならないと、ダメのようだ。

「どういう法則なの、モジャモジャ?」

「この大地の下で死んでいなかったら、神様に死んだとカウントされないモジャ」

 なるほど。そういう抜け道を縫って、蘇生させているのか。

 しかし、騎士たちは地上で死んでいた。よって、蘇生は不可能だったと。

「申し訳ありません。お力になりたかったのですが」

「あんたのせいじゃない」

 悪いのは、ヴリトラだ。 

「ただ、この二人ならあるいは。何かしら未練があるようですので」

 次に司教様は、格闘家と魔法使いの蘇生を試みる。

 しかし……。

「おお、なんという」
 
 司教様も、驚く結果に。

 起き上がったのは、全身骨のモンスターだ。

 なんと、死体がスケルトンになってしまったのである。

「あっしは、スケロクと呼んでくだせえ」

「妻の、スケチヨどす」

 東男に京女のスケルトン夫妻が、爆誕した。

 寺院で冒険者を組成させようとしたら、まさかスケルトン化するとは。

「お前ら、なんともないのか?」

「ええ。むしろ肉体から解放されて、スカッとしてまさあ。ありがてえ」

 スケロクと名乗ったスケルトンは、感謝の言葉を口にした。

「モジャモジャ、これってどういうこと? 彼らは敵?」

「モンスターの反応はないモジャ。彼らは召喚獣扱いモジャ」

 ウニボーが、モモコの問いかけに答えた。 

「なんで、元の名前じゃないんだ?」

 冒険者のプレートがあったが、スケルトン夫妻はオレたちに返してくる。

「蘇生に失敗したってわかって、仲間に悲しい思いをさせたくないんでさあ」

「ウチらはこの姿で、第二の人生を歩みますえ」

 なら、仕方ないか。これは、彼らの仲間たちに返そう。 

「まさか、ネクロマンシーなんて」

 だが、納得していない方がお一人。

「これは奇跡? それとも、魂の冒涜?」

 頭をクラクラさせながら、司教様は目を回す。

「おそらく、世界の裏側では死んでないから、魂だけは回収できたモジャ。でも肉体の再生はできなかったモジャ」

 だから、気に病むことはないと、ウニボーは司教様を慰める。

「ああ、おそらくあっしらが二人共、闇属性の冒険者だからでしょう。あっしがアサシンで、家内はネクロマンサーでしたから」

 神を冒涜していたのは自分たちだと、スケルトン二人は司教様を説得する。

「な、なるほど」

 司教様は、ようやく正気を取り戻したようだ。

「でも、そのまま歩いていたら、モンスター扱いになるよな?」

「こうするモジャ」

 ウニボーが、スケルトンの額に光る宝石を埋め込んだ。使役魔法だという。

「これで、街の人にはモブに見えるモジャ。冒険者には、召還獣のスケルトンと認識されるモジャ。敵側に操られることもないモジャー」

「ありがてえ。なにからなにまで世話してもらって」

 額についた宝石を指でなでながら、スケロクは感謝をした。

「ちょっとまてよ。闇属性がスケルトンになるんだったら……」

 オレは、考えを巡らせてゾッとした。

「ほら、やっぱりオレが正しかったんじゃねえか!」

 スキュラ戦のことを、オレはモモコに話す。

 モモコが犠牲になって蘇生してもらっても、スケルトンになっていた可能性が高い。

 その事実に、さすがのモモコも冷や汗をかく。

 冒険者ギルドへ。

 一旦、スケロクたちには領地へ行ってもらう。

 スケロクたちの仲間に、ドッグタグを渡した。

「あ、ありがとう。ありがとう。でも……」

 タグを抱いて、剣士がうずくまる。

「遺体の回収はできなかった」

 オレは、嘘をつく。

 とはいえ剣士は、理解してくれたようだ。

 手頃な家を購入して、領地への拠点とした。領地へと戻る。

「ホントに、別れのあいさつとかはいいのか?」

「日陰モンのあっしらを、これまで面倒見ていてくれたんでさあ。そろそろ、肩の荷をおろしてやらねえと。無事で逃げ切ってくれただけでも、あっしらは仕事を全うしたってもんでさあ」

 彼ら冒険者たちも、苦労していたのか。

「で、誰の召還獣になるんだ?」

「おそらく、ピエラ?」

 モモコの意見が、妥当だろう。彼女が第一発見者だ。

「ボクの? いいの?」

「いいもなにも、一番敵に狙われやすいのはお前だ。魔術の要だからな」

「ありがとう。じゃあスケロク、スケチヨ、よろしくね」

 ピエラが言うと、「こちらこそ」と二人共返す。 

「武器などの装備品も、スケルトンに持たせて使えるモジャ」

「じゃ、装備品の新調だな」

 オレたちは【作業台】で、スケロクたちの装備を改造を始めた。【かまど】にも、火をつける。

「強化素材がめちゃくちゃ手に入ったから、これで行こう」

 かまどに、強化素材を放り込む。

「で、どうするのクニミツ? スケルトンを王都まで連れ回す?」

「それなんだよなぁ。やっぱ、難しいな」

 かまどで装備を強化しながら、オレはあぐらをかく。

 スケルトンを連れ歩いたら、王宮の術者に看破される可能性も高い。王都の魔術師がどれだけの実力かは、謎だ。とはいえ、用心するに越したことはないだろう。

「ネクロマンサーは、王都ではよく思われていない?」

 モモコがスケキヨから、ネクロマンサーについて聞く。

「王都というより、教会や寺院では、あまりいい顔はされまへんえ」

 スケルトン召喚は、暗黒系の魔法に分類されるらしい。寺院などの神聖系魔法の使い手からは、禁忌呼ばわりされている。死者を冒涜していると。

 それでも、「手数が増えるのはいいことだ」と、ネクロマンサーに手を出す人は後を絶たない。

「考えたんだけど、【世界の裏側】の攻略時だけ呼び出すことにするわ。それまでは、こちらでお留守番をしてもらいましょ」

「それが一番いいかもな」

 一応ウニボーにも許可をもらう。

「歓迎するモジャ」

 精霊たちも、彼らに敵意を抱いていないらしい。ならば、OKか。 

「手裏剣か。いいな」

 武器の中に、見知った道具を見つけた。こんなのを使いこなすのだ。生前のスケロクは、たいした実力者だったのだろう。

「ですが、あのニンジャ相当な腕前ですぜ。なんですかいありゃあ?」

「こっちが聞きたいよ」

 それにしても、あのクノイチはいったい。

「王都で、情報を集めよう」

「だな」

 装備が完成したので、スケルトン夫妻に渡した。

「ありがてえ。見違えましたぜ」

 全身プロテクターを身につけて、スケロクがポーズを決める。

「おお、生前の装備より決まってはるわ。手に持った瞬間、力がみなぎりますえ。おおきに」

 サイバーなパーカー型ローブ姿のスケチヨも、ごきげんだった。

 改めて、王都の冒険者ギルドへ足を運んだ。

「クニミツさま、モモコさま、ちょうどいいところに!」

 早々に、受付嬢に呼び出された。
 
「王都直属の騎士が、みなさんを呼んでいます」
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